火山
道沿いに、レナン大陸を東へと縦断中のシトラス一行。途中何度かモンスターに襲われたが、前に倒した事のあるモンスターばかりだったので、問題は無かった。
一旦立ち止まって地図を見る。
どこら辺まで歩いて来たんだろう。
「デュマリエ家のお屋敷を出てから、だいぶ歩いたように思えますが、ちょっと位置が分かりづらいですね。地図によると、小さな宿屋が何処かにあるはずなんですが」
「もしかしてあたし達、通りすぎちゃったのかな?」
「困ったわね。ん? ロック、何か見つけた?」
「ティナさん、あれかもしれませんよ。宿屋って」
ロックが言った方向を眺めると、確かにログハウス風の建物が建っていた。
宿屋に間違いない。
女将さんが迎えてくれた。
「いらっしゃいませ。お疲れでしょう。さぁどうぞ」
「あの、この先に聖霊がいる場所があると聞いたんですが」
「ああ、あの火山の事ですね。洞窟の奥に、住んでいらっしゃるという噂ですよ。その前に、泊まっていかれませんか? もう暗くなりますし」
聖霊の情報ももらったし、女将さんの言う通りここは泊まらせてもらおう。
シトラスは空き部屋がどの位残っているか聞いた。
「部屋は、空いていますか? えっ? 二部屋空いているんですか? じゃあ俺達、男女別でお願いします。ん? ジェニファー俺達と一緒の部屋でいいのか? すみません。じゃあ一緒の部屋で」
二部屋空いているのなら、男と女は別がいいだろうと気を使ったつもりだったが、女性陣は離れたくないようだ。
それはそれで嬉しい。
女将さんは笑った。
「はいはい。ちょうど五人部屋が空いていますので、そちらをご用意致しますね。夕食は、19時からになります。では、ごゆっくり」
手続きを済ませ、部屋に通される。
夕日が沈む時間だった。
ジェニファーが囁く。
「綺麗だね。シトラス」
「ああ、そうだな」
何気なく、彼女の顔を見てみる。
夕焼けに照らされて、美しい。
ドキン。
胸が高鳴る。
そこをロック達に突っ込まれた。
「お。シトラス、ジェニファーに見とれてら」
「ばっ、な、違うよ!」
「ご主人様。照れなくてもいいのですよ。ジェニファー様、可愛らしいですものね」
「そうよシトラス。素直になんなさい。それとも、やっぱアタシのとこに来る?」
その時、女将さんが呼んだ。
どうやら夕食ができたようだ。
シトラスはこれ幸いと出て行った。
「あ〜あ、逃げちゃった」
「ティナ様が迫るからですよ〜。ご主人様、慌ててらしたじゃないですか〜」
「まあいいじゃない。時間はあるんだし。ね、ジェニファー?」
「はい! あたし負けません」
「お〜、言ったわね」
「よしジェニファー、頑張れ。オレも応援するぜ」
「うん」
「それでは、夕食を頂きに参りましょうか」
先に行ったシトラスを待たせると悪い。
ロック達も向かった。
夕食後、一行はお風呂へ。
女性陣は、またシトラス達が覗くんじゃないかと警戒していたが、前に罰を受けたシトラス達は、今回は大人しかった。
疲れていたので、早めに明かりを消す。
明日は火山だ。
翌朝、シトラス達は宿で朝食を頂いてすぐに出発した。
暑いのが苦手なジェニファーの為に、涼しい内に出かけようという事だったが、火山に近づくにつれ、熱気が漂って来た。
「ジェニファー様、大丈夫でございますか?」
ルナンがジェニファーを気遣う。
彼女から渡された濡れタオルで、ジェニファーは火照った顔を拭いた。
「ありがとう。けど大丈夫だよ。まだ中に入ったわけじゃないし」
「でも、なるべく早く終わらせるぞ。ジェニファーが倒れたら困るしな」
「はい、ご主人様」
女将さんの話だと、洞窟は火山の途中、獣道を分け行った所にあるらしい。
目印に看板が立っているという。
とりあえず正規の道を進む。
「あ、あれじゃない?」
ティナが見つけた。
〈聖霊がいるかもしれない洞窟 →〉
矢印で教えてくれてる。
しかし、かもしれないって?
行って見れば分かるという事だろう。
獣道を入ってすぐ、洞窟は見つかった。
入り口は大きい。
シトラス達が五人、横に並べるほど。
高さもある。
覗くと、下に飛び込むような形になっていた。
「し、シトラス……」
ジェニファーは震えた。
まるで穴に吸い込まれるみたい。
熱気が流れて来る。
「とりあえず、深さを知りたいですね。うかつに飛び込むと、怪我をするかもしれません」
「そうだな。ん? みんなあそこ、何か書いてないか?」
シトラスが入り口の上の崖を見上げる。
文字が書かれていた。
〈勇気を持って、度胸を示せ〉
ルナンが首をかしげる。
「度胸を示せとは、どういう意味でしょうか?」
「う〜ん、そうねぇ。穴の前に書かれていて、度胸を示せ、でしょ。飛び込めとか?」
「あ、それ。それですよ絶対。オレも思いましたもん。飛び込めという事は、勇気がいる事。飛び込む度胸を見せろという意味でしょう」
「でも、飛び込むって……」
「大丈夫だよジェニファー。こうすれば」
ジェニファーの手を、シトラスが握った。
彼は五人横に並んだ真ん中にいる。
ジェニファーは、彼の左隣にいた。
ジェニファーの左にはロック。
ルナンはシトラスの右隣。ティナが彼女の右。
温かい。
シトラスのぬくもりが、ジェニファーを落ち着かせる。
「怖いか? ジェニファー」
「う、ううん。あなたが側にいるなら大丈夫」
「それじゃ、みんなで手を繋いで一斉に飛び込みましょう。その方が安心できるわ」
ティナの言葉に、五人は互いに手を繋ぐ。
穴の縁に足をかけた。
唾を飲み込む。
「せ〜の!」
同時に穴に飛び込んだ。




