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ジェニファーの奮闘

 シトラスが目覚めたのは、みんなで楽しく山菜を食べている時だった。近くで聞こえる賑やかな声。美味しそうな匂い。それに、この手触りは。


「ジェニファー……」

「シトラス、気がついたのね」

「ここは……?」


 家の壁と天井が見える。

 布団に寝かされていた。

 はっとして自分の腹を触る。

 剣は抜かれていた。

 治療もされているみたい。

 シトラスは上半身を起こした。


「痛っ」

「駄目じゃまだ起きちゃ。まだ完全には傷は塞がっておらん」

「そうだ。もう少し休んでろ。シトラス」

「ロック、ギー婆さん、でも……」

「もしかして、腹が減ったのか? そうか、わしの料理した山菜の匂いがしたか」

「はい」

「なら食べられるだけ食べたらいい。その方が元気になる」


 ジェニファーが、料理を皿に盛る。

 口元に持ってきて、食べさせようとした。

 シトラスは照れる。


「いいよ。ジェニファー、自分で……」

「遠慮しないで。起きているの辛いんでしょ?」

「ご主人様。この方がお体が楽かもしれません。どうぞ寄り掛かって下さいませ」


 ルナンがバスタオルを二枚丸めて、枕の前に重ねてくれた。確かに、垂直に体を起こしているより、この方が楽だ。


「シトラス、はい」


 こうなったらジェニファーにも甘えよう。

 一口スープを飲んだ後は、山菜のお浸しだ。


「う、旨い。イケますよギー婆さん」

「そうかそうか。食べられたら、ピザにも挑戦してみるかの? わしじゃなく、ティナとやらが作ったんじゃが」

「はい、食べてみます」

「油っこくて駄目じゃったら、無理せんでいい。胃に負担がかかるからの」


 ティナさんが作ってくれたピザ。

 シトラスはティナ本人から受け取り、口にした。


 ゴクッ。


 大丈夫、食べられそうだ。

 シトラスはティナから受け取った分を完食した。


「ご主人様。全部お食べになりましたね。良かったです」

「でも、また横になった方がいいよ。片付けはアタシ達がやるから」

「それでは、タオルを外しますね。お休みなさい、ご主人様」

「うん」


 窓から星が見えていた。

 今夜は月夜だ。

 後片付けを済ませたギー婆さんとティナ達も眠る事にした。

 戦士達は雑魚寝だが。

 ルナンは猫の姿になり、ジェニファーの布団に忍び込む。

 この方が、スペースを広く使えるから。

 明かりが、消された。


 翌朝、シトラスはまだ体の痛みが残っているものの、無理して旅に出ようとした為、ギー婆さん他みんなに止められた。シトラスは、迷惑をかけたくなかったが、仲間達は心配のあまり説得に出た。


「勇者。わしは別に構わんぞ。体が治るまで、ここにいたらいい」

「そうだよシトラス。あたし達、迷惑なんかじゃないから」

「ああ。オレ達はお前が無理して倒れる方が嫌なんだ」

「そうですよ。ご主人様」

「みんな、けど、俺は……」


 その時、今まで黙っていたティナが口を開いた。


「シトラス。あんたの気持ちも分かる。その傷、ガルディスにやられたんだろ? アタシとルナンは、あんたがガルディスに木の根元に横にされているのを見たんだ。ルナンから聞いたよ。ガルディスは魔王に見張られていた可能性があるって。でも、ガルディスはあんたを殺す気は無かった。殺す気なら、あんたの腹の剣を抜いて行くだろう。そうしなかったのは、彼がまだ正気だったから。だから、彼の為にも、無理は禁物だよ。早く魔王を倒すんだって、焦ってるかもしれないけどさ」

「ティナさん……」

「アタシの言う事が分かるね? シトラス」


 シトラスはティナの説得に納得したように頷いた。

 ギー婆さんが、何かを思い出した。


「そうじゃ! 勇者が早く傷を治したいと言うのなら、あの山のてっぺんに薬草が生えている。ただの薬草じゃないぞ。普通の薬草よりでかくて、効果も二倍じゃ」

「本当ですか? ギー婆さん。なら、あたしがそれを採って来ます!」

「ジェニファーだけじゃ危険だよ。オレも行く」

「ジェニファー、ロック……」

「シトラス待ってて! とびきりのを持って来るね」

「ああ、安心して休んでな。じゃあ、行って来る」


 ジェニファーとロックは、勇んで山に向かった。

 シトラスはルナンに付き添われ、小屋に戻る。

 布団に横になった。

 ティナとギー婆さんも見守る。


(ジェニファー様、ロック様、ご無事で……)


 ルナンはただ祈った。



 ロックとジェニファーは山を駆け登る。

 本来ならゆっくりと景色でも眺めていたいが、今はシトラスの事で頭がいっぱい。その為、注意が少し散漫だったか。


 ガサッ。


 坂の途中で襲われた。

 女の魔族のようだが、スーリアとは違う。

 白い虎の耳と尻尾を持っていた。

 女の蹴りで、ジェニファーは坂を転がる。


「ジェニファー!」


 平らな所で止まる。

 ロックは弓矢を構えて女を見た。


「誰だ!」

「あたしはスーリア様の部下、魔族トーラ。まさか勇者が生きていたとはね。あんた達は、ここで始末させてもらうよ!」

「やってみなさいよ!」


 ジェニファーが立ち上がった。

 体は擦り傷だらけだが、その目は闘志で燃えている。


「シトラスは頑張ったんだ。せっかく助かった命を消す訳にはいかない。魔族だろうと、やってやるわ!」

「面白い、かかって来な!」

「行くわよ!」


 ジェニファーが杖を振り降ろす。


「サンダーボム!」


 雷が、トーラの頭上に向かった。










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