シトラスの危機
剣と剣がぶつかる、激しい金属音が響く。
シトラスと対峙している相手は強い。
こちらも本気で行かなきゃ。
だがシトラスは海底から戻って来たばかり。
まさか、それを狙ったのか?
「ガルディス! あんたまだ……」
「悪いなシトラス。お前を本気で倒さないといけないようだ。海から上がって来たばかりなのは知ってるが、こちらも、事情が変わってな」
ガルディスの後ろに、変な虫みたいなのが飛んでる。ちょっと大きくなったハエか。ガラス玉を抱いてる。まさか、魔王の見張りか。
ブンブンと辺りを飛んで、映像を送ってる。
そうか、なら仕方ない。
隙を見て、ガルディスを助け出せれば。
「息が乱れてるなシトラス。海底でスーリアと、激しい戦闘を行ったんだろう。ぼろぼろな彼女が戻って来た。腕が上がったか? それとも……」
「ああ、聖霊の力を借りたけどな。それでも、あんたには負けない!」
「フッ。面白い」
シトラスは突っ込む。
ガルディスは察知して避けた。
剣を弾かれようとするが、耐えてもう一度攻撃。
「十字斬!」
「ムッ」
ガードされた。
体ごと飛ばされる。
ガルディスの剣が光った。
「衝雷斬!」
「ウワアアア!」
シトラスは倒れた。
その頃、ギー婆さんに言われた山菜を求め、バラバラに捜索していた仲間達は、どうしていたのか。
ルナンの見つけましたと叫ぶ声が聞こえ、ジェニファー、ロック、ティナが走って来た。
「ルナン、見つかったんだって?」
「はいロック様。これだと思います」
ルナンが手に持っていた山菜と、絵を見比べる。
「うん。間違いない。これだよルナン。あなた凄いな」
「ありがとうございます。山菜はだいたい、こうした草と一緒に生えてる事が多いので、そうした場所を探して見ました」
「ふ〜ん、さすが〜。あたしみたいにやみくもに探しても駄目だね。メイドさんは違うわ〜。あ、メイドじゃなかったんだっけ?」
「大きなお屋敷のお手伝いをやらせてもらっていましたから、メイドと同じようなものですね」
「それをメイドと言うような気がするけど、まぁいいか。それより、シトラスは?」
「そう言えば、ご主人様のお姿が見当たりませんね。どちらへ、探しに行かれたのでしょう」
「う〜んシトラスめ〜、アタシと二人きりになるのを避けて逃げたのねぇ。まぁ、冗談だけど。本当に、何処に行ったんだろうね」
「ちょっと待って、何か聞こえませんか?」
ロックの耳には、何か聞こえていた。
砂を踏む音。金属音。そして、
「ウワアアア!」
このシトラスの悲鳴は、みんなに届いた。
「ご、ご主人様!」
「ヤバいよ。あの子に、何かあったみたい」
「行ってみましょうティナさん。って、ジェニファー!」
ジェニファーは震えていた。
妙な胸騒ぎがする。
ロックは彼女の手を引いた。
「ジェニファー、お前が行かなくてどうする? さあ、行くぞ」
「う、うん」
少し強引だったけど、不安なのはジェニファーだけじゃない。
オレだって……。
もし、あいつに何かあったら。
(シトラス……っ)
ロック達は急いで、声のした方向に向かった。
ガキーン。ガキーン。
「……くっ」
「どうしたシトラス。ここまでか?」
シトラスは劣勢だった。
海での疲れもあるけど、今日のガルディスは一味違う。
見張られている事もあるのか。
今までのような遊び、というか余裕を感じない。
(このままじゃ、殺られる……)
紋章の力を使おうか。しかし、この体じゃ逆に危険かも。
そのシトラスのためらいを察知したか、ガルディスが仕掛けた。
「紋章の力か。その力を使わせる訳にはいかないな」
「なっ」
防ぎ切れない。
剣を弾かれた。
ガルディスは迷う事なく、シトラスの腹部に剣を突き刺す。
「……あ……」
手を離した。
剣はシトラスに刺さったまま。
シトラスはフラッと来てるが、ガルディスを睨み、その剣を抜こうとする。
「……! 止めろ」
ガルディスはシトラスの首の後ろを叩いた。
意識がなくなる中、ガルディスが耳元で囁く声が聞こえる。
「シトラス。俺はお前を、殺したくは無い」
シトラスは、そのまま倒れた。




