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目指せチャンピオン

「わ〜〜〜!」


 観客席から興奮の声。

 初めて闘技場に来たシトラス達が、地獄のトーナメントと言われるチャンピオンズバトルで四回戦までたどり着いたのだ。

 ただ者ではない。

 この子達何者?

 そんな声が聞こえそう。

 舞台に実況の声が響いた。


「さぁ、お待たせしました第四回戦。ここまで来たのは緑チームのこの子達。そして相対するは、闘技場きっての最強モンスターの一角、白熊のベア! カモ〜ン!」


 舞台袖の扉が開いた。

 唸り声を奏でながら、ベアが登場する。

 二本足で立っていた。

 さすがは魔物。こういうものか。


「ここ最近は、チャンピオンの元にたどり着く前に、四回戦で力尽きるチャレンジャーが多くいました。その壁となったのが、この白熊のベアです。果たして緑チームは、この壁を越える事ができるのか。いよいよ開始します! 始め!」


 ゴングと共に、ベアが突っ込んで来た。

 ジェニファーを後ろで守り、シトラスとロックは武器を構える。


「飛天狩射!」


 ベアは前足でロックの矢を叩き落とした。

 だが彼はそれを想定していたのだろう。次の矢をすでに用意していた。

 何本も矢を重ねる。乱天狩射か? と思ったが、火を次々つけていく。


炎乱狩射(えんらんかむい)!」


 乱天狩射の応用技だ。火をつけた矢が無数に飛んで行く。

 これだけの矢。ベアは払い切れず体に受ける。


 プスプス。


 皮膚は火傷をしたものの平気な顔で立っている。

 シトラスの攻撃。

 ベアの懐に飛び込む、のかと思いきや空中にジャンプ。


「飛翔斬!」


 着地してもう一撃。


「十字斬!」


 ベアはフラッときた。

 前のめりに倒れる瞬間、シトラスに反撃。

 長い爪で引っ掻いた。


「……っ!」


 右腕が切られた。

 服が裂かれ血が出る。

 それでも、体が反応して直撃は免れた。

 シトラスは、傷を押さえながら後ろに下がる。

 ベアは、うううと声を出すと、


 ダッ。


 いきなり消えた。

 と思ったら、ロックの目の前に現れた。

 凄い速さだ。

 見えないうちに立ち上がり、走ったというのか。


「ロック!」


 鋭く光る牙でロックを襲おうとしているベアに、ジェニファーがウイングナイフを放った。


 カッ。


 ベアが気合いを入れる。

 魔法が、跳ね返って来た。


「危ない!」


 シトラスがジェニファーを庇い、抱いて転がる。


「うう……」


 さっきの傷が痛むのか、体を起こしたシトラスは、苦しそうだった。


「シトラス!」


 助けられたジェニファーは、キュアリーで手当てしようと手をかざした。

 しかし、彼の目付きが変わる。

 驚いて、赤く頬を染めた。


「えっ!?」


 シトラスの視線の先を追って見る。

 なんと、スカートの後ろ側が破けて、そこからお尻が、もといパンティが丸見えになっていた。


「え? あっ、キャアアアア!」


 慌てて破けた方を脇に回し、パンティを隠す。

 スリットが入ったようになった。

 このスカート、どこから見ても同じデザインなのでさほど問題ない。

 シトラスは、視線を外しそっぽを向いていた。

 ロックも見ないふりをしている。

 ベアは、

 デレッとした、情けない顔をしていた。

 案外、こういうのが好きなのかも。


「おおっと、ここでハプニングだ。さあて、彼女はどうするか」


 実況まで興奮していた。

 ジェニファーは、シトラスにそっと囁く。


「待っててねシトラス。あいつ、倒して来るから」


 こうなった時のジェニファーは怖い。

 怒りの炎が見えそうだ。

 彼女は立ち上がり、不敵に笑いながらベアに近づく。


「ねぇベア。こういうハプニング好きなの? ん〜、なら、こうしてあげる」


 普段の控えめなジェニファーからは絶対に聞かれないような大人びた声。彼女は、クルッと背を向けると、お尻を突き出した。


「がうっ?」


 ベアは目をパチクリ。

 ジェニファーはベアに向かってダイブ。


「ジェニファー、ヒップアタック!」


 形の良いヒップに、ベアは潰された。

 すぐにジェニファーは離れる。

 魔法の杖を掲げた。

 ベアは彼女のお尻の感触に、ポウッとしたまま。

 呪文が聞こえる。

 はっ、と現実を見た。


「その心地よさのまま倒れなさい。フレアインパクト!」

「ガウウウ!」


 炎の渦が、ベアを包む。

 一瞬で姿が見えなくなった。


 プスプス。


 丸焦げのベアは、白眼を向き仰向けに倒れた。

 煙が出ている。

 シトラスとロックが側に来る。

 ゴングが、彼女達の勝ちを祝った。


「これは凄い! 魔法少女のおかげで、緑チームが勝利を手にしました! チャレンジャーがモンスターに勝つのを見るのは久しぶりです。このままの勢いで、チャンピオンも撃破するのでしょうか?」


 勇者チームは一旦、舞台(リング)を降りた。次のチャンピオン戦は一対一の戦い。誰が行く? ロックがそう聞いた時、シトラスが自分が行くと言い出した。

 ジェニファーは心配そうに見ている。


「ジェニファー、ロック。ここは俺に行かせてくれ。ガルディスも、レイニーさんに挑戦したんだろう。これを越えないと、俺、ガルディスに勝てない気がする」


 シトラスの()は、真剣(マジ)

 ロックもジェニファーも納得した。


「分かった、シトラス。オレ達は観客席から応援する。だから、絶対勝てよ」

「ああ、ロック」

「シトラス、その前に……」


 ジェニファーが残った魔力で、キュアリーをかけた。


「ありがとな。ジェニファー」

「あたしこそ。さっきは、助けてくれてありがとう。これは、お礼よ」


 チュッ。


 ジェニファーがシトラスの頬に口づけをする。

 シトラスは真っ赤な顔で照れる。

 動きが、一瞬止まった。


「シトラス、絶対勝って。待ってるから」

「ああ……」


 シトラスは舞台に戻った。

 ロックとジェニファーは急ぎ観客席へ。

 優しい人達が、場所を空けてくれた。


「さぁ、盛り上がって参りました! 緑チームの代表が、チャンピオンと対決です。それでは、チャンピオン、入場〜〜!」


 観客のテンションが最高潮になる。

 音楽が聞こえた。

 扉が開く。

 チャンピオン、レイニー・ブリッセルさんが観客の脇を通りリングへと歩く。

 赤いボクサーパンツにグローブ。上半身は裸だ。

 これが格闘家のスタイルか。

 リング上で、シトラスと対峙する。


「よお。オメエらちゃんと勝ち上がって来たな。俺様は嬉しいぜえ。だがな、勇者とはいえ容赦しねえ。全力で戦おうぜ!」

「はい!」

「始め!」


 チャンピオンレイニーと、挑戦者シトラスの戦いが始まった。























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