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わがまま王子

 シトラス達は王様と王妃様に謁見していた。

 彼らが各地で魔物を倒して回っているという事は、ここグリンズム王国にも届いており、シトラス達が王様にお会いしたいと言ったら、すぐ通してくれた。

 さらにグリンズム王はドグアックの王様とも面識があり、勇者達が姫を救った事も知っていた。

 姫はとても可愛く、グリンズム王も王妃も娘のように思っていたという。だから、よけい喜ばれた。

 さて、ここでこの国について少し話しておこう。

 グリンズム王国は軍事王国と言われるほど軍事力が高く、魔王軍の侵略にも耐えていた。優れた兵士がいるのはもちろん、科学者達も常に先を読み、新しい兵器を開発していた。

 ただ、それを敵に狙われないかという危うさも秘めていた。

 王様は聡明な人物で、その危険性についても理解していた。兵器にばかり頼りすぎてもいけないという事も。そこで、シトラス達にあるお願いをする。


「実は、余と王妃の息子。つまり王子だが、ある科学者に心酔していてな。その者は研究熱心で才能があり、弁も立つ。だが、研究の為には、人の命をいとわないという黒い噂も聞くのだ。このままでは、いつか国民が危険に晒されそうで怖い。王子にしても、いつか国を背負って立つ者として、自分の目で見極めてもらいたい。そこで、そなた達に頼みがある。その科学者の素性を、調べてもらいたいのだ。余の気のせいなら良いのだが、どうも、不安な予感がするのだ」

「分かりました王様。俺達にお任せ下さい」

「すまぬ。そなた達は、余の客人だ。自由に、この城を見学なさるがいい」

「はい!」

「兵士達は、余も信頼している。話を聞くといい」

「分かりました。それでは」


 シトラス達は丁寧にお辞儀をすると、早速行動を開始した。王様に言われた通り、兵士達に話を聞こう。


「あの、すみません」

「何かな?」

「実は、王子様が心酔している科学者についてお話を聞かせてもらいたいんです」

「ああ。君達が勇者一行だね。いいよ。その科学者はね……」


 兵士達から聞いた話だと、その科学者の名前はエルウィン。三ヶ月前に、突然この城に現れ、知識を披露した所王子に気に入られ、そのまま研究所に居着く事になったらしい。表面上は、穏やかで話やすい人だという。その話術で、王子はもちろんの事、他の科学者も虜にしたみたいだ。

 が、王子がいない所で女官を罵っていたとか、エルウィンに反感を覚えた人に怪我をさせるとか、裏の一面もあるようだ。その為兵士達の間でも、完全に信用している者は少なかった。

 ちなみに、王子の話も聞いてみた。

 ナジム王子という名前で、年齢はシトラス達より年下の11才。好き嫌いが多くわがままで、機嫌を損ねると物を投げる。特に、食事の時間などは戦場だ。だから女官達も、王子の食事を作る時は気を使い、なるべく顔色を損なわせないようビクビクしていた。

 そんなナジム王子にエルウィンは、投げると爆発するビー玉を与えた。王子は魔法も使えず、戦闘もできない。グリンズム王が将来の為に勉強と戦闘を教えようとしたのだが、そういうのが嫌いな王子は、訓練より簡単なエルウィンの兵器の方を選んだ。そして、エルウィンと王子は急激に親しくなっていったそうだ。


「三ヶ月前に急に来た科学者。何か怪しいわね」

「そうだな。一応、女官の人達にも話を聞いてみるか」

「シトラス。あの女性女官なんじゃないか?」


 通路を歩くシトラス達の前に、ちょうど部屋から出て来たメイド姿の女性がいた。

 その女性にジェニファーが近づく。


「あの。ちょっとすみません。お話を伺ってもいいですか?」

「はい。何でしょう。ああ、この衣装の事でしょうか。私達は、王子様専用の女官です。王子様が、メイドの衣装がお好きなようで、その……、この衣装じゃないと駄目なんです」


 女官は恥ずかしそうに答えてくれた。

 確かに、メイド姿なのは気にかかった。

 城にメイドさんとは、妙な事ではないかもしれないが、着る身としては照れがあるのだろう。

 ジェニファーは少し、気持ちが分かった。


「あの。王子様専用のメイドさん。いえ、女官の方ならちょうど良かったです。エルウィンさんという科学者の方と、王子様の事について、お話を……」


 そこで、その女官は顔色を変えた。

 慌てた様子で、その場を去ろうとする。


「あ、ごめんなさい。私、急ぎますので。誰か他の方をあたって下さい。失礼します」


 そそくさと女官は去って行った。

 仕方なく、他の女官を探す。

 それにしても、あの慌てぶり。よっぽど言えない事があるのか。王子が怖いのか。いずれにせよ、何かあるのは間違いない。


「あ、シトラス。あそこ」


 ジェニファーが女官の人を見つけた。

 が、メイド姿じゃない。


「まあいいや。行ってみよう」


 シトラスのその一言で、ジェニファーとロックはついて行く。


「すみません。お時間、いいですか?」

「はい。どうぞ」


 シトラスの質問に、女官は、眉をひそめた。

 駄目か。

 諦めかけたその時、


「こちらです。どうぞ、入って下さい」


 辺りの様子を伺っていた女官が、シトラス達を部屋の中に誘う。


「大きな声では言えませんが……」

 シトラス達が中に入った時、女官が話し始めた。



 

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