グリンズム王国
この世界の、どこかにあると言われる、魔王の城。
帰還したドラモスに、血相を変えたガルディスが詰め寄っていた。
「ドラモス!」
「何だガルディス。我に用か?」
「お前、勇者の仲間の一人を、殺ったそうだな」
「そうだ。魔王様の命令でな」
「しかし、その命令は魔族の力を見せつけるだけだったはず」
「最初はな。だが、勇者を育てたサララという女がいたのでな。その女を殺れば、勇者が怯えると判断したまでだ。それとも……」
ドラモスは、ガルディスの顔を覗いた。
まるで挑発するように。
「倒しちゃいけなかったのか? その娘を」
ガルディスは唇を噛んでいたが、感情を押し殺すように言った。
「……いや」
「そうか。ならいい。つまらん感情を持たぬ事だ。命取りになる前にな」
ドラモスはつかつかと歩いて行った。
ガルディスは拳を握る。
(サララ、すまない)
心で、泣いていた。
一方、シトラス達が乗っている船は、順調にグリンズム王国へと向かっていた。
ジョセフィーヌを失ってから一日半。
あれから魔物は出て来ない。
まるで、天国へ行ったサララとジョセフィーヌが守ってくれているようだ。
今、シトラス達はお昼を食べ終わり、部屋で休んでいた。
食事は船員の人達と同じく、食堂で頂く事ができる。
今日のお昼は、しゃきしゃき野菜サラダとシーフードカレーだった。
このカレー、隠し味にチョコレートが入っていて、まろやかでコクがあり美味しかった。
女の子のジェニファーでも、おかわりがしたいって味だったそう。
パラッ。
「ふんふん」
ジェニファーは魔法書を読んでいる。
文字だけでなく、絵も書いてあって分かりやすい。
シトラスとロックは、武器の手入れをしていた。
丁寧に拭かれているから、綺麗だ。
ふと、シトラスはジェニファーの方を見る。
彼女は、シトラス達とは逆の壁に体育座りで座っていた。
その為、足の隙間から、その、下着がチラ見している。
無意識にそういう体勢になっているのか、ジェニファー自身は気付いていないみたいだった。
シトラスは剣をしまうと、近くにいたロックを肘で軽くツンツンする。
ロックは弓矢を片付けつつ反応した。
「何だ、シトラス?」
「あれ」
「おお〜」
ジェニファーの方を指差すと、ロックはニヤニヤした。
ジェニファーに気づかれないよう、声をひそめる。
「シトラス、ジェニファー分かってないのか?」
「そう、みたいだな」
「今日は白でフリフリ、っと」
「それにあの模様、苺だな」
この二人目がいいのか、見てる所はちゃんと見ている。
そこに、ドアをノックする音。
アランが顔を出した。
「シトラス、待たせたな。もうじきグリンズム王国に着く予定だぜ。って、ジェニファーおめえ、セクシーじゃねえか」
「えっ!? キャアアッ」
この時ようやくジェニファーは、自分のパンティが男達に見られたかもしれないと気付いた。
慌てて股を閉じ膝を下ろす。
シトラスとロックは顔を背けていた。
「み、見た?」
二人に聞いてみる。
いいえという答えが返ってきたが、どうも頬が赤い。
これはおかしいと感じたジェニファー。
カマをかけてみる。
「アランさん。もしかして、見てしまいました?」
「おお。悪いけど、ばっちり見たぜい。なあ、シトラス、白かったよなあ」
「ええ。白くてフリフリで……」
「オレも見た。苺の柄で。って、ジェニファー」
ジェニファーの顔色が変わる。
怒りの目だ。
「や〜っぱり、シトラスもロックも見ているんじゃない! アランさんまで!」
彼女は立ち上がる。
今にも殴りかかりそうだ。
「待て待て。俺っちの場合は偶然だ。ドアを開けたらそうなっただけだ」
「そうですね。アランさんは素直に謝ってくれましたからいいです。それより問題はシトラスとロック、何で嘘つくのよ!」
「わわわ、待てジェニファー!」
「そうそう。オレ達も悪かったけど、お前もそういう格好をしてたのが悪いんじゃないの?」
ロックの指摘に、ジェニファーは振り上げた杖を止める。
そして下ろした。
「それもそうね。あたしも気をつけなかったのがいけなかったわ」
「そう。だから許してくれよ。ジェニファー」
シトラスが拝む。
ジェニファーは笑った。
「仕方ないわね。ま、たまにはサービスという事で」
「本当か、ジェニファー」
「ええ」
「やった〜。大ラッキー!」
「オレも大ラッキー!」
「フフッ」
「じゃあ、その幸運のままグリンズム王国へ行っといで。到着だぜい!」
船が止まる音がする。
シトラス達は荷物を持ってデッキを降りた。
アラン他船員達が見送る。
「アランさん。皆さん。お世話になりました」
「おう。俺っち達も楽しかったぜ。勇者をこの船に乗せたとなりゃあ、後々まで自慢できらあ」
「そうですか。皆さん、お元気で」
「おめえ達もな。負けるんじゃねえぞ」
「はい!」
アラン達の船が、港を後にする。
だんだん遠くに霞んでいった。
ロックとジェニファーが、シトラスの言葉を待つ。
「行こう二人とも。まずは、グリンズム王国の城だ!」
「おう!」
「ええ!」
海沿いの道を抜け、森の中へ。
賑やかな街の喧騒と、鳥の声。
城が、見えて来た。




