三人の伯母
『あの三つ子ルラフルナ、ルリフルナ、ルルフルナです。あの子達は実は零さんの落とし胤なんです』
「ガハガハッ! あ、あの、女の子達が……」
「ゲホゲホッ! じ、じいちゃんの、子供?!」
ロフィーニくん(レフィーナさんの弟)といい感じの三人の女の子達が実はじいちゃんの子供だとラフィーニさん(レフィーナさんの父)に告げられ、俺と三琴は派手にワインを吹いた後、激しく咳き込んだ。
「「あらあらぁ、大丈夫デスカ?」」
さすさす……。
レフィーナさんとリフィーナさんが慌てて、それぞれ俺と三琴の背中をさすってくれた。
うっ// こんな時だが、レフィーナさんの手、温かくて色々こそばゆい。
「驚かせてしまって大変すみません。零さんのご家族には、よい気持ちがしない話かもしれませんね。ですが、この度、一さんがレフィーナに結婚の話を持ちかけて下さったとの事で言わないで済ます事は出来ないと思いました」
「!!」
ラフィーニさんから困ったような笑顔を向けられ、俺が後ろのレフィーナさんを見遣ると、彼女は赤い顔で俯き、時々俺の様子をチラチラと窺っている。
さっきのプロポーズ、あしらわれてしまうものかと思っていたが、彼女はちゃんとお父さんに話を通してくれていたんだ。
そうして、改めて状況を考えてみると……。
じいちゃん、異世界へ。エルフ村に滞在し、エルフの女性と子供(しかも三つ子)を作る。
→責任取らず、元の世界へ戻り、俺達のばあちゃんと結婚する。
↓ 半世紀後
じいちゃんの孫、異世界へ。レフィーナさんにプロポーズする。
うわっ! やってしまった……!!
ガダンッ!!
「じいちゃんが無責任な事をしてしまい、申し訳ありませんでしたぁっ!
しかも、その孫が、レフィーナさんに結婚を申し込むだなんて、信用できる訳がないですよねっ!」
「「一さんっ?!」」
テーブルに額を打ち付けて謝り、申し訳なさのあまり、しばらく顔が上げられなかった。頭上でラフィーニさんとレフィーナさんは戸惑った声を上げた時……。
ガダンッ!
「じいちゃんが昔やってしまった事は、私からも謝ります! 申し訳ありませんでしたっっ!!」
……!
「「三琴さんっ!?」」
隣で、三琴もテーブルに額を打ち付けて謝り出したので、ラフィーニさんとレフィーナさんは更に驚きの声を上げた。
「ですが、破天荒で奔放なじいちゃんと違って、お兄は真面目で誠実な性格です。レフィーナさんとの事はどうか、それとは別個に考えて頂くわけにはいかないでしょうか?
♂♡♡♀※※◎❀↑↑!!
どうか宜しくお願いしますっ!!」
「「「三琴さん……!」」」
打ち付けた額が赤くなっているのも構わず、エルフ語を使ってまで、俺とレフィーナさんの事を考えてもらうようラフィーニさんに切々と訴えかけ、頭を下げる三琴に、俺は目を見張った。
「み……三琴? お前、どうしてそんなにしてくれるんだ? さっきはあんなに止めていたのに……」
種族が違う事で、よく考えるように俺を窘めていた三琴がこの状況で庇ってくれる理由が思いつかず、戸惑っていると、三琴は早口で囁いた。
「(そりゃ最初は止めたけど、お兄は一度惚れ込んだら一途だから、レフィーナさんに振られたらまた10年は引きずって、今度こそ結婚出来なくなりそうだもん。それに、見たところ、脈無しってわけでも……)」
「??」
またも、チロリとレフィーナさんを見遣り頷いている三琴に俺が首を傾げていると、ロフィーニさんが頬を紅潮させてパンパンと手を叩いた。
「いやはや、大変感銘を受けました。一さん、三琴さんは流石零さんのお孫さんですね……! こちらこそ、説明が足りず申し訳ありませんでした。
零さんがこの子達の母親と恋に落ちたのは事実でしたが、その後異種族での結婚はやはり難しいだろうと本人達納得の上で別れたのです。
母親がこの子達の妊娠に気付いたのは零さんが自分の世界に戻られてからで、彼はその存在を知らなかったのですから、面倒を見られなかったのは仕方ありません。
零さんの残して下さった宝は母親や村の者に恵みをもたらしてくれましたから、感謝こそすれ、悪感情など湧きません。一さん、三琴さんに対しても好意的な感情を抱いていますから安心して下さいね」
「「よ、よかったぁ……!」」
ロフィーニさんにそう言ってもらえ、俺と三琴は胸を撫で下ろしその場に崩れ落ちた。
「あの、逆に、一さんと三琴さんはその話を聞いて複雑な気持ちになったりはしないデスカ?」
それまで黙っていたレフィーナさんに、心配げに問われ、俺は三琴と顔を見合わせた。
「う〜ん。そりゃ、驚きはしたけれど……」
「あの豪快なじいちゃんならあり得るかもって感じだよね? まぁ、ショックを受けるとしたら、ばぁちゃんだろうけど……」
「もう亡くなっているしなぁ……」
父も既に他界。叔母や従姉妹の弐乃は婚約破棄以来、疎遠になっているし、信じてもらえるかどうかも分からない異世界のじいちゃんの血縁者について打ち明ける事もないだろう。
「「うん。問題ないです!」」
「よかったデス!」
俺と三琴はほぼ同時に回答し、レフィーナさんはほっとしたような笑顔になった。
「この村は見ての通り、少子高齢化になっておりまして、これから結婚出来るのはロフィーニと、ルラフルナ、ルリフルナ、ルルフルナしかいなかったのです。一さんがレフィーナと結婚するとなると、彼女達と二重の繋がりが出来る事になりますね?」
「エルフさんも少子高齢化……! ロフィーニくん、もしや一夫多妻婚?!」
「はっ。もしかして、あの三つ子の子達は、俺達の伯母でレフィーナさんと結婚すれば義理の妹にもなるのか?!」
ロフィーニさんににこやかに言われ、俺と三琴はそれぞれに衝撃を受けた。
そこへ、いつの間にか三つ子の女の子とロフィーニくんが俺達の側に来ていた。
「「「私達ノ甥ノ一サン、姪ノ三琴サン、ヨロシク!ルラフルナ(ルリフルナ/ルルフルナ)デス! ルラ(ルリ/ルル)ッテヨンデネ?」」」
「あ、ああ。よろしく。ルラちゃん、ルリちゃん、ルルちゃん。じいちゃんがしてあげられなかった分、俺の事を頼ってくれな?」
「う、うん。ルラちゃん、ルリちゃん、ルルちゃん。私も何でも力になるからね?」
俺と三琴は緊張気味に初対面の伯母(見た目15才位)の三つ子と挨拶を交わしたのだが……。
「アハハッ! 私達、モウ45才ヨ?」
「モウ成人(この村では40才で成人)シテイルノヨ〜!」
「甥ッ子チャン姪ッ子チャン、イツデモ私達ヲ頼ッテ来テイイカラネ?」
「ええっ!? 」
「どう見ても高校生位なのにっ?!」
カラカラと笑い逞しく胸を叩く彼女達(45)に、俺と三琴は目を剥いた。
そこへロフィーニくん(見た目10才位)が三つ子の後ろから可愛らしく、顔を出す。
「チナミニ、僕ハ、24才デス!」
「ええ〜!! ロフィーニくん、24才?!」
「私(22)より年上じゃんっ!!」
エルフさんの年齢は見た目とかけ離れ過ぎていて、俺と三琴は目を回したのだった……。
✽あとがき✽
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