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26 本当の気持ちでわかりあう僕

タンザ(タンザライト):主人公。霊能者という精神領域の魔術に長けた珍しい魔術師。

ルルス:フェルパー(猫獣人)の女盗賊。

エリカ:攻撃呪文を得意とする魔術師の少女。

ザック:ドラコン(竜獣人)の盗賊。クラン幹部の一人。

 ――クラン拠点のホテル・レストラン――



 底上げ修行パーティのリーダーを任されたタンザは、酒を頼んでおきながらグラスに手もつけず、カウンターに座って一人悩んでいた。

 自分を含めてメンバーは4人。あと一人、盗賊の技能をもち前衛を頼めるメンバーが欲しい。真っ先に思い浮かぶのはルルスだったが……


(でも伸び悩んでいる様子はない……けどそれを言うなら盗賊系職で困ってそうな人はいない)


 いっそ幹部のドラコン盗賊ザックに頼み、面倒を見てもらうか。

 と、ふと気配に気づいて横を見る。

 フェルパーの女盗賊・ルルスが隣に座り、ちびちびと酒のグラスを舐めながらじっとタンザを見つめていた。身を乗り出して、間近で。期待に満ちた瞳で。

 面食らったが、試しに彼女へ訊いてみた。


「ルルス。僕らの修行に付き合ってくれないかな」

「やっぱり私だよね! そうだと思った!」


 元気よく目を輝かせるルルス。

 しかしすぐに瞳はいわゆるジト目になり、ますます身を乗り出してくる。下手すれば顔がくっつきそうなぐらい。


「ところで他に言う事あるよね?」

「?」


 意図がつかめずタンザは戸惑うばかり。

 するとルルスの視線は批難がましい物に変わり、言葉には露骨にトゲが生じた。


「仕事にプライベートを持ち込むのはプロフェッショナルらしくないからビジネスライクでいたけど、ずっとメンバーAとBみたいなの、おかしいよね?」

「!」


 やっと思い至ったタンザ。

 だいぶ前にルルスはタンザに惚れられていると勘違いしたが、それがまだ続いていたのだ。

 まぁ誤解を解かなかったので当然ではある。

 そんなタンザを前に、ルルスの目がますます険しくなった。


「もしや……私は遊びだった?」

「え? いや、ちょっと、違う……」


 しどろもどろのタンザにルルスの目がさらにつり上がる。


「ちょっと!? じゃあだいたい遊びだった?」

「揚げ足とられてる!?」


 驚愕するタンザにルルスが叫んだ。


「タマぁとったろか!? くっそー、私は遊びで本命はエリカって子かあ!」

「えっ私!?」


 思わずといった感じで漏れるエリカの声。

 見ればエリカはすぐ側のテーブルにいつの間にかいた。


「「え? なんでいるの!?」」


 タンザとルルスが同時に驚く。

 エリカは気まずそうに告げた。


「あ……いや……男と女がこじれてそうだから、ハラハラしちゃって、つい……」


 エリカも恋愛に興味があるお年頃なので、側で耳をそばだててしまったのである。

 とりあえず誤解させていては良くないと、タンザは本当の事を伝える事にした。

 はっきり言って気まずいし、今後ルルスに嫌われるかもしれないが、もうそれは仕方の無い事だ。

 前に元パーティメンバーとケンカしたのは別にルルスを取り合っていたわけではない事を、変な言い訳は無しで教える。

 それを聞き終えるとルルスは……


「うう……私が勘違いしてたのか……アホの子に産まれてゴメン……」


 なんとベソかいていた。

 タンザは何かやら罪悪感に襲われる。


「いや、僕ももっと早くはっきりしておけば良かったんだ、ごめん」

「ううん、舞い上がってヒロインづらしてたの私だし。子供の名前ももう考え始めてたのに」

「気が早くない!?」


 ぐずりながら告げるルルスの言い分にタンザはびっくり。

 その傍らでエリカがいきり立った。


「タンザ! 赤ちゃんがかわいそうよ、ルルスでよくない? なんか良い人っぽいし!」

「産まれる事してないから!」


 慌てるタンザ。今の流れでなぜそう思われたのか。

 だがエリカは本当に困惑し始めた。


「え? 赤ちゃんは夫婦の愛を認めるとコウノトリが運んで来るって、子供の頃にお姉ちゃんから聞いたけど……」


 レストランのカウンターの片隅で、声を潜めてにわかに性教育が始まった。

 言い難い事も頑張って、タンザとルルスがいろいろと教える。

 エリカは困惑し、混乱し、目を見開き、やがて……


「か、確認してくる!」


 大急ぎでレストランから出て行った。

 姉の泊る部屋へと。


 しばらくするとエリカが戻ってきた。

 呆然としつつもふらふらと歩いてきて、元の席に放心状態で座る。


「……大人の階段を一つ登ってきたわ。無知なクセに口を挟んでゴメン」


 ふるふると首をふるルルス。


「いいよ、エリカが優しくて良い子だってわかったから。私、修行に協力する!」


 するとエリカが感激した様子で目を輝かせた。


「ありがとう! うん、よろしくお願いね!」


 そっと優しく互いに手を取り合う少女二人。

 隠し事をせず本音で語り合った者同士の信頼と連帯がそこに生まれていた。

 きらきらした表情で、二人は手を握りあってレストランを出て行く。

 それを見送るタンザは、なんとか自分を納得させていた。


(丸く収まったんだから、これは良い事なんだよね……)


 まぁパーティが決まった事は間違いない。

御覧いただきありがとうございます。

何かしら反応がいただければ嬉しい限りです。

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