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いつかまた音に乗せて届けるから  作者: 光瀬
立花はるか
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 制服という文化が嫌いだった。小学生の頃は私服だったというのに、中学にあがると突然セーラー服の着用を義務付けられる。

 女であるわたしは当たり前のように学ランを選択する権利はなかった。

 現代のように性別に関して寛容な時代ではなかったため、男は学ラン女はセーラー服と決まっていた。

 昔から女子として振る舞うことが嫌いだっただけで、自分の性別は受け入れている。

 受け入れなければならない年代だった。

 市内でも指折りに素行が悪い中学校だったため、制服はセーラーではあったもののジャージ登校が黙認されていたのは、わたしにとって幸いだった。

 高校進学を決めるまでは、なにも問題がなかった。


 公立高校で私服校は少なく、受験校を決める前から憂鬱だった。

 成績は中の中、もっと勉学に勤しんでいれば選択肢も広まったはずなのにと後悔する。

 できるならば男子と同じ制服を着たいのに、それが叶わないのが現実だ。

 結局受験したのは市内で無難な高校と言われるような公立高校と、滑り止めの私立高校。

 セーラーかブレザーの違いか程度だったので、わたしにとってはどちらに合格してもさして変わりはなかった。


 結論からいうと公立高校は落ちた。

 自己採点では合格ラインではあったものの、内申というものを忘れていた。

 特別問題児だったわけではないが倍率を考えると内申の影響力が強いのは考えていなかった。

 私立高校は合格していたのだが我が家の経済面を考えると厳しいと、子どもながらに理解していた。

 二次受験で別の高校を受けるという手もあったのだが、男子1割女子9割のその高校を受験するのは正直気が進まなかった。

 どうするべきかと悩んでいるわたしに、両親はちゃんと勉強するようにと言い私立高校の入学を薦めてくれた。

 晴れてわたしは私立高校に進学が決まった。


 中学の頃のようにジャージ登校ができないという不満がありながら、指定制服やかばんなどの購入しに行く。

 私立高校なだけあってすべてが指定だった。

 かばんやリボン、シャツやセーター、ハイソックスまでが指定のものだ。

 親泣かせだと申し訳なくなりながらも採寸が始まる。

 マネキンに着せられた制服に、女子用スラックスとプレートが書かれて男子のものとは違う色のスラックスがあった。

 スラックス履いても許されるのか、と衝撃を受けた。

 その高校は冬になるとスカートの下にジャージを履くということを良しとしない結果、11月から3月末までは強制的に女子はスラックス登校をさせられるらしい。

 学校説明会をちゃんと聞いていなかったわたしにとっては幸運だ。

 大多数というかおそらくわたし以外の女子はスラックスを嫌うだろう。

 冬限定ではなく通年でスラックスは可能なのかと教員にきいたところ、珍しそうにしていたが問題ないとのことでわたしはスカートを購入せずにスラックスだけを購入した。


 こうしてわたしは正式にスカートを履かなくていい高校生活が始まった。

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