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面倒な僕を助けてくれ  作者: 柱蜂 機械
第三章 二年一学期編
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第58話 水野陸は

 こんにちは。

 GWも終わって、皆様も仕事や勉強が再び忙しくなってしまったことと思います。こういう時期に五月病とかいうのになってしまうそうなので、充分にご自愛下さい。

「のぉぉぉん! くぁwせdrftgyふじこlp……!」


 僕こと、水野(みずの)(りく)は、枕に向かって言葉にならない叫びを上げていた。そればかりではない。涙と鼻水で枕はすっかりと濡れてしまっていたのだった。そこ、汚いとか言わない。これは男の勲章なんだよ。


 夜も二十二時を回り、良い子はおねんねの時間だが、今日は一向に悪い子になりそうである。まさか、ベッドの上でここまで悶絶するとは思わなんだ。だが実際こうなっている手前、それほどの精神的ダメージを被っているということだろう。


 一体何が原因かと問われれば、言うまでもなく、また間違うまでもなく、昼間のお化け屋敷大事件である。捜査本部設置できるレベル。

 四ノ宮(しのみや)紅葉(くれは)は、何のつもりか、自らの苦手なお化け屋敷へ突撃し、案の定泣きまくりで騒々しいと言ったらこの上ない状態だった。たまたま二人で行くことになったから──僕が決めたのだが──引っ張ったり何やらしたりして脱出したが、本当に命辛々であった。

 そして、その最中に事件は起こった。詳しくは前話を見れば分かるのだが、軽く説明しておこう。

 のっぺらぼうを見て、既に平時の快活さを喪失していた紅葉の手を取って──セクハラじゃないですよ?──進んで行くと、後方から世にも奇妙な、それでいてやけにリアルなゾンビが現れたのだ。無論、紅葉は絶叫。何の偶然か、それとも必然か。とにかく恐怖に怯えていた彼女は、僕にしがみつく。それで参ったのはもちろん僕の方なのだが──心臓バクバクで死ぬかと思いましたよええ(本人談)──紅葉の怖がるところを見ていられなくなってしまった。そして中二病的発想から、彼女を片手で抱き寄せ、片手で彼女の手を取り、全力で逃げるという行動をしてしまった訳である。


 後から考えると痛すぎて怒涛の悶絶だ。故にベッドはこの有り様。あれ、シーツまで浸透してきた……。


 当然外にいた由比藤(ゆいとう)紫苑(しおん)にも白い目を向けられ「予想していたのと少々違うのですが……」と呆れられる始末だった。奴が何を企図していたのかは──何となくは分かるが──置いておいて、まぁそんなことを言われる筋合いはないのも事実ではあるのだが。

 しかし、もう紅葉と一緒にいられる気もせず、ヘロヘロになっていた紅葉を紫苑に預け、トンズラしてきた訳である。


 今日は土曜日で母さんも家にいるから十九時には飯を食い終わり、八時には自室のベッドに飛び込んだのだが、それ以降ずっとこの調子である。


 はぁ……。

 しかし、テンパっていたとは言え、どうしてあそこまでも痛い発想に至ったのか甚だ疑問だ。何が「彼女が怖がって、泣いているのを見るのが、聞くのが、感じるのがひどく嫌なのだ」だぁ? コンチキショウ! そんなのもう告ってるようなもんじゃない? お可愛すぎるわ!! 大丈夫? じゃないよね? ヤバイよね? ハズいよね? 死ぬよね?


 そしてまたベッドの上を、枕を抱き抱えたまま魔方陣でも誕生しそうなくらいにグルグルと転がったり、ボフンボフンと海から揚がった魚宜しく跳ねてみたりと、悶絶のバリエーションが増えるスピードは止まるところを知らない。速く、もっと速く! 加速しすぎてその内スターバーストにストリームっちまうところだ。ってかアレ天文学的に言ったら爆発的星生成(スターバースト)(ストリーム)なんだけど。宇宙の法則が乱れる。


 そしてそういうことを考えていると次第に、今度は、紅葉がどう思ったかについて思考はシフトする。


 確かに彼女は大絶叫していたが、もしかしたら判断能力は僕よりも上だったかも知れない。彼女は僕みたいに緊張と恥ずかしさで心臓を元気に運動させていた訳ではないからだ。だとすれば、その状況での僕の意味不明な行動も、全く意味のない、ただの自己満足のためだと分かってしまったかも知れない……。それで、実は密かにニヤリと笑っていたりして……。


「ふんぐぅおぉーん! おうふりょぉぉうん……!」


 悶えが止まらない。

 え、何それ? 馬鹿恥ずかしいですけど? やらかしたよね? もう僕社会的に生きてちゃいけない? 運命を仕組まれた子供なの? 一生14歳なの?


 うはぉンうにょンと泣き喚き、必死にあの恥ずかしい行動を取り消したいと願う。が、あれは実際嬉しさと隣合わせだ。そんな風に簡単に消えてくれる訳もなく、無駄にエネルギーと体内の水分を排出しただけである。ヤバい引きこもりでもしっかり運動できることが判明した。


 散々喚いていると、それに負けない位にドスドスと廊下の床を鳴らす音がする。

 その方を向くと、自室のドアがバンッと勢いよく開け放たれる。


「お兄、馬鹿うるさいんだけど。止めてくれない?」


 妹は苛立っているようで、眉間にシワを寄せ、ジトッとした視線を向けてくる。


「ば、馬鹿っ、今入ってこないで!」

「キモ。とにかく、うるさいから静かにしててよね。これ以上うるさくしたら、もうお兄のご飯は保証しないから」


 空はそうやって捲し立て、再びドアを勢いよく閉め、出ていった。

 アイツ……またあんなハーフパンツなんかはきやがって……。そこから下が目に毒だっちゅうの。


 ぶつぶつと文句を垂れながら、再び枕に顔を沈める。


 そうだ。昼間のアレも今のコレも、本当は意味のないことで、取り立てて騒ぐようなことでもない。そんなことは分かり切っている。

 本当は理由づけをしたいだけなのだ。

 自分のしたことに自信も責任も持てないから、他の原因を探して、(かこ)付けて、言い訳することしか考えていない。あの行動が正しかったのか、誤りだったのか、それは僕の視点からでは分からない。そしてそれが正しくても、誤りだったとしても、あの時はああだったからと(もっと)もらしい理由を付けて逃れようとしている。

 物事の本質を正面から受け止めるのは難しい。同じように、物事の真実を正面から受け止めるのもまた怖い。受け止め方を間違って、知りたくもないことを知ってしまうのは恐ろしい。それだけで、相手と僕の間には間隙が生まれるのが分かるのだから。まして、親しい人なら尚更だ。薄汚い心だが、どうしようもない。


 詰まるところ、僕は誰一人として、信用出できていない。他人も、自分も。

 人を信用して、信用されて、何が一番怖いかと言えば、それは人に裏切られることじゃない。人を裏切ることだ。それは相手に申し訳が立たないだけではなく、どう考えても自分に責任があるのを示している。責任があるというのはつまり、自身が悪であり、何を言われようが、囁かれようが、思われようが一様に反論の余地はないということだ。だが、そればかり──その中身ばかり考えてしまう。


 僕は汚い人間だ。


 人と関わらない癖に、人と関わるとすぐ保身に走る。人から見下されたくない、人の下に立ちたくないと、心のどこかでそう願っているのだろう。それ故にそういう行動を取る。しかも、最も良い方法だ。


 しかし、それは人からの評価が下がらないことと同じように、また評価が上がらないことも意味している。


 だから僕は孤独でも、孤高でもない。

 孤立しているのだ。


 責任逃れ。


 僕が言い訳ばかり考えるのは、そういう理由だ。卑怯で、下劣。そして馬鹿だ。


 枕を抱き寄せる。


「どうすりゃ良いんですかね……」


 ボソッと呟き、瞼を閉じる。


 寝れそうにないと思ったのに、案外と早く、深い暗闇の中に落ちていった。

 完読ありがとうございます。

 ただ男子が泣きわめく回でした。はい、それだけです。

 そして自分を嘲笑うかのように、またやって来てしまったテスト。どうすんのこれ……。

 まぁ明日は絶対に485系「華」を撮影せねばならないので、勉強はしません。あはは。

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