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面倒な僕を助けてくれ  作者: 柱蜂 機械
第三章 二年一学期編
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第56話 文化祭一日目[6]文化祭巡り

 いやぁ、遂に始まってしまいましたね、悪夢の十連休が。取り敢えず、この連休で遠鉄、豊鉄市内線に乗って、熱海で「和」を見てこようかと思います。いやぁ楽しみ。

 四ノ宮(しのみや)紅葉(くれは)という彼女は普段、付き人のような存在の由比藤(ゆいとう)紫苑(しおん)と行動を共にしている。それは主従関係の如きがそこに存在するからでもあるし、紅葉が紫苑を、また紫苑が紅葉を、それぞれ好いているからでもある。だから、僕は、紅葉が単独で行動している様子なんて見たことは無かったし、そんな彼女と二人で文化祭を回ることになるとは毫も思いもしなかったのだ。


 男女のペアというのは自然、カップル──所謂リア充という認識がなされる訳だが、僕にとっては彼女と共に行動するという、そういう状況だけで死んでしまいそうなのだ。だから少し後ろに避けてみたり、縦に並んでみたりと、とてもカップルとは思えないような行動を取っている自分がいる。どうやらリア充マスターへの道は、まだまだ先が長いようである。サトシと一緒だな。ってかそれ永遠に無理じゃね?


 かくして、紅葉のお陰で、恐らく一生涯回ることが無かったであろう文化祭を見て回ることと相成った。様々な展示があるというのはアニメとかドラマとか見て知っていたが、よもやここまでとは……。ってかソースが貧弱すぎるな……。ものはあんまり面白くなさそうなのに、なぜかこんなにワイワイと盛り上がる。


 紅葉の行くままに着いていき、吹奏楽部の演奏を聞いたり、化学部の炎色反応を起こしながらのヲタ芸を見たり、中々完成度の高い映画 (ビデオだが)を見たりしている内に、文化祭も約30分を余すだけとなった。


「もうすぐ終わりか……。やっとシャバに出られるな……」


 こんなことを言うと、紅葉は少しムッとする。


「楽しくない……?」

「え、あぁ……いや、まさか……」


 紅葉といる訳だし……。


「楽しいっすよ……」


 目を逸らして言うと、紅葉はふふっとはにかんで笑う。


「良かった……」


 コイツ、強キャラすぎる……。どうやら紅葉は、男を落とすのが相当に上手くなっているらしいが、まだだ……! まだ終わらんよ……!


 紅葉は顎に人差し指を当てて、んーと唸る。


「最後、どこ行こっかな……」

「もう良いんじゃねぇの? 結構見たし。後、見たいもんとかあんの?」

「んー……そう言われると、そうなんだけど……」


 などと、そんな会話をしていると、紅葉は「あっ、そうだ」と手を叩いてこちらを振り向く。


「私たちのクラスのお化け屋敷行かない?」

「えぇ……ウチのクラス……?」

「嫌……?」

「いや、嫌っていうかなぁ、自分のクラスってのがなぁ……」

「嫌なの?」

「まぁ……恥ずかしいっていうか……」

「恥ずかしい……?」

「そりゃ、僕だって、純真無垢な男子高校生な訳だし……その、女子と二人でいるの、クラスの連中に見せびらかしてるみたいだし……」

「……そ、そっか」


 紅葉は顔を赤くして俯く。

 その様子をチラチラ見ながら、やっぱり恥ずかしいなと思う自分がいる。

 しかし、見せびらかしたくないと言うのはほんの少し嘘だ。何て言ったって、紅葉は僕の思う可愛い女子ランキング一位レベルだ。そんな奴と一緒にいるのを、少し恥ずかしいからと言って自慢したくない訳がない。寧ろ自慢したい。


 「まぁ……」と、口を開く。


「少しくらいなら行っても良いけど……」


 お化け屋敷に少し行くというのはどういうことか、とも思ったが、自慢したくなっちゃったんだから仕方ない。男子ってそういうもんだよね!


「うん……」


 声が聞こえてチラと紅葉に目を遣ると、上目遣いにこちらを見上げる彼女がいる。何も言わずに、二人揃ってまたどこかに目を逸らしてしまう。


 人生で一番リアリアしているのはこの時だろうなぁ。アダルトゲーじゃねぇぞ。「リア充」を動詞化しただけだぞ、という益体もないことを考えつつ21HRに足を運ぶ。


 21の前に到着する。どうやらそろそろ人は減ってきたらしく、廊下は閑散としてきていた。

 受付としてクラスの前の廊下の椅子に座る紫苑は眠そう──なのだが、背筋を伸ばしたまま目を閉じている。何あれロボット? さながら瞑想の様だが……。


「あれ、何やってんの……?」


 指を指して尋ねると、紅葉は苦笑いを浮かべる。


「寝てるの……」

「アレで……?」

「うん……。『主のある身ですから、一秒足りとも時間は無駄には出来ません』って、この前言ってたけど……」


 いや、だからって姿勢を保ったまま寝るって弁慶か何かなの? あ、やっぱ主を守るっていう点で同種なのか……。


 一人で納得し、本当に寝ているのか確かめようと近づいてみる。顔に落書きでもしちゃおうかしら。


 すると、ギィィと音がしそうな様子で紫苑の首が回り、こちらを向く。


 足が止まる。


 そして起動した。


「ヒィ……ッ!」


 思わず悲鳴が上がる。

 開眼し、僕が仰け反ったのを見た紫苑は果たして、ケロッとしている。


「どうなされたんですか?」

「急に起きんなよ……っ」

「半径2mに人が近寄ってくれば、自然に目は覚めるでしょう。何を馬鹿なことを」

「馬鹿言ってんのはお前だ。普通は覚めないわ。ってか、お前お化けやれよ。絶対才能あるから」


 割りとガチでビビった。一歩どころか三歩ぐらい後退りしていた。五十歩百歩ですね。


 紅葉はまた苦笑する。


「ビックリするでしょ?」

「いつもあんななのか……?」

「うん」

「疲れそうだな……」


 再び紫苑に目を向ける。本人はキョトンとしているが、奴め、相当な訓練を積んでいると見える。何それ超暇人。


 僕の考えを知ってか知らずか、紫苑は尋ねる。


「して、お二人はこんなところでどうなされたんですか?」


 これには紅葉が反応する。


「あぁ、えっと……折角だからお化け屋敷入ってみようかなって……」

「なるほど」


 紫苑は首肯すると僕を見、次に紅葉を見、さらに僕を見……と、幾度か僕たちを交互に見る。何? さっきのお化けの続き?


 しかし、そういうことでは無いらしく、見終えるとため息をついてこう言う。


「では、遂にくっついてしまわれたのですね」

「……」

「……」


 くっついて……? くっつく……。くっつく……!


「はっ、バッ、ち、違ぇよ!」

「ひゃ、え、ち、違うよ!」


 盛大に声を上げて否定したが、奇しくもタイミングは一音も外さずピタリと重なる。互いに顔を見合わせる。少しして面映ゆさ故に、またその顔を逸らすという謎のあるあるテンプレートとなってしまう。


 紫苑は僕たちの様子を見てフラットな顔付きになる。どっかのギャルゲーヒロインか。


「へー、そーですかー。なら別々に入って頂きましょうかね。随分と仲が宜しいようですが、まぁ違うと仰られるのであればそうなのでしょうね」


 平然として言うものだから、虚を衝かれたようで(たち)が悪い。


 まぁ確かに、僕は紅葉とくっついている(恋人同士である)訳ではない。ゆえに、別に、セパレートでお化け屋敷に入場したところで何の不都合も不思議もない。寧ろ自然。超ナチュラル。


 だが、しかし──。


 チラと横に目を遣ると、同じように僕を見る紅い瞳がある。


 緊張したように唇は僅かに震え、顔は上気して紅潮している。そして何より、僕を見上げる瞳が「どうしよう……?」と問い掛けてきている。どういうことですか誘ってるんですか。


 正直なこと言っちゃうと、紅葉と暗闇の中で二人っきりとか精神的にアレな気がするが、しかしやはりそういう体験もしたい(マゾ?)。倫理的には大問題だが、ここで二人を降りてしまえば「私はそんなことないけど『二人で』とかそんなに意識してるのかな……(白目)by紅葉」になり兼ねない。

 いや、それは困る。避けねばなるまい。

 そうだ。ここで引いては男が廃る。ナポレオンにも立ち向かえない。それはスタール。


 一歩前に進み出、紫苑を見据える。


「いや、その必要は無い」

「……陸?」


 紅葉の声が後方から聞こえる。


「そうですか」


 紫苑はシラーとした目を僕に向ける。多分ワインでも作るんだろう。だが、そんなのは気にしてはいられない。


「……花は桜木、男は水野(みずの)。ここで行かなくて何がおと──」

「足、震えてますよ」

「あーそれ言わんといてー。知ってるからー。馬鹿恥ずかしいからー」


 そーなんですよ。膝ガクガクすぎて他のこと気にしていられないんすよー。

 いつの間にか、僕の脚は生まれたばかりの小鹿のようになってしまったようだ。その内健脚になって欲しいな……。


 折角女子──紅葉と紫苑──の前だから格好つけようと思ったのだが、彼女の一言でおじゃんである。じゃんじゃん。

 まぁバレないとは思わなかったけど、言わなくても……。


 僕が項垂(うなだ)れていると「フフッ」と、可愛らしい笑い声が漏れる。


 その方を振り返ると、やはりと言うか、紅葉だった。


「……悪かったな、ダサくて」


 僕が言って返すと、紅葉は可笑しそうに微笑んだ。


「そんなことないよ。カッコ良かった」

「またまた……」

「違うよ。ホントだよ」

「……そりゃ、どうも」


 くっ、コイツは……。何で、こう、人を……。……はぁ。


 急にそういう無垢っていうかピュアっていうか(同義)……そういう類いの笑顔を向けてくるから困る。マジでガチトーンに聞こえるから心臓を撃ち抜かれているようである。しっかりガードしているはずなのに、いつの間にかバキュンッと撃ち抜かれている。何これ起源弾?


 ボソボソと返すと、紅葉は更に、僕より前に歩み出て紫苑に宣言する。


「じゃあ、二人で行くね」

「了解しました」


 おい、ホントに良いのかよと、そういう言葉を掛ける前に紅葉と紫苑の間で契約が成立してしまう。魔法少女になったらダメだよ!


 紫苑はドアの開かれた部分からある、暗幕を引き、道を開く。


「では、どうぞ行ってらっしゃいませ」


 単に普段の職務ゆえかそれとも今日の仕事ゆえか判然としなかったが、とにかく紫苑の丁寧な言葉に促され、僕たちは恐る恐ると暗闇の中へと足を踏み入れた。

 完読ありがとうございます。

 いやぁ、惜しいところで終わりますねこの話。まぁ自分が作ってるんですけど。多分次回、何かが起こる……かも。

 俺は今日からワイハだぜ! という人も、休み? 何それ美味しいの? という人も、多分生きてる内でそうそう無い連休だと思いますので、どうぞ有意義にお過ごし下さいませ。

 ではまた次回。

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