第28話 弁解[1]
イエーイ。もうすぐ115系にお目に掛かるぅ。
追記:
何か静岡県某市長がテレビに写って恥ずかしい事してました。うーん、静岡って、恥ずかしい事でしか話題にならないなぁ。
大川井縹。
僕の通う静岡県立清水第一高校の中で最も有名な生徒の一人。成績優秀、学力学年一位、しかも美人。あと可愛い(本人談)。立てば何ちゃら、座れば何とか、歩く姿は何とやらという言葉があるが、あの言葉は多分彼女のためにあるのだと思う。くっきりと整った鼻筋や、冷たい青色の瞳、艶やかで流れるような黒色の髪が特徴的だ。
しかしながら、飛んでもない毒舌というか口が悪いので、そこが玉に瑕ではある。
まぁ何か色々あって僕はこの人の所属する(というかこの人一人しかいない)文芸部(笑)に入ることになってしまった。まぁ永年休暇なんだけど。いやぁ、全く何なのか。
中村綾。
大川井グループの上位幹部三名の一人。恐らくグループ内ランキングは大川井さんに次いで二位。
リーダーとは対照的に活発で元気女子、という感じだ。まぁあまり人目を憚らないという点では似ているのかも知れないが。陸上部でも相当な成績を残していると、以前しつこく自慢された。
黒色のショートカットや、小麦色の肌が如何にも陸上部感(?)を出している。高身長な上、普段の言動を見ていると、大川井さんの姉ちゃんっぽさが出ている……ようにも思える。
四ノ宮紅葉。
僕の幼馴染みの一人。長い間、彼女の父親の仕事の関係で東京にいたのだが、ついこの間静岡に帰還したのだった。この家、普通に金持ちで羨ましい。僕も金持ちの家に生まれたかった。
本人も気にしていることなのだが、彼女は見た目が幼い。身長の低さもさることながら、大きなぱっちりとした少し垂れ気味のお目々と少し丸みを帯びた顔が子供っぽさを強調している。顔だけではない……のだがまぁあまり言わない方が良いのかも知れないので割愛。まぁそれが他の人と違って可愛いっちゃ可愛いんだろうなとは思う。
そして本人も気にしているようだが、勉強ができないのである。
由比藤紫苑。
僕の幼馴染みの一人。彼女の父親の仕事の関係上、紅葉とは幼少期から姉妹のように育った……はずなのだが、いつの間にかしっかりと執事になっていた。
決して日本人離れしないのだが、くっきりと顔に造形が彫られ、目尻が吊り上がって大変大人っぽいし怖い。紅葉が大分気にしているようだったが、出るとこは出て引っ込むとこは引っ込んでいる。まぁ何が可哀想って紅葉なんだけど。
深沢怜。
男子生徒……以上! いやだって別にコイツの紹介とか要らなくない? うん良いよね。
僕は思った。
女子比率が高過ぎると。
そりゃ男子にそんなに(?)友達がいる訳じゃないし、そもそも家では空とか海とか姉妹がいたから自然と女子と仲良くなれる能力とか身についたんじゃないかと思う。しかしながらこの一ヶ月で急に女子の知り合いが増えた(紅葉、紫苑を含む)。これは異常事態だ。
取り敢えず学内での女子の知り合い人数を数えてみると、五人。男子は、二人。うん、終わった。男子に思いっきり清水五十六大先生入れちゃいたいけど、そうすると女子の方にも小澤望大々々々々々先生を入れなきゃいけなくなるなぁ……。あ……でも割合少し大きくなるかな。という訳で、女子と男子の知り合い比は6:3です。まぁ終わった。
別に終わってないが終わった感がヤバい。
そして僕は今の女子五人の中の四人──一人ハブられてるけど気にしないよ僕は──に取り敢えず色々報告するという約束をしてしまった。何たる失策。しかし、あんな連中に取り囲まれたら、僕はメンタル的にダメ。だったら約束をしてしまった方が精神衛生上楽なのである。
しかし……どう説明したものか。こっちに訊いてる側があんな風にガンつけ合ってる感じだと、どっかの国会みたいに紛糾して野次が沢山飛んできそうだ。
ううんと唸っていると正面から声を掛けられる。
「なぁ良いのか?」
「え? 何が?」
「いや何って、お前、逃げたよねあの娘っちとの約束破ったよねここサイゼだよね?」
「確かに……ここはサイゼ。お前の言う通り」
「おらてめぇ話聞いてたか?」
「悪い。聞いてなかった」
「うんだから約束破ってサイゼに逃げてきて良かったのかって聞いてんだけど」
「まぁ……しょんねぇら」
僕は頬杖をついてポチポチと──そんな音鳴らないけど──携帯をいじる。その様子を向かい見ているのは深沢怜である。白みがかかったボウズをちょっと伸ばした感じの髪の毛が眩しくまた眼鏡の反射も眩しい。
僕の唯一の友人っぽいヤツはイヤホンを外しニヤァと口角を上げて笑う。
「え何? 何々? もしかして~これが噂のチキンってヤツ~? え、マジかー。女子との約束破れるとかマジですげぇわ。え、罪悪感とかないの? え? え? それで自分カッコいいとか思ってんの? うっわ俺らとはチゲぇわー。プークスクス」
「うるせぇから死ねよ……」
あれコイツ、ウザさに磨きがかかってない? マジでムカついたんだけど。まぁチキンなのは合ってるから余計にムカつく。
深沢は面白そうにカラカラと笑うと再びイヤホンをしてリズムゲームに勤しむ。
僕はやることもなくなってしまったので取り敢えず適当なWikipediaを眺めている。何かYouTube見たい気もするけどギガっちゃうから無理なんですねぇ。やったぁ新しい動詞を作った男、僕。
清水駅前のサイゼはマックとタリーズと並ぶ三大暇潰しスポットの一つである。自転車なら学校からそんなに時間をかけずに到着できる。まぁチャリをどこに停めるかは考えどころだが。
普通に昼飯夕飯を食べるのもアリだし、ドリンクバー粘る方式も取れる。マックとタリーズじゃこうは行かない。コーラ飲んだりファンタカルピス飲んだりコーラ飲んだりコーラ飲んだりコーラ飲んだりとコーラ率が僕の場合異常に高い。だって美味いんだもん。まぁシメはやっぱりコーヒーだけど。今はコーラをちびちびとやっているところだ。
学校は昼休み前に終了だったので、今は昼に何を食べるかを考えている。
僕と同じような思考回路の学生はまぁまぁいるらしく店内の客の半数はどこかの学校の制服を着ている。
店のドアが開き、再び客が入ってくる。ちらと見ただけだったが、どうやらウチの学校の女子生徒らしい。うーん、女の子ならサイゼよりももうちょっとお洒落な店とか行くんだと思ってたけど……。まぁ僕には関係ないか。
次の18きっぷシーズンはどこ行こうかなとか思っていると、僕たちテーブルの横を先ほどの女子たちが通って行く……と思ったら何か知らないけど立ち止まった。
何かしらん? もう、荷物置いてあるんだからこの座席、他人のって分かるでしょ? これ常識。何? それとも僕たちとお昼したいってか? まだ嬢ちゃんたちには早いんじゃないかな? などと、顔を会わせたくないがためにスマホを見ながら考えていた。
深沢は、何故ここに女子が? と気になったらしくスマホから目を離したようだった。僕がちらと彼の様子を窺うと、その顔は驚愕によりガクガクと震え、顎部がガクンとテーブルにくっつきそうだった。無理矢理過ぎてあんまり上手い洒落じゃないなぁ……。
深沢は女子たちの顔を見たまま、明後日の方向を向いた手を招く。
「お……おい……。なぁ……」
「ん?」
そして震える手でその女子たちを指差す。それって失礼なんじゃないかなぁ。
取り敢えずこんなに驚いているのも何かしらの理由があるからっぽいし、いよいよ誰かを知るタイミングか。
首を女子たちの顔の方へ向ける。
……ついさっき見た顔だな。
首をギギギと正面に戻す。
驚きと悲しみのハーフハーフ宣言で、スケートでもできるんじゃないかと勘違いするくらいの気持ちになった。
「な……なぜここに……?」
からからと渇いた喉から出る声が、自分のものと気がつくのにも時間はかからなかった。
そこに居たのは僕がご存知、大川井縹と四ノ宮紅葉、由比藤紫苑の御三方。ひ、一人ハブられてる……。
まず中央に堂々と立って腕組みし、僕を睨み付けるのが大川井さん。その後ろで少し怯えた様子で僕を窺うのが紅葉。その紅葉の肩を両手で支え、冷たい目で僕を見るのが紫苑。……という状況になっている。
大川井さんはズイッと僕に顔を近付けてくる。その形相たるやまるで般若のよう。うわぁ怖ぇ。女の子と顔近くてドキドキしちゃうような馬鹿近い距離じゃないし、遠くもない絶妙な場所から睨んでくるので怖さが五倍増だ。まぁ般若は女の人の顔だし、女性は昔から怖いという先人たちの教えなんだろうなうん。
「聞かせてもらうわよ、水野くん」
ドスの効いた声と共に鼻腔をフワリと爽やかな芳香がつつく。あ……やっぱ近いわ……。
最後までお読み下さりありがとうございます。
いやぁタイトル詐欺。弁解とか何もしてないですね。まぁ次はしてくれるでしょう。してくれるよね? はいします。




