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面倒な僕を助けてくれ  作者: 柱蜂 機械
第二章 春休み編
22/69

第18話 いざ、さらば[5]

 コミュニティデイ。

 分かる人には分かる。

 色違いが全然出てこない…………(泣)

 入場券を二人分買い終え、二人を待つために切符売り場の前の柱に寄り掛かる。

 最近の趣味──ポケゴーをして暇を潰していると、ポンポンと肩を叩かれる。(そら)でした。


「よし、行こうか」

「お、おぅ……」


 何が「よし」なんだろうか。

 

 よく分からなかったが何でも良いかと思い直し、入場券片手に改札まで歩く。

 自動改札機に入場券を通すと、ピピッとか言って吐き出される。


 (うみ)は既に自由席特急券と乗車券(乗車切符)を購入していたので、僕と空と同様にすぱぱっと改札を通過した。


 改札内に入ってすぐのエスカレーターで上に上がると、第一関門である。


「えっとぉ……これ、どっちだっけ……?」


 空が首を傾げる。


 ここは新幹線ホームのすぐ下で、ホームに行くのに絶対に通る場所だ。

 ただ迷うのは、ここで左右に別れる通路をどちらに進めば目的のホームなのか? ということだ。正解は普通に左──5番線だ。

 まぁなんとなくは分かっていても、普段使わないし慣れないし、どちらに行くのが正しいのか、と悩むのは一般の人であれば当然のことと思われるが。


「えっと確かさ、さっきの表示板みたいのには、38分のは5番線からとか出てたから……多分、左、かな……?」


 姉が首を傾げて僕に正解を求める仕草を見せる。

 僕が問題出してる訳じゃないんだけどなぁ。


「まぁ、正解だな」

「ふ、やはりか……」


 姉はムフフンと、満面の笑みである。そんなに嬉しいのかしら? どっちかって言うと、僕はホーム間違えてなくて良かったぁって思う方だな。東京行くとマジで乗り換え心配すぎて必ず計画に十分という十分な余裕を持たせてしまうね僕は。シャレじゃないよ。特に東京(とうきょう)駅の京葉(けいよう)線は鬼畜。まぁあれも夢の成田(なりた)新幹線の名残なので責めないでおこう。


 左に折れてエスカレーターを上がると、遂に5番線──東京方面のホームだ。JR静岡(しずおか)駅の東海道(とうかいどう)新幹線ホームは相対式二面二線ホームで、その間を通過線(下り上り本線)二本が通っている。


 現在、既に5番線には新幹線──700系が停車していた。これもそろそろなくなっちゃうのかなぁ。

 因みに僕が一番好きだったのは300系。幼い頃に最も慣れ親しんだからだ。


「うわっ、もういる!」


 姉が慌てて列車に乗り込もうとしたのでその肩に手を置いて制止させる。

 その瞬間、ドアが閉まるとの旨のアナウンスが始まる。それと同時に警告音も鳴り響く。


「何? もう乗んないと行っちゃうよ!」

「ちゃんとアナウンス聞いてご?」


 僕が落ち着いた声音で言うと、海は口をへの字に曲げながらもアナウンスに耳を傾ける。


 ──こだま638号東京行きが発車します。ドアが閉まります。


「あっ……」


 海は間違いに気づいたようで、声を漏らす。


「ね? 次のヤツなんだよ」


 そしてガーーッという音が鳴り、ドアが閉まる。

 700系はゆっくりと、滑らかに、静かに動き出し、そしてあっと言う間に加速して静岡を後にした。


「おぉぅ……」


 海が、700系を見送りその姿に感動していた(ように見えた)。


 僕もすかさずカメラを構え、下手くそに撮影する。まぁ気休めみたいなもんだから……。


「そっかぁ、一本早かったのかぁ」

「そうだよ」


 これだからこの人は危なっかしいのだ。

 因みにこれから姉が乗るひかり号は、いつだかのダイヤ改正時に車両が全てN700系に統一された。だから、700系の運用はこだま号の定期と、のぞみ号の臨時のみとなってしまった。なんとなく時間の流れというのを感じる。


「……あっ、でも、今のに乗っちゃえば、先に東京着くんじゃないの?」


 おおっ、池上風に言うと「良い質問ですねぇ」だな。


「いや、そうじゃない。こだまは各駅停車だから、ひかりより遅く着くことになってんの。って言っても一ケタ分くらいの違いだけど。今のこだまだと、確か小田原(おだわら)とかで追い越せるんじゃない?」

「へぇーっ。(りく)くん何でも知ってるなぁ」

「いやいや」


 へへへ。改めて言われると照れますな。

 まぁこれは多分知識があれば解ける問題、みたいな感じだと思う。

 基本、優等新幹線は、ある駅に停車している非優等新幹線を、駅に停まらない──つまり駅を通過する──事で追い抜く。必然、海が乗車するひかり号が、今出たこだま号を追い抜くのは、ひかり号の停車駅以外となるのである。従って新富士(しんふじ)三島(みしま)小田原(おだわら)と絞れる。今のこだま号は定刻の20分発だったので、次のひかり号の出発までは18分の時間差がある。18分というのは新幹線内では結構デカい時間で、こだま号でも追い越しをされなければここから三島手前まで行けてしまう時間なのである。

 次に考慮すべきは、ひかり号とこだま号の和の約二倍の本数を誇る、のぞみだ。今も目の前を超高速で通過していったが──静岡県内に、のぞみ停車駅は存在しない(泣)。新幹線駅の数は日本一のくせにふざけんなとか、県内通過する時カネ取るぞとか言ってはいけない(泣き笑い)。

 で、最強のぞみちゃんはひかり号さえも余裕で追い抜かしてくれる(泣)訳だ。前述したように、ここいらの優等新幹線──この場合は、のぞみ──は、駅に停車している非優等新幹線──ひかり──を追い抜くのだ。これから海が乗るひかり号の停車駅は熱海(あたみ)新横浜(しんよこはま)品川(しながわ)、終点東京(とうきょう)だ。新横浜~東京は全種別の新幹線が停車なので、ここでひかり号がのぞみ号に抜かれることは有り得ない。つまりのぞみ号がひかり号を追い抜かそうとすると、新横浜までには抜いておかなければならないのだ。しかし、ここで残念なお知らせ。熱海駅新幹線ホームは、通過線なしの相対式二面二線。つまり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のである。()()()、のぞみ号がひかり号を抜かすためには、ここ──静岡で抜いておくしかないという訳だ。ここまでOK? いやまぁOKじゃなくても良いです。飛ばして下さい。

 ひかり号を静岡で抜いたのぞみ号は、当然各停のこだま号も抜く訳で、するとあらやだ距離と時間的な話で三島でこだま号を追い抜くんですねぇ。で、三島でそのこだま号がのぞみ号に抜かれてる頃には、ひかり号も静岡を発車している。

 もうこの時点で小田原でしか抜けないって分かる訳だ。もっと言うと、前述の時点でこだま号とひかり号の距離って大分縮まっている。ひかり号は静岡を出た後抜かれないけど、こだま号は停まる駅停まる駅で抜かれまくるからである。すると、小田原でピッタンゴ。こだま号が停車してるのを「は、何お前。ちょうちんとか持ってんのかよw 俺先行って⑨で女の子と買いモンしてるわ」とか良いながらひかり号が抜くのである。うわ、最低……。ってかリア充なのかよ。

 これで、解説終了。説明、分かった? 

 ……え? 分からない? よし、なら大丈夫。あなたは尋常な人間だ。僕も自分の説明の下手くそさに驚き。ダイヤグラムとか作れば一発で分かるんだけどなぁ。


 そんな感じで黙々と思考する僕の目の前を、またしてものぞみが通過する。

 ビュゥンビュゥンビュゥン……──と、あまりにも高速で轟音を奏でるものだから、悔しさを通り越していっそ清々しいまである。

 いやでも、マジで静岡にのぞみ停めてほしい。西日本管内だけど、新山口(しんやまぐち)とか徳山(とくやま)にものぞみ停まるんだよ? おかしくない? ……え、何々、おかしくねぇだろ何言ってんだこの糞アンポンタン……? そ、そんなこと……。せ、せめてひかりだけでも全列車停めてくれませんか…………。


 僕がボーッと線路を眺めていると、姉が問い掛けてくる。


「ねぇ陸くん、自由席の場所ってどっち?」

「ん? 自由席? あぁ自由席ね。あっちでしょ、多分」


 僕はホーム西側を指差す。


「なるほどなるほど。いや、かたじけない」


 姉はそう言うなりつったかと歩き始め「ほら、空ちゃんも行こう!」とか言って空と一緒に行ってしまった。空は呆れた感を全面に押し出していたが、姉が気づくことはなかった。

 僕もその後を追って歩いていくが如何せん、ホームが長い。東海道新幹線は全列車16両編成なので、なんかもう、すごく長い。ローカル線みたいに短いのもどうかと思うけど、無駄に長すぎるのもなんだかなぁという感じである。


 てくてく歩いていくと、入線を告げるアナウンスが流れる。


──まもなく、5番線に10時38分発ひかり460号東京行きが参ります。危ないですから規制線の後ろまでお下がり下さい。この列車は16両です。グリーン車は──


 思うのだが、まもなくというのは「間もない」ということで、本当にすぐ、というのを本来は指していたのではないか。なのだが、この新幹線入線のアナウンス、まもなくと言ってから間が凄くある。二分くらいある。何なんですかね。まぁどうでも良いけど。


 四号車くらいの所まで歩いてくると、やはりちょっぴり人が多いなと感じる。

 やっぱり皆、自由席派かぁ。まぁ平日で人少ないし、ひかりだし、安い方が良いよね。


 はてさて、我が姉妹は何処に並んだかなと、辺りを見回してみるが見当たらない。

 ありゃ? どーこ行っちゃったかな……。


 ボーッと歩いていたせいで見失ってしまった。

 途中で追い越したということはないので、恐らく、さらに後ろ寄りの車両の方へ行ってしまったのだろう。

 そう考えて、背伸びして、少ーし首を伸ばして遠くを見てみると、何とホームの一番端の方に居る。最後尾どころかもう新幹線に乗車することすら(あた)わない。


 慌てて、早足で彼女らのいる場所へ向かった。


「ちょっと? そこ新幹線乗れないんだけど?」


 海は振り向いて僕の言葉に応じる。


「知ってるけどさぁ……」


 要領を得ない返答だったので、空に目を遣る。


「アタシはお姉ちゃんに着いてきただけだから」

「ふーん……。で、姉ちゃんは何してたの?」

「まぁ良いじゃん良いじゃん。よし、一号車まで戻るぞ」

「あ、ちょっとぉ──」


 海は声を掛けて空を引っ張って、たったかとスニーカーを鳴らして一号車乗車位置に駆けていく。

 ……何がしたかったんだ。


 またも、僕は彼女等の後ろ姿を追う。

 そしてそのすぐ右手、金属フェンスを隔てた線路に颯爽と白い巨大な車両が滑り込む。

 16号車──東京方──から入線するので、まぁまぁあった速度もやがて遅くなっていく。

 僕が二人に追い付く頃には小さく、フューン……とかいって止まっていた。

 シャッターチャンス! 撮影完了。


 一号車自由席はがらがらという訳ではなかったが人が少なく、青色のシートの大半は空いていた。


 プシューという圧縮空気音と共にドアがゆっくり開く。一号車から降りてきた数人は、全員背広姿のおっさんだった。会社勤めの人たちだろうかと、他愛もない思考をする。


 その人たちが完全に降りると、今度は姉の前に並ぶ(といっても一人しかいないが)人が乗車を開始した。その人はさっさと車内へと入ってしまい、易々と座席を確保したようだった。


 しかし、姉は一向に動こうとしなかった。


 俯く訳でもなく、ただ目の前を向いている。

 空は何かを感じ取ったようで、姉の腕を取ったまま、彼女の横顔を優しい顔で見つめていた。


 一体彼女は、何を思っているのか。それを確かめたくなったが、今、そうするのは憚られ、また一歩を踏み出すこともしなかった。


 ただ、目前に、緩やかに揺れる黒い髪を傍観することしか、出来なかった。

 最後までお読み下さりありがとうございます。

 いやぁ、静岡の飛ばされ方って異常だなとつくづく思います。リニア開通したらのぞみ停まんねぇかなぁなんて事も考えちゃいます。

 いよいよ次でお姉さんとお別れっすね。ラブコメ感ないっすね。

 言いたい事だけ書きましたごめんなさい。

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