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面倒な僕を助けてくれ  作者: 柱蜂 機械
第一章 入部編
15/69

第11話 始まりの終わり[1]

 お久し振りです(二回目)。


※何か投稿の際にコンピュータの方でトラブルがあったっぽいです。別のが投稿されちゃいました(汗)。

 すみません。

 週明けは一段と暖かさが増してきた。今年の春は遅かったがこれでようやく桜も咲く支度ができてきたらしく、(つぼみ)が後少しというところまで来ている。


 翌週から春休みということもあり、教室内ではウキウキ気分が高まってきている。しかし、春休みにどこか行くって言ってもそんな場所は限られている。この辺りで行くところ……。ドリプラ? セノバ? そういうところでも、僕は充分楽しいと思うのだが、まぁ彼らパリピ連中が行くであろうは、遠出でもして舞浜ディズニーくらいだ。あとUSJ。

 因みにTDR事業主体者のオリエンタルランド──オリラジじゃない──は京成電鉄が筆頭株主で、京成グループに所属しているのだ。そう、ディズニーがあるのは京成のおかげ。なのに客が使いやすいのは京葉線というね。


 とにかくそんな感じで一年生最後の登校週が始まったのだ。


 僕は先週に引き続き、大川井(おおかわい)(はなだ)と愉快な仲間たちとランチをすることになっていて、男子の視線が痛い。そのうち刺される。

 深沢(ふかざわ)(れん)は僕の良きゴミクズ理解者なので曲解することが多々あるが逆に言えばそんな奴としか付き合えてない僕に付き合ってくれてありがとうなんて言うと思ったかアホ野郎という感じだ。……まぁ、今まで通りだ。



 月火水と普通に過ぎていき、春休みまで後一日と迫った木曜日の朝、清水(しみず)五十六(いそろく)先生に呼び出しを食らった。


 職員室に行ってみると、不機嫌そうに先生は椅子に座っていた。


「あの……何か用ですか?」

「うん、用がなきゃ呼ばない」

「なるほど」


 そりゃそうだと納得する。


「で、何の用ですか?」

「部活だ。何部に入るか決めろって言ったろ」

「あぁ、じゃあ帰宅部で」

「そんな部活はない」

「じゃあ作ります」

「そんな部活は作れない」

「……じゃあどうしろと」

「だから部活入れって言ってんだけど?」


 清水先生ははぁとため息をつく。うーんやっぱ教師って大変だなぁ。


「どうかなされたんですか?」


 声のした後ろを振り返ると高身長の女性が立っていた。紺のシャツにパンツスーツ、気だるげな目が特徴的な小澤(おざわ)(のぞみ)先生だ。小さくて眼鏡の清水先生とは対照的だ。

 清水先生はいやぁと苦笑した。


「コイツが部活に入るのを拒んでて、どうしたものかと」


 小澤先生はなるほど、と言って僕に向かう。


「水野、明日まで猶予をやろう。それまでに部活を決めなかったら、こっちでテキトーに選んでおいてやる。それで良いな? 清水先生もそれで構いませんよね?」

「僕は構いませんよ」

「えぇ……?」

「無論部活はサボれん。覚悟しとけよ」


 小澤先生から形容しがたいゴゴゴゴ……といった感じのオーラが放たれている。ふえぇ恐いよぅ。この人、本気そうだよぅ。

 

 怖かったので渋々応じる。


「分かりましたよ。明日まで、ですよね?」

「そうだ。……楽しみに待ってるぞ」


 小澤先生はニィと笑いを浮かべ、立ち去った。

 ああいう孤高な感じの女教師って結構良いと思うんだけど、恐いんだよなぁ。


 僕がボーッと突っ立っていると清水先生から言葉が飛ぶ。


「ということだ。しっかり決めとけよ?」

「はーい……」


 間の抜けた返事をして、僕は職員室を後にした。



 この時期は、昼間が暖かすぎて授業に集中できない。

 ついうとうとしてそのまま睡眠学習に突入してしまうのが悩ましいところだ。

 というかそんな時に授業をやる方が悪いので、僕には何ら非がない。……なんてことを日がな一日考えている。……という洒落を言いたかっただけですごめんなさい。


 そして、まるで夢でも見ていたかのように、あっという間に授業は終了してしまった。これからまたランチタイムである。それでも明日は午前帰りなので、実質これがラストなエンペラーなのだ。うっしゃぁ!


 こう考えると面倒臭さも少しは晴れる。

 ちょっとした喜びを抱き席から立ち上がると、肩を叩かれた。

 後ろを振り返ると、それは眼鏡高身長オタクの深沢だった。


「よう!」

「おう……。何か用?」

「何だよ、用がなきゃ話し掛けちゃダメなのかよ」

「できれば用あっても話し掛けないでほしい」

「……お前って、何か死にそうだよな」

「そう……」


 何だコイツ、人に向かっていきなり死にそうだなとか、人間か?


 僕がエイリアン疑惑を調査しようかと考えていると、深沢は何故か急にピシッと頭を下げてきた。お、何? 何か分かんないけど、すごく良い気分になってきたぞ。よし、そのままずっと下げてろよ?


「お前に折り入って頼みたい事があるんだけど、聞いてくれるか?」

「ヤダ」

「え、ヒドくない? ヒドくない? せめて内容聞いてからにしてくれない?」

「うるさいなぁ……。で、何?」


 本当にうるさい。できれば313系のVVVFインバータくらい静かになって欲しい。あれってだいぶ静か。


 深沢は、ここらでは懐かしのコンプレッサー音並みの五月蝿さで言う。


「大川井とのランチに、俺も混ぜてくれ」

「別に……良いんじゃない?」

「ホ、ホントに!?」

「いや、知らないけど」


 深沢は「うひょー」とか「クォー」とか言ってマジでうるさい。


 周りの連中も、深沢の行動に奇異の眼差しを向けている。うん、皆の気持ちはよく分かるぞ。現に僕も今、コイツと関わったことを後悔しているとところだ。


 そんな僕の思いなど露ほども知らない深沢は、嬉しそうに僕の肩に両手を置きグイグイと押し進めてくる。


「よしっ、早く行こう!」

「待て、購買に行くんだよ……」


 僕が抗議すると、深沢は一瞬キョトンと首を傾げた。そして、色々理解したらしく笑顔で頷く。


「よし、早く購買行こう!」


 うーん、お願いなんて聞いてやるんじゃなかった……。今さら後悔しても遅かった。


 

 購買への道のりを歩いていると、深沢が問い掛けてくる。


「お前、その後どうだ?」

「何が?」

「何がって、大川井さんと上手く行ってんのかってこと」

「さぁ……」


 質問の意味が分からず曖昧な答えを返してしまう。

 上手く行っているとは、即ちどういう意味か? 良好な関係を築けているかどうか? そもそもアレが健全な関係なのかすら定かではないので、良好なのかどうかとかは論外だ。


 深沢は呆れたようにため息をつく。何に呆れているのかは謎だったが、まぁどうでも良かったのでそれ以上は聞かなかった。


 いつも通り購買で焼きそばパンを買う。深沢がウヘウヘしながらパンを選別していたため、おばさんが引いていた。うんまぁしょうがない。


 渡り廊下への道を、僕はたらたら、深沢はウキウキ、といった体で歩いていく。

 深沢は下心が見え透いていて、薄気味悪い。早くどっか行ってくれないかなぁ。


 そして、階段すぐの渡り廊下へと足を踏み出したが、そこには見慣れ出した人影はなかった。


「あれ……」

「おい、居ねーじゃねーかよー。どうゆうことだよー」


 深沢は急にチンピラっぽくキレ始めた。あーやっぱ五月蝿(うるせ)ぇ……。


 しかし、確かにそこに人はいない。薄茶けた床やベンチが、ただただ春風に吹かれるのみである。

 今まで僕が来る時は、既に四人とも待機していたのだが……。どういう訳か、今日はいない。


 何かで遅れているのかも知れないが、あの大川井さんのことだ。時間なんかは律儀に守りそうである。無論約束などはしていないが。


 深沢は苛立ちやら残念さやらを、僕にぶつけてくる。


「おい何なんだよ。お前が良いって言うから来たのにいないし。お前、俺に一杯食わせたな」

「バカ言え。お前に食わす一杯なんぞ持ち合わせてたら、とっくに野良犬にくれてやってる」

「え、ヒドくない? 近所の犬より一杯食わす価値ないの俺?」


 急にテンションがガタ落ちした深沢を無視して、取り敢えずいつものベンチに腰を下ろす。

 

 僕と彼女の関係を鑑みると、わざわざこちらから彼女を探して呼びに行く必要はなかろう。行ったって何か言われて、僕が無条件で悲しくなるだけだ。それに行き違いになってしまってもいけない。そして第一、呼びに行くのが面倒すぎる。


 久々に一人、いや深沢も居るな。まぁとにかく先々週までのように昼飯を食べることができるのだ。それを自らおじゃんにするのは阿呆野郎だ。

 しからばどう致すか。

 答えは単純明快、労力を最大限惜しみ、最大限のリターンを得る。

 つまり今からここでさっさと昼飯を頂こうということだ。


 という訳で、いただきます。

 僕は焼きそばパンの袋を開けてモグモグと美味しく頂く。


 深沢もテンション下げポヨ~w(死語)だったが、よろよろと歩いて向かいのベンチにどっかりと腰を掛けた。しかし、購入したパンに手を付ける様子はない。

 差し詰め「大川井が来たら食べる!」ということだろう。なら、僕が何かごちゃごちゃと言うことでもない。

 僕はムシャムシャと焼きそばパンを頬張る。いやぁ美味いなぁ。


 蒼穹を見つめる深沢はポツンと呟いた。


「きれいだな……富士山」


 いつの間にかその視線は僕の後ろ側へと向けられていた。僕もそれと同様に振り返る。


「そうだな……」


 深い青の地に白い雪が積もっている。これがメジャーな富士山の姿だろう。


 静岡市の平野部なら基本どこにいたって、富士山は良く見える。日本平とかなら尚更であるが、とにかく日常の風景に同化しているのだ。

 北には竜爪山や南アルプスの山々が。

 東は駿河湾。

 南には日本平を挟んでまた駿河湾。

 西にも静岡―糸魚川(いといがわ)構造線に沿ってポコポコと突き出た小高い山々。

 しかしその中でも別格がやはり富士山なのである。

 他の山より一際大きく、また時に霧に隠れ、時に美しさを輝かせる。

 自宅近くの旧東海道から日本橋方面を見ると、真正面に荘厳な富士山を望める。江戸時代の人々もこんな景色を見ていたのかと思うと、何だか不思議な感覚になることもある。


 僕が富士山に目を細めていると、深沢ははぁと、またしょうもないため息をついた。

 僕は顔を体の正面に戻し、再び焼きそばパンを食べる。


 ゆっくりと時間が流れる。

 南の方から吹き抜ける春風のように雲が動いていく様を、ボーッと眺める。

  

 あの雲はどこに行くのかと、答えのない問いを自分に投げ掛ける。返ってきたのは「さぁ」という間の抜けた声。分からないものは分からない。それが心理だ。


 今目を閉じれば、心地良くて眠りに落ちてしまいそうだ。

 昼休みの時間はまだまだある。寝てしまおうか。いや、寝過ごしてしまうというのも、あまりよろしくない。だったら授業中に寝ていた方が受けが良い。


 そう思っているのに、首は前に倒れまぶたは重くなってくる。いつもよりずっと強い眠気だ。

 目をパチパチと開けたり閉じたりするが、だんだんと閉じている時間の方が長くなっていく。


 耐え兼ねて、目を閉じる。少しだけ、少しだけ目を閉じよう。寝る訳ない、寝る訳ないと思い込んでいるうちに深い海に潜ったように意識が飛んで行く。そこからは引き上げることすらかなわない。


 淡い光と穏やかな風の音の海に僕は沈んでいった。




 ブンブンと頭が揺れる。


「水野」


 一気に目の前が明るくなり、少し眩しく感じる。


「……おぉ」


 あらら……、そういえば結局寝てしまっていたのか。


「大丈夫かよ?」

「あぁ……どんくらい寝てた?」

「まぁ二十分くらいか?」

「そっか……」


 深沢はふぅとため息をつく。

 

「俺、もう戻るけど、どうする?」

「……じゃぁ僕もそうしようかな」


 ここにいるとまた寝てしまいそうだった。よっこらせと立ち上がり、んっと伸びをする。


 ちらと深沢を見ると、その手には空の袋があった。どうやら待ちくたびれてパンを食べてしまったらしい。


 結局大川井さんたちは来なかった訳だが、何かあったのだろうか。彼女が無断でこういうことをする人とは思えない。


 深沢はどうにも残念そうで、テンションが低い。ツイてなかったな……。


 僕たちが渡り廊下から再び校舎内に入ろうとしたところで、前を歩く深沢が立ち止まる。僕はまんまとその背中にぶつかり、危うく転倒しそうになった。


「何で止まんの……」


 僕が文句を言うと、彼は呆けた様子で右斜め下、中庭を指差した。


「なぁ、アレ……」

「何かあんの……?」


 僕もそれに習って、中庭をに目を遣る。そこには校舎よりに、数人の生徒が集まっていた。


「あれ……? アレって……」


 見覚えのある生徒を見つけ、手摺(てすり)に寄る。

 僕の言葉の続きを深沢が受ける。


「大川井じゃねぇか……?」


 確かにそうだ。あのスラッとした体躯に、黒色のセミロング、遠目から見ても分かる。

 大川井縹だった。


 彼女の隣には幹部筆頭の中村(なかむら)(あや)と思しき女子が立っている。しかし宮城島(みやぎしま)美優(みゆ)とゆっきーこと三島(みしま)祐樹(ゆうき)(彼の名前は深沢に教えてもらった)の姿がない。

 その代わりに見たことがあるようなないような微妙なラインの女子三人、そして背の高い男子一名がいる。

 大川井さんと中村さんが校舎の壁に背を向けて、他四人と向き合っている。恐らく何らかの話をしているのだろう。しかし、話といっても仲良く談笑、ということではない。雰囲気からして少し険悪そうである。


 それにしても、こんなシチュエーション、今までの大川井史にあったのだろうか。少なくとも僕の記憶の中にはない。一体アレは何なのだろう。


 状況を不思議に思いながら見ていると、深沢が口を開く。


「お前、行かなくて良いのか?」

「え……」


 予想外の質問に戸惑い、彼の顔を窺う。深沢は真剣味を帯びた視線を僕に向ける。


「アレ、気にならないのか?」

「え……まぁ気になるといえば気になるけど……。何で?」

「お前、大川井に用心棒として雇われてんじゃないのかよ」

「そうだけど……」


 もしかすると、これはギャルギャルな女子連中が大川井さんに詰め寄っている様子なのかも知れない。ついに大川井派とギャル派とで、闘争が起こってしまったのだろうか。


 しかし、だからといって僕が行くべきであろうか。


「でも、僕は、……こういう時、居なくて良いって言われたけど」


 「立ち会わなくて結構よ」 大川井さんの言葉が脳裏をよぎる。


 深沢はムッとした表情になる。


「なら……、なら行くぞ」

「は? え、ちょっと待てよ……!」


 深沢が僕の腕を握ったのを慌てて振りほどく。


「今言っただろ。別に良いって」

「いなくて良いってことは、いても良いってことだろ」

「はぁ? そんなのこじつけじゃ──」

「これはお前の選択だ。行くべきか行かないべきか、じゃない。行きたいか行きたくないか、どっちかだろ?」


 深沢にしては実に男気のある言葉だった。

 しかし、その解釈は間違っている。


「……違うな」


 僕が呟くと、深沢は怪訝な表情で僕を見る。


「行きたいか行きたくないか、じゃない。もしそうなら、行きたくないに決まってる。……でも」

「………でも?」


 言葉が詰まり、その間隙に深沢が反復してくる。ホントに調子良い奴だ。

 あんまり、口にしたくないのだが……。


「……でも、知り合いの女子が何か、その……困ってるんだったら、そのまま見過ごすべきじゃない、と思う……」


 僕が言い切ると、深沢は目をぱちくりとさせていたが、すぐにニッと笑う。


「そう来なくっちゃ。それでこそハーレム主人公だ。行くぞ」

「バカか」


 深沢が駆けていく後に僕も続いた。

 最後までお読み下さりありがとうございます。

 これを投稿出来ていますのは、テストが無事(有事)爆死しましたおかげですね。さぁ、一体どんな結果になる事であろうか…………。

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