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最終話 オッサン、暴露される。

「アマサギさん、ノスリさんの冒険者ランクは本当はいくつなんですか?」


 ノスリと別れ、数日が経った。今日はアマサギとの初めての訓練だった。ノスリのように毎日つきっきりではなく、普段は冒険者活動をこなし、彼女の都合がつく時間に教えを受ける形だ。

 そして訓練の終わりには、次回までの課題を与えられることになっている。


「コルリ。それ、どういう意味?」


 ヤイロは、意図が分からずに素直に聞いた。訊ねられたアマサギは口許に手をやり、ふむと考えている風情だ。


「ノスリさんの戦い方、アイテムボックスのスキルの扱いが、どう見ても一般的じゃなかった。単独の指名依頼もこなすほどで、それなのに下位冒険者なんておかしい」


「ああ、君は良いところを見ているね。その点で言うなら、ノスリは今、下位冒険者の地位で合ってるよ」


「はぁ!? あの強さで下位!?」


 ぎょっとしたのはイスカだ。信じられないと口をあんぐりと開けて間抜けな顔をしている。


「今はと言っただろう? 加齢が辛いと、自らランクを下げたんだよ」


「え、自分で――?」


 コルリとヤイロが口を揃えて、アマサギの言葉を反芻した。メリットがない気がしたからだ。


「Aランク以上の冒険者、要するに高位だね。緊急依頼や指名依頼が増える。そう言うのに対応するのが疲れたんだと、面白いだろう? 分からないでもないけどね」


 肩をすくめて語るアマサギは、大人の事情だよと笑っていた。


「覚えていくといい。君たちが肩を並べたいと思った男は、スキルの極致に至った者だ。A、Sランクとは、スキルに独自の進化を見いだした者たちにしか与えられない」


「スキルの、極致……」


「進化……?」


「ノスリは、やはり言っていないようだね。君たちの普通のスキル、それと君の上位スキルは言わば初期位置に過ぎないのだよ」


 コルリとイスカ、そしてヤイロをそれぞれに指して、スキルは等しく無限の可能性を秘めていると、アマサギは説明する。

 地面に、他国で行われる武闘トーナメントの表をガリガリと書き込んで、例え話をしてくれた。


「普通のスキルは全て、トーナメントの一回戦だな。そして、上位と呼ばれるものは一種のシード権。最初の試合を幾つか飛ばすようなものだ。勝ち抜くほどに、その力は戦う相手より強いものだと言えるのは分かるかな? それはスキルの成長だと思ってくれ」


「じゃあ、上に行くほど成長を繰り返しているということ?」


「そう。己のスキルの把握、熟練度……、技を磨くとも言うね。そうして、この天辺に到達出来る者は、表を見れば分かるように一握りだ。この領域に辿り着く者は固有の進化を遂げる」


 トーナメントと違うのは、その天辺の椅子が決して限られたものではなく、望めば誰でも用意されているのだとアマサギは言った。


「ノスリの場合は際限なく、あらゆるものを独自の空間に収納し、出し入れを可能にすると言った具合だね。そして私は雷を操る過程で、村一つ分の規模なら雨を呼ぶことが出来る」


 極致の例えを、さらりと言ってのけたアマサギはそこで困ったように笑う。すごく見えるけれど、実際はとても地味なことの積み重ねなのだ、と。


「私の場合は、日照りのところへ雨を呼べと命令が下るし、ノスリは緊急依頼、特に大規模移動などでは全ての物資の運搬を担わされる。そして運搬要員以外に当然、戦闘もね。

 やることが多いし、気を遣うし、名前も書いてない荷物を全て把握して、相手に合わせ出し入れするのは、頭が痛いし疲れると笑っていたよ」


「あの個人のスキルって、すごくプライベートなことをさらっと言って良いんですか? オレたちが聞いても……?」


「スキルの極致は、確かに広く知られてはいないが、そもそも知っていたからと至れるものでもない。それに私もノスリも知るところでは、スキルの使い方など有名だからね。今言った範囲は別に隠してはいないさ。そして――」


 一般的な共通認識以外の個々のスキルは、個性のように微細な違いがある。だから、知られたくない場合は秘することが許されていた。

 確認するように聞いたコルリだけでなく子どもたちが三人で戸惑っていると、アマサギは微笑を浮かべる。ただ、その目はスッと細められて笑っていない。


「ノスリは余計な心労を与えないために多くを語らなかったのだろうけど、スタート地点に立ったばかりの君たちが目指す場所は、遥か高みであると理解する必要があると私は思う。ノスリが目をかけ、私が鍛えるのだからね」


 そこに込められたものは、とても重い期待だった。アマサギもまた、子どもたちを一人の冒険者として扱ってくれていた。


「はい。これから、よろしくお願いいたします!」


 だから、晴天の下、眩しい日差しに負けない大きな返事をもってその好意に答えた。これから先も応え続けられるのか、それはイスカ、コルリ、ヤイロ次第だった――。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

本作はカクヨムで開催のイケオジコンテストに参加するにあたり書いたものになります。

これにて一旦完結となります。 最後まで見届けていただけたこと、心より感謝いたします。


ノスリのヘタレが!と笑ってもらえましたら 、ぽちっと応援していただけると今後の活力になります( *´艸`)

また、別作でもお会い出来れば嬉しいです。


ありがとうございました!(*^^*)

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