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今昔悪童ポーカー狂騒曲  作者: DA☆
第三章・本気と書いてマジ卍
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第三章・本気と書いてマジ卍 / 2 (ポーカープレイシーン有)

 「では、始めましょうか! 初期スタックは3000$です。お手元にちゃんとあるか確認してください、ちゃんと確認しましたか? 後から足りないと言ってもあげませんよ」軽口を飛ばしながら、富市がトーナメント開始前の注意事項を並べていく。「ルールは国際(TDA)ルールに準拠しますが、最終的な判断はトーナメントディレクターである僕が下します。トラブルがあった場合は、各ディーラーはいったんプレイを止めて僕を呼んでください。……それではいいですか? いいですね? レベル1はブラインド25$/50$、各レベルは15分、さぁ、楽しんでいこう、シャッフルアップ・アンド・ディール!」


 富市が腕を振り上げて号令を放つと同時に、二面ある大型モニターのうち一面に表示されたタイマーが時を刻み始めた。ブラインドタイマーと呼ばれ、トーナメントの時間経過を示すものだ。長丁場のトーナメントが始まったのだ。




 ……老体二名は序盤であっさりと敗北した。


 ジョーは、ディーラーポジションで手札に♡7♡8を引いた。


 フロップ以降では、各ベッティングラウンドはスモールブラインドの席から始まり時計回りに進行する。従って、スモールブラインドの右隣であるディーラーポジションは、最後に行動する席だ。他のプレイヤーの行動を見てから自分の行動を決められるので、有利といわれる。


 プリフロップでは、ひとりがレイズ、ジョーを含めて四人がコールした。


 フロップには、♣J♠9♣6であった。レイズしたプレイヤー(レイザー)のハーフポットベットに、ふたり下りたが、オープンエンドストレートドローのチャンスとみたジョーはこれにコールした。


 ターンは♡10だった。ストレートが成立し、ジョーは勝ったと思った。レイザーのさらなるベットに思い切ってオールインで返すと、レイザーはこれにコールした。


 レイザーの手は、♣K♠Qであった。


 この場合、ジョーが7~Jのストレートであるのに対し、相手は9~Kのストレートであり、カードのランクが劣るジョーの負けとなる。


 雇われでディーラーを務めていた青年は、屈託なく柔和な笑みでジョーにとどめを刺した。「初心者が見落としがちなリスクですね」




 テツは、BB(ビッグブラインド)で手札に♠7♣7を引いた。DP(ディーラーポジション)まで全プレイヤーがフォールドすると、SB(スモールブラインド)つまり彼の右隣にいた若者が、にやにや笑いながらいきなりオールインした。


 ブラインドを払ったプレイヤーをフォールドさせ、ブラインド分のチップだけかすめ取る手法をスチールと呼ぶ。しかし、ブラインド額の少ない序盤に、オールインでもってスチールを敢行するのは、リスクとリターンがまったく見合わない。ほぼ悪ふざけと称して差し支えないアクションだ。


 相手が年寄りとみて舐めてかかったのであろうと判断し、テツは冷静にコールした。SBの若者が驚愕の表情を浮かべた。出てきた手札は♠8♢3。読み通り、酷い手札であった。


 これならば、共通札に8が出ない限り、ほぼ負けはない───テツはそう思い、ナメ腐ったガキにふんと鼻を鳴らした。


 フロップは♠A♢Q♡Q。ターン♠2。


 そしてリバーに、♢Aが開いた。


 8ではない。ならばテツは勝ったと思った。ところが、とたんに右隣の若者はガッツポーズをし、よかったよかったと胸をなで下ろすポーズを大仰にしてみせた。


 なぬ? 俺が勝ったのではないのか? と頭に血を上らせかけたテツに、そのテーブルのディーラーは、共通札にAとQのツーペアができていることを示した。この場合、7のペアは有効ではなく、テツの役はAAQQ7のツーペア、相手はAAQQ8のツーペアとなり、ペアに属さない手札(キッカー)の差でテツの負けとなる。


 雇われでディーラーを務めていた青年は、屈託なく柔和な笑みでテツにとどめを刺した。「初心者が見落としがちなリスクですね」




 かくして、町の名士にしてバクチ歴五〇年の男どもはふたりして初心者扱いされ、ルール覚えてから来いよじじぃ、てな陰口を背に受けて、無言で席を立つことと相成った。


 苦虫を噛みつぶすばかりであるが、負けは負けである。負けたときこそ冷静に振る舞うのが、バクチ打ちの矜持というものだ。


 ───ポーカートーナメントは、負けたらそれまでである。


 優勝者が決定するまでに、小規模でも数時間、最大規模ならば一〇日もかかるスケジュールが組まれるので、社会人がトーナメントに出場したくばそれだけの休暇を確保しなければならない。しかし五分で敗退せしめられてハイサヨウナラ、なんてことが当然にあるのだ。


 テツとジョーもまた、手持ちぶさたとなり、しばし無言で立ち尽くしていた。


 と、近くのテーブルからどっと歓声が挙がった。続けて、スピーカーが金切り声で割れ、ブラインドタイマーとは別の大型モニターの画面がガタガタと震えた。


 「うっわぁ、これは強烈なブラフキャッチ! 今大会の台風の目、真保アリエスさんがまたもビッグポット獲得! 勢いが止まらない~っ!」


 ヘッドマウントカメラを通した光恵の配信実況である。アリエスが、回収したチップを整理する姿が映っていた。その量が凄まじい。二〇枚ずつ積むのがマナーなのだが、それでは収まらなくなりつつある。他のプレイヤーの一〇倍、二〇倍は積み上がっているだろうか……。


 やはり彼女は、昨日のできごとにめげず、今日の大会に参加していた。トーナメントを勝ち進み、優勝してマカオに行くつもりなのだ。ふたりは彼女のいるテーブルに近づき、ギャラリーとなってプレイを見守った。


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