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Dimensional Vibrator -Transcendencer-   作者: 小礒岳人
―Savage Land―
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2

数時間前―

初出撃を前に、赤守猛也は昂ぶっていた…

10月下旬 夕刻


新宿五丁目 多重次元震動問題対応戦術戦略組織"プレディクトル"地下施設、"第三マグナス機関"大型作戦会議室



マーカス「それでは、これより作戦概要及び、本作戦に於ける君達の役割を説明する」


そう会議室の壇上で流暢に述べるのは、ダークブラウンの髪と藍眼のジャケットを羽織った長身の小綺麗な白人=この部隊の指揮を執るマーカス・ベルゲンだった。

その前には数名の白いシャツと肩に"OUTWAIN"のワッペンを付け、スラックスorスカート姿の男女が座っている。


マーカス「本作戦は、先の調査によって解った虎ノ門五丁目に存在するディフェクトゥム(出来損ない)共… 巣を探しだし、殲滅する事…そして、それに伴う初の次元震動技術応用兵装を用いた実戦であり、決して表に出る事のない戦闘である その為に我々"OUTWAIM(アウトウェイン)"は存在し、君達は選ばれ、訓練を受けた それに誇りを持ちつつも、無謀な真似はせず、生還してほしい」


その言葉に、漸く実戦で自分の実力を発揮出来るという意識を静めるのが大変だった。


ここまで来るのに相当な数の試験をこなしてきた。


身体能力向上の為の体力トレーニングに戦術プログラムやチームワーク…


そう、一番面倒なチームワークまで。


自分が出来るという所をを見せるために、相当な努力をした。


コレで、自分は認められるのだ。


赤守(あかもり) 猛也(たけや)はそう心の中で豪語していた。


マーカス「…それでは、選ばれた二名は、これから強化外骨格ディメンショナル・バイブレーション・ギアを装着する事になる テストでは既にレクチャーは受けているだろうが、開発者の今井博士から説明がある バックアップ含め、装着者の生命に関わる重要な案件だ 全員聞く様に」


そう言って壇上から引くと、卯建(うだつ)の上がらない様な風貌の白衣を羽織った眼鏡と髭がトレードマークの中年男性だった。


今井「えー…最初に言っておきますが、マーカス隊長の言ったDVギアという名称は正しくありません! 正しくは、"Reinforced(多重) exoskeleto(次元)|n with bu(震動)ilt-in mul(応用)tidimensio(技術)nal vibrat(内蔵)ion applic()ation tech(強化)nology(外骨格)"略して"REMuViAT(リムーヴィアット)"であります」


どうでもいいよ。


そう猛也は心の中で愚痴る。


それが今井重工の代表であり、義肢等のサイバネティクス技術の麒麟児と言われたM・今井博士だった。


一代でここまで企業を拡大出来たのは、この変な拘りとユーモラスさで繋がりを付け、多国籍企業"シィナンファー社"のブレッダ・ウォンに出資させ、支援組織「プレディクトル(予測者)」を立ち上げ多重次元震動技術を応用、発展させ、この"DVギア"を作成するに至ったと()()()()()()が…余り自分には興味の無い事だった。


猛也としてはそんな事に興味は無く、"ギア"と自分が活躍する事にしか興味は無かった。


寧ろ今井のよく解らないユーモアと絡みは自分にとって生産性が無く、鬱陶しかった。


それにそもそもMとはなんだ。


何で英語風なのか。


一度それを聞いたら、『なんかM・ナガノ博士みたいでカッコ良くね?』の一言で返され、"意味が解らん"となり、苛ついた。


最後の試験の後、合格を知らされた時に一度真面目な顔で言われた。


今井『キミの戦う理由はなんだい? 解らないのなら、一度深く考える…イヤ、思い出してみると良い』


イミが解らん。


そんなの他人のアンタには関係無いし、敵を倒してりゃどーでも良いだろ。


と、心の中で愚痴った。


決まっている。


戦って自分の価値を認めさせる事だ。


そうこう一人思いに(ふけ)っている間に、今井博士の説明は大分進んでいた。


今井「…というわけで、"リムーヴィアット(ギア)"は多重次元震動技術の応用により、絶対的な防御と身体能力の向上を可能にしました

ここにいるみんなは渡したマニュアルを熟読されているとは思うので解っていると思いますが、四倍になった身体能力と次元震動技術により、今まで対処方法の無かったアドヴェルサリィ(敵対する者)に致命的なダメージを与えられます」


正美「あの」


そこまで話して、志良川(しらかわ) 正美(まさみ)が挙手をし立ち上がった。


志良川「スペックは読んで解ったのですが、外骨格のデザインが記されていませんが」


デザインなんてどうでもいいだろう。


もう一人、自分以外の装着者はこの女だ。


長い髪を後ろに纏め上げ、キッチリスーツを着こなした、一目で真面目且つ余裕が無いと解る"面白みの無い"女。


毎回毎回自分に突っかかってくる。


正しい事をしろだのどうだの面倒臭い。


堅苦しくてルールを守る事を遵守しようとばかりして応用が無い。


この女とは馬が合わない。


毎回毎回鬱陶しい事この上ない。


そのお陰か、周りからも余り好かれていないらしい。自分もだが。


だが構わない。


それを選んでやっているのだから。


自分は孤独で良いのだ。どうせ後に実力で見せるのだから。


そうすれば人など付いてくる。


その考えが猛也の中の全てだった。


今井「それはねー 敢えて言ってなかったんだよ このカッコイイデザインを発表するのは目前が良いだろ? テンション上がるでしょ? デデェン♪」


そう言って背後のデジタルホワイトボードに映像が出る。


猛也「゛な…」


正美「ちょっ…!」


そこに写されたのは全身ピッタリのウェットスーツの様なモノの上に各部申し訳程度に感じられるアーマーの様なモノが付けられており、頭部にはヘルメットとドギツイ紅というカラーリングで、コスプレか!と思わせるデザインだった。


一瞬静まりかえった後に、さわさわと周囲がどよめきだしたのを無視し、今井が続ける。


今井「どーだい! いーだろ! この赤がメッチャクッチャカッコ良くない?! コレを着られる人はスッゴイ幸せだよねー! こーんな一昔前に見られた夢の様な能力をこんなカッコイーデザインで行使出来るなんてさー! ポリマーみたいで良くね?」


なんだポリマーて。化合物か。


猛也は心の中で罵った。


正美は赤い顔をして開いた口が閉じないでいた。


猛也「あの…博士、説明は 外装のデザインに関してはもういいんで…」


その言葉で我に返る。


今井「お? ああ、そうだ スペックは渡したマニュアルに載ってるんでカット

実際の着心地やらなんやらは問題無いよ この両腕、腰に装着する"スヴェル"が、ギア装着時に全身を覆う金属皮膜(ベーススキン)に成る。液状化し全身を覆った金属皮膜(ベーススキン)はダイラタンシー技術を用いた常温超伝導金属と半金属ビスマス混合のトポロジカル絶縁体で、君達をエネルギー源としても、衝撃や熱からも守ってくれる優秀な"下地"だ」


それは読んだ。


装着者を電池に見立て、体温によるエネルギー源の確保。これによりDVギアは永久機関を得たのと同義だと。

その代わり、際限ないエネルギー源は暴走の危険も孕むと。


今井「そして、外部に形成されているアーマー部分である、この、脛、大腿、股間、腹部、胸部、腕部、肩部、背部、そして頭部のヘッドギアは"青生生魂(アボイタカラ)"で出来ている

非常に柔軟で、身体にフィットし、伸び縮みもする これらは肉体との延長ではなく、身体そのものの強化をしたも同様だ

コマンド入力を行うのもヘッドギアを着けて喋れば認識してくれる

それ以外の背部スラスターの動作に於いても、首の裏に設置された脊髄反射コネクターのお陰で身体の一部として動作する」


そう、その技術によって、ほぼ全ての動作を思考と脊髄反射で行う事が出来る。音声入力を行うのはモードチェンジ以外では無い程、操作は直感的で簡略化されている。


今井「それと、武装のDガン、Dブレードは、君達の"リムーヴィアット(ギア)"専用だから サポートで付いていく人達は絶対にアドヴェルサリィ(敵対する者)に接触しない様に

奴等"次元の狭間にいる存在(BBD)"は接触すると結晶化が始まるから、D兵装以外ではそもそもダメージを与えられないし、足止めにしかならない

サポート要員はそれを肝に銘じてくれ」


アドヴェルサリィ(敵対する者)達"次元の狭間にいる存在(BBD)"には通常兵装が効かない。全て次元の向こうへ流されてしまうから。

それに対応出来るのは、同じ次元兵装であるギアとD兵装だけだ。


今井「イヤーでもこの青生生魂(アボイタカラ)はスゴイよねーコレも"プレディクトル(協会)"の上の"オラクル"から譲ってもらったんだけどさー! スゴイんだよー 伝説の金属は伊達じゃないよねー!」


また話が逸れ始める。


猛也「あの、博士、装着は…」


今井「あ、そーそー! 君等が装着するにはコレ、コレが必要だから」


そう言って作業員4名程が巨大な台車でゴトゴトと現物を引いて会議室に入ってくる。


今井「コレが、君等が"リムーヴィアット(ギア)"を装着する次元転送装置"Pistillum(ピスティリゥム)"だ」


作業員が後ろで作業するのを尻目に解説を始める。


それは棺桶の様なデザインで高さは2メートル中ほどあり、前面装甲下方が観音開きで左右に開き、残り装甲上部が上にスライドしてハッチが開いた。


猛也「コレが…」


人が一人入れる大きさで、中は何も無い。


正美「て事は…」


青ざめて正美が言う。


猛也はその言葉の前に理解した。


正美「服は…」


今井「ん? ああ、外で脱いで入るよ」


正美「そっ…そそそそそ外だったらどーするんです?!」


裏返った声で顔を赤くして述べる。


どーでもいい。


猛也の中で正美を(なじ)る。


今井「あー…ゴメンねぇー まだ技術的に仮面ライダーとかみたいな服着たままの変身! みたいの無理なんだー… てか、服着たままだと後で服エライ事になっちゃうよ?」


サラッと言う。


今井「まーまー 今のところ絶対的に昼間出る事は無いし、それに外での装着でも見えない様に後ろ向いててくれるよみんな♪」


無責任に軽く言った事に対し、


正美「絶対着替える設備作って下さいね!!」


と、詰め寄りそうな剣幕で壇上の今井に睨みをきかせた。


今井「えー…? あー… わかったー…」


完ッッ全に興味が無いというリアクションで答える。


やらねぇな コレ。


猛也が心の中でごちる。


今井「ま、大まかだけど装着はこんなカンジかなぁ 後は皆マニュアル読んでると思うし、それじゃあマーカスに戻すよ 頑張ってねー」


と、"言いたい事だけ言った発表会"を終えて満足したのか、軽く手を振りながらそう述べると、入れ替え様にマーカスが壇上に戻る。


マーカス「さて、それでは以上でブリーフィングは終わろうと思う 諸君等はこの後任務に向かう だが、最初に言った通り、"死ぬな" "絶対"に 無事に戻ってくるんだ 良いな…!」


冷静かつ理知的であるが、最後の語尾に強い意志が籠もっていた。


ハイ!と全員立ち上がり一斉に声を張ると、マーカスが壇上から降り、解散となった。


猛也も立ち上がり、出撃の準備に入るため部屋を出ようとする。


正美「赤守…!」


呼び止められ、初陣の気を削がれた事に苛立ちを覚える。


猛也「…」


何も答えず正美を眼の端で睨む様な視線をくれてやる。


その視線に不愉快そうな態度でこちらを見返すその眼には、明らかに敵意が籠もっていた。


猛也「…なんだ」


鬱陶しそうに答えると、正美は明らかにその態度が気に食わないといった、不快さを増した表情で猛也に返す。


正美「!… アンタ…解ってるのよね…? 今日からは実戦なんだから、いつもみたいな独断専行とか皆が迷惑するから勝手に動かないでよね…!」


明らかな批判と敵意が込められていた。


猛也「ハッ…」


それを聞いて、鼻で笑ってしまった。


お前の戦い方(マニュアル通り)で何が出来るのか。そんな教本通り敵は動いちゃくれない。そんな事も解らず命賭けて戦うとか笑わせてくれる。

お前じゃ勝てないしオレの足を引っ張って邪魔なだけだ。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


心の中でこれでもかと罵るが、出てきた言葉は一言だった。


猛也「…そもそも裸とか気にしてる段階で程度が知れる ()()()()()()()()()()


正美「なッ…!」


猛也「セクハラか? ならそう言え

今から戦うアドヴェルサリィ(敵対する者)達にも同じ様にな

一緒に戦うヤツをセクハラで外したから手加減してくれって ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()() ()()()()()()()()()

誰も助けちゃくれないぜ? ()()()()()()()()()()()()()()からな

それとも? 今から上にセクハラやらパワハラやらで進言し(チクッ)てオレを外すか? オレ無しの一人で勝てるならやってみな」


そう言って踵を返し、会議室を後にした。


言われた正美は言われる事が刺さったのか、顔を真っ赤にし、目頭に涙を溜めていた。


納得が出来てしまった部分が在ったからだ。


現実は、日常の常識の外で動いている―


それが理解出来てしまっているから。


日常の常識は整えられた、先人達の努力の元に出来ている。


それには非常識な、非合理な手も使われただろう。


その"自身の常識"を()()()()()()()、得られるチャンスを持った、()()()()()()()()()()が、(常識や非常識)(の在る世界)を想像したのだ。


この、自分が所属している"OUTWAIM(組織)"だって表向きな組織ではない。


何という皮肉か。


自分だって表立っていない組織に所属しているのに、正しくあれと猛也に怒りをぶつけるのは矛盾している。


そもそも相手は常識の通用しない存在だ。


そう…


解っている…


言われた通りに自分は一人で勝てる程強くない。


猛也は腹が立つ程非常識であるが、実際に戦闘能力は彼の方が上だ。


それ程までの事が理解出来るくらいに、志良川正美は感情的では無かった。


だが、頭ではそこまでの事が解っていても、心は納得していなかった。


そこまで彼女は、成長しきっていない。


悔しくて悔しくて、独り溢れる涙を手で拭った。

虎ノ門五丁目店それは、都心のゴーストタウン―

其処には、不気味なまでの静寂が支配していた…

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