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嫌われ者始めました〜転生リーマンの領地運営物語〜  作者: くま太郎


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ブレイブ復活

 なに、この展開は?


「ピュリア、なにを言ってるの?ブレイブ様は死んだんだよね?」

 ピュリアはシロー君の問い掛けには答えず、空中に魔法陣を描いた。そこから出て来たのは六つの巨大な魔石。

 妖精は幻術を使える。魔石を盗んだ後に、幻術を使って欺いたのか。


「いいえ、ここで眠っているわ。この小さくなったシャグランの魔石の中でね。さあ、復活の時よ」

 ピュリアが取り出したのは禍々しい色をした魔石。ピュリアは、その魔石をシロー君の胸に押し付けた。


「なに。これ苦しい。やめてよ、ピュリア……」

この展開は絶対にまずい。近付こうとするも、結界に阻まれ近づけない。


「哀れね。皮肉られた名前に気付かないなんて。シロー・ヨリックからックを取ればどうなるか分かる?シローヨリ、並び替えれば依り代ってね。あんたはブレイブを復活させる為の依り代でしかないのよ。ちなみに父親のスートはストックから付けてあげたの」

 何を言っているんだ?第一そんな力を持っている訳が……あれはフライングシップを取りに行った時だ。

 カカリさんはそう言うと胸ポケットに挿してあった赤ペンを取り出すと、俺達の額に何かを書き始めた。


「カカリさん、それは何ですか?」


「これは魔法の赤ペン《マジックオブザレッドペン》と言いまして、妖精が持っているマジックアイテムなんですよ。私が書いたのは幻術防止のサインです。ヴェント谷の魔物は幻術を使う奴もいますからね。両目を開いていると幻術の効果を無効に出来ます。逆に片目をつむると、どんな幻術を掛けてきているかが分かるんですよ」

 チラ見しながらマジックオブザレッドペンを鑑定。

マジックオブザレッドペン:妖精族の持つマジックアイテム。妖精族の主な仕事はオリゾンに住む全ての人種の監視である。彼等は担当している地域の人種の行動を採点して、神使に送付しているのだ。採点以外にも使え、役職等によりその効果も変わるという。


「魔法の赤ペン《マジックオブザレッドペン》か」

 でも、そんな力があるのか?


「せや、正解や。ピュリアはシャグランの魔石で、自分の魔法の赤ペン《マジックオブザレッドペン》をパワーアップさせたんや。そして運命の書を書き換え、人々を歪ませたんや」

 ミケが哀しそうな顔で、ピュリアの事を見つめている。


「運命の書ってなんだよ?てか、誰か気付けよ」

 ……歪ませたか。そういや本当のジョージも“僕は歪ませられた”とか言ってたな。


「運命の書には、レコルトに生まれる全ての人間の運命が書かれているんや。ピュリアは気付かれない様に、少しずつ歪ませていったんや。シロー君に関わる全ての人間の運命をな……やからマリーナは極度の潔癖症で、お前を嫌うんや」

 話がデカすぎるぞ……でも、それなら辻褄が合う。


「ええ、そうよ。偽物のジョージ・アコーギの所為で、大分予定が狂ったけどね。ついでに教えてあげるわ。ベルの母親の真似をしたのも、ボーンタを転ばせたのも私。あいつベルと仲良くなる予定だったから邪魔だったのよ……六魔枢の魔石よ。我が願いに応えよ。ブレイブを呼び戻せ」

 ジョージが歪ませられたのは、マリーナと惹かれ合うからか。六つの魔石が光りだし、シロー君を取り囲む。


「……俺を転生させたのは、ブレイブの復活を阻止する為か?」

 意外ととんでもない運命を背負わせられていたんだな。


「うんにゃ。歪ませられたジョージを誕生させる訳にいかなかったんや。でも、ジョージがいないと、運命が狂う。そこで並行異世界からジョージの同一人物を探し出したんや。それで運命の書を元にした話を、お前の会社の同僚に伝えたんや。後はお前を魂の段階まで小さくして、転生。そしてお前の体の中にジョージを封印したんや」

 確かに、キミテは山さんが夢で見た話が元になっている。ってか、俺が選ばれた理由が切な過ぎるだろ!


「馬鹿弟子!戦いの最中に喋り過ぎだ。でも、俺はお前が来てくれた事に感謝するぜ。ない知恵振り絞って作戦を考えろ」

 ボルフ先生が俺の頭を軽く小突く。


「ええ、まさか自分が歴史の生き証人になれるなんて驚きですよ」

 サンダ先生が俺を庇う様に前に出る。


「あたいにとってはあんたが本当のジョージだから……さあ、いくよ」

 カリナが俺の脇で構えをとる。


「……ピュリア、ありがとう。やっぱり自分の鎧でなきゃ落ち着かないな」

 ピュリアは頷くと、魔法陣を描く。そうすると鎧と剣が現れた。

 それに誰だ、あれは?顔はシロー君だけど、雰囲気がまるで違う。


「シロー……だよな?」

 あまりにも雰囲気が違い、幼馴染みのアインもとまどっている。


「残念ながら、今の名前はブレイブさ。ブレイブ・アイデックだよ」

あの鎧は見た事がある。

(ラストダンジョンに出て来る記憶を無くした冒険者の鎧と同じだ)

 記憶を無くした冒険者はクリア後に出て来る隠しダンジョンのボスだ。スキルはカウンターと魅了……ふと、エディさんの言葉が蘇る。

「ブレイブ・アイデックには不思議な力があっての。側にいればいるほど、あやつに心酔してしまうんじゃ。ブレイブ・アイデックに恋人や女房を取られた男も少なくなかったんじゃよ……お主の先祖モブのようにな。何よりブレイブ自身が恐ろしいくらいに強かった。どんな強力な攻撃もカウンターで、倍にして返すんじゃ」

 つまり謎の冒険者はブレイブ・アイデックだったのか。あいつ半端なく強いんだぞ。


「初めまして、僕の可愛い子孫達。さあ、溜めた力を僕に捧げるんだ……他の奴等は黙っていろ」

 なんだ、これは?身体がピクリとも動かないぞ。俺だけじゃなく、殆んどの人が身動き出来なくなっている。

 そんな中ヒロインズだけがまるで夢遊病者の様にブレイブに近付いていく。

 ヒロインズが近くにくると、ブレイブの絆の腕輪が光り出した。そして様々な太さの糸が射出され、ヒロインズに巻き付いていく。


「絆の腕輪からブレイブに力が注がれていくわ。これで完全復活よ」

 なに、その反則な性能。俺のダサいだけの絆の腕輪と大違いじゃん。

(身体を動かせない……謎の冒険者が使う魅了の条件は、相手がレコルト生まれの人間だって事……どうしようもないじゃん)

 その所為か神使のミケも動けずにいる。

 知恵を振り絞っていると、ブレイブが近付いてきた。


「まずはお前を始末しないとな……全く偽者の癖に邪魔ばかりして」

 ブレイブの剣が俺に振り下される。思わず目をつむってしまうが、なんの衝撃もこない。


「いやーっ!ジョージ様が!止めて、折角会えたのに」

 代わりに聞こえてきたのはマリーナの悲痛な叫び。

 目を開けると、レコルトに戻ってくる時に会った本物のジョージが俺を庇っていた。


「おい、なにしてるんだよ!」

 ジョージの体からは血の代わりの光が溢れだしている。


「僕さ、君の台詞で“だってアミの前では格好いいお兄様でいたいじゃん”……あれが好きなんだよね。僕も好きな女の子(マリーナ)の前では格好いい男でいたいじゃ……ん」

 ジョージの身体が徐々に薄くなっていく……あれ、身体が動く。

今の内に観察して作戦を立ててやる。絆の糸が細いのはユリア、凛、アニエス。次に細いのがマリーナ。ジョージが攻撃を喰らったと同時に声を出せる様になった。

ジョージが死んだのも大きいけど、光の魔石は六魔枢から取った物でないからだろう。

見えたっ!か細い糸だけど、手繰り寄せて勝利に繋げてやる。


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