復活?
今日から完結に向けて連日朝七時に更新します
流石は各国を代表する強者の皆さんだ。破竹の勢いで進んで行く。
「なんか改装中のテナントか舞台裏って感じだな。さっきジョウノキさんに吹っ飛ばされたゴーレムが壁をぶち抜いていったぞ」
谷が溜め息交じりで話し掛けてきた。戦闘経験の少ない谷を魔王城に連れて行くのは不安だった。でも、アニエスがシロー君パーティーに出向しているし、サンダ先生が壁役もしてもらうので回復役が足りないのだ。
だから谷はパーティーの中心にいてもらい、敵の攻撃を食らわない位置にいてもらっている。それもあって、話を交わす余裕があるのだ。
いや、谷を攻撃しようとした魔物には、もれなくアニエスさんの攻撃魔法が飛んでくるってのもあるんだけどね。
「さっきから鑑定しているんだけど、出て来る魔物全員が疲労や寝不足のバッドステータスになってんだよ」
その所為か動きの素早いカリナを相手にすると、足がもつれてしまっている。ボルフ先生やローウフさんなんて一人で数体を相手にしているし。
「ゲームと違って宝箱もトラップもなしか。この先には何があるんだ?」
いや、谷君。中には空腹のバッドステータスも持っていた魔物もいるんだよ。そんな余裕ないって。
「この先にあるのは、魔王を召喚する儀式に使われた部屋だ。それでその先はグルウベの代皇がいる」
儀式部屋はグルウベ城にあった物だから、ここは造りがしっかりしている筈……俺はキミテのゲーム作りに携わった人間だから、本物を見てみたいのだ。
「しかし、次から次へと……軍備が整う前に魔王を倒されたら笑えないもんな」
魔王軍は総力戦とばかりに大勢の兵を投入してきている。
「ここは僕達に任せて先に進んで下さい。数が多くても、この程度の攻撃は余裕でかわせます」
ローウフさんは、そう言うと四体を同時に切り伏せた。敵に囲まれても擦り傷一つ負わないし、反則な強さです。
「ああ、吹き飛ばせば同時に倒せるからな」
ジョウノキさんがサムズアップして余裕をアピールする。しかも攻撃で吹き飛ばされた魔物が、ボウリングみたく仲間を巻き込んでいくのだ。
お二人が強いのは分かりましたが、俺もここに残りたいな。でも、そんな事言える空気じゃないです。
◇
うん、背景だけならゲームと一緒だ……背景だけだけどね。
ゲームだと魔王召喚に死力を尽くした魔物の死体が一体だけポツンとある。そして死体を調べると『“魔王様が降臨なされた。これで魔物も平和に生きられ……”血で書かれた文字は途中で途切れている』というメッセージが表示される。
「なんか徹夜明けのあんたを見ているみたいだね……あたいがいつもどんな気持ちで起こしているか、分かるだろ!」
カリナが怒り気味にポツリと呟く。いや、これは俺も見慣れた光景だよ。
死屍累々、そんな感じだ。まるでデスマーチ明けのオフィス。魔王召喚で疲れ切った魔物達が横たわっていた。
調べてみると眠い、家に帰りたい、お腹空いた等の切ない文字。まだ生きている魔物もいるけど、とても俺には攻撃出来そうにない。
「こ、ここで諦めたら全てが水の泡だ……みんな最後の仕事だ……ネクロマンス!」
最後の力を振り絞った魔族が、アンデッド化の呪文を唱えた。
……まじですか!?一斉に立ち上がる魔物ゾンビさん達。その目は通常のゾンビより恨みがこもっている。
「ここは私達に任せて先に進んで下さい」
ダーハさんが放った火球がゾンビ達を火葬していく。美人なのに凄い魔力だ。
「俺達も後から行くから待ってろ」
サーツカさんの手から放たれた真空の刃がゾンビ達を切り裂いていく……どんだけチートなんですか。
◇
その男は玉座に座っていた。やせ細っていた貧相な男だ。部屋に入って来た俺達ではなく、ただ虚空を見つめている。
「グルウベ代皇ですね」
もう戦力がないのか代皇を守る兵士は一人もいなかった。彼の目には往時のグルウベが映っているのだろうか。
「グルウベ様はおっしゃられたのだ。魔族の力を以て、この地を浄化せよと……それなのに何故我が国が滅びようとしているのだ?」
グルウベ代皇は現状が未だに信じられない様だ。彼にとっては、今の状況は悪夢以外の何でもないだろう。
「そう言った方が本当にグルウベ様だっていう証拠はあるんですか?」
グルウベ様を直接みた奴なんていないんだぞ。だから国によって顔が微妙に違う。
「あれは絶対グルウベ様だ。私が幼い頃より、お言葉を下さったグルウベ様だ。今まで一度も外れた事がなかったのに……」
俺の予想だとそのグルウベ様は偽物だと思ったんだけど。随分と手が込んだ詐欺もあるもんだな。
「ジョージ、行くぞ。あれを放って置いても害はない」
ボルフ先生が俺の背中を押す。部屋から出ても代皇はまだ何かを呟いていた。
◇
ここはゲーム通りだ。禍々しく重厚な扉。この扉の向こうに魔王ゴライアスがいる。
「魔物も出ないし、俺はここで待たせてもらうよ。総力戦ならアニエスがいれば大丈夫だろ」
谷に待っててもらおうとしたら、先に言われてしまった。
「もしもの事がありますので、結界を張っておきます。ユウイチさん、浮気したらメッですからね」
アニエスはそう言うと、何重にも結界を張りだした。何でも谷が許可した者以外入れないそうだ……魔物すらいないのに、浮気しようもないと思うんだけど。
思いのほか扉はあっさりと開いた。そこにいたのは、禍々しい鎧を身に着けた大男。
「魔王ゴライアス!勇者シローが貴方を倒しにきたわよ」
ピュリアが俺の台詞を取った。でも、これで戦いに参加しなくても怒られないのでは。
「良く来たな。全てが後手に回ったが、ここでお前等を倒して巻き返しをはかる」
ゴライアスがそう言うと、剣を抜いた。分厚く鉄塊の様な剣だ。あんな剣で斬られたらひとたまりもないぞ。俺は後方から弓矢で攻撃しよう。
この人数なら何とかなる。問題はドラゴン形態になった後のブレスだ……そうだ。
「サンダ先生、ミューエさんちょっと良いですか?カリナも来てくれ」
三人に思い付いた作戦を伝える。了解が得られたので作戦開始。
「さすがは勇者の子孫達だ。中々やるな」
流石なのはゴライアスの方だと思う。シロー君パーティーを相手にしながら、しゃべる余裕があるんだから。
「ゴライアス!こっちだ、俺も忘れるなよ」
弓をひき絞り狙いをつける。ゴライアスが振り向いた瞬間矢を放つ。
「惜しかったな、ジョージ・アコーギ。お前の矢が当たったのは兜だ」
ゴライアスの言う通り、俺の矢は兜を吹き飛ばした。ゴライアスの頭が剥き出しになる。設定通り長髪だ。
「それじゃ、これはいただくよ……ドンガ、こいつを壊せるかい?」
カリナはゴライアスの兜を拾い上げると、そのまま部屋の隅へと逃走。
「ジョージ様がまた悪巧みを考えただか。それっ!」
ドンガ君、今の発言人事考課に響かせるからね。ドンガのハンマーでゴライアスの兜はペチャンコに。これでよし。
「ばーか。最初から兜を狙っていたんだよ。風力は十、暴風。気流の中心地はゴライアスの顔…纏わり付く風……いまだ、アコーギ家臣団一斉攻撃」
えげつない。アニエスの魔法に凛のかまいたちがゴライアスの身体を斬りさく。ユリアとサンダ先生のナイフが突き刺さる。とどめとばかりに、ドンガのハンマーとアインの剣が直撃する。
流石、アコーギ家臣団+アニエスさん見事な連携だ。シロー君達は展開の速さについてこれないのか、唖然としている。
「これで終わったと思うなよ。我が真の力見せてやる……ぐえっ……」
ゴライアスはドラゴンに変身した途端に苦しみ始めた。その首に巻き付いているのは、ミューエさんの鞭。サンダ先生も掴んでいるので、力負けする事はないだろう。
「……シロー、今よ。とどめを刺しなさい」
ピュリアの言葉で我に返ったシロー君達が、ゴライアスに攻撃を仕掛ける。
「これで終わりだっ!」
シロー君の剣がゴライアスの胸を貫く。展開はどうあれ、シロー君がゴライアスを倒した。栄誉も面倒事は全部プレゼントします。
「まだよ。魔石を取らなきゃ魔王は復活するわ」
ピュリアさん、その情報初耳です。貴方の元旦那は教えてくれなかったぞ。
「取ったよ。ピュリア、これで良いの?」
シロー君が取り出したのは、巨大な魔石。あれどうやって部屋からだそう。
(そういやシャグランの魔石って行方不明なんだよな。あんなデカい物がどうやって消えるんだ?)
「ええ、ばっちりよ。これでブレイブが復活するわ」
そう言うとピュリアは邪悪な顔で笑った。
新作 現代忍者転生、イケメン領主の元で世直し旅しています ~俺は低ランクで、相棒はナナフシの精霊~始めました




