クロガネ戦
更新が遅くなり申し訳ございません。肩こりが悪化したり、眼鏡が壊れたりと色々ありました
クロガネは手を出すなと言ったが、部下の魔族達は思いっきりこっちを睨んでいる……卑怯な事をしたら、ただじゃおかないぞって感じだ。
では期待通り卑怯に攻めてやろうではないか。
「サンダ先生、こんな感じでジーオウォールを出現させてもらえませんか?それとクロガネの足元の土をこれに変化させて欲しいんですが、可能ですか?」
地面に図を書いてサンダ先生にお願いをする。サンダ先生は今までの六魔枢戦のお陰で大幅にパワーアップしたのだ。今回の魔法は、かなり大掛かりな物だがきっと出来るはず。
念の為、ここまで手に入れた土の魔石も渡しておく。壁の元となる土はふんだんにあるし、土の魔石を触媒にすれば問題ないと思う。
「城側に壁があってクロガネのいる場所を筒状にすれば良いんですね。そして、そこから放射線状に通路が七本放射線状に伸びてているんですね。変化も大丈夫ですよ」
さすがハイスペックオーク。その場で魔法を改良してくれるとは。
「次にボルフ先生。壁が出来たら、これを向こうに落としてもらえますか。それとタイミングを見てロープを下してもらえますか?」
ボルフ先生に手渡したのは一枚のメモとロープ。メモを確認するとボルフ先生は、途端に顔をひきつらせた。
「相変わらず良い根性してるよな。絶対にろくな死に方しねえぞ」
ボルフ先生はそう言うと深い溜め息を漏らす。俺的には、ここまで生き残れただけでも奇跡だと思う。それに仲間を守る為なら、どんな事でもしてやる。
「ドンガ、凛と組んでクロガネの動きを止めてくれ。カリナは俺と一緒に動くぞ……サンダ先生、お願いします」
ここからは一気に攻めるだけだ。
「お任せ下さい……大地神の迷宮。一時間過ぎると、消えてしまいますので、気を付けて下さいね」
サンダ先生が呪文を唱えると、巨大な迷宮が出現した。
「問題ないですよ……ドンガ、凛行くぞ」
威厳をこめて命令を下す。おない年とは言え、俺は領主だ。問題ないだろう。
「それじゃあたい達も行くよ。ジョージ、ついて来な」
そう言って男前に宣言するカリナさん。カリナは前衛職で、俺は今回魔法主体で戦うから、問題はないけど……。
「おう、おう。もう完全に尻に敷かれてるな。こりゃアコーギ家は、かかあ天下で決定だ」
ボルフ先生はそう言うと、素早く壁を登っていった。反論はしない。実際、アコーギ家は女性の方が強いんだし。
「……やっぱりダメージを受けてないな」
先に着いたドンガ達が果敢に攻めているが、クロガネは無傷だ。それにまだまだ余裕がある。
「壁を出現させ、部下の攻撃を防ぐ。ここまでは見事だが、我を倒せねば、その策も意味がないぞ。ジョージ・アコーギは策士と聞いていたが、こんなものか」
凛とドンガを同時に相手にしながらも、クロガネは俺に話し掛ける余裕がある……でも大事な事に気付いていない。いや、分からないといった方が正確だろう。
「これで策が終わり?そんな訳ないだろ……喰らいな、ハイドロボール」
クロガネに向かってハイドロボールを放つ。しかし、水球は霧散していく。
「これが策?我に魔法は効かぬぞ」
クロガネは自分の鎧に絶対の自信を持っている。そこが付け目だ。竹筒の蓋を外して、本物の水を小さな水球へと変化させる。
狙いはクロガネの兜にあるバイザー。ここだけが、唯一クロガネのフルフェイスにある隙間だ。とは言っても矢も入らない様な小ささだ。でも、隙間より小さい水球なら問題ない。
「これは本物の水!?だが、我に目潰しなぞ効かぬぞ」
残念、狙いはそこじゃないんだよな。
「ドンガ、凛!クロガネの動きを止めろ」
俺の合図に合わせて凛は刀を仕舞い、ドンガから受け取ったから鎖鎌を構える。
「凛、いくだよ!」
ドンガはそう言うと、後ろに飛び退きハンマーを持つ手に力をこめ始めた。
「どんが承知したでござる……足元が御留守でござるぞ」
凛の鎖鎌が蛇の様に、クロガネの足に絡みつく。
「おではドンガ!ジョージ様の忠臣。何よりジョージ様を心から信じている者……喰らうだっ!」
渾身の力を籠めたドンガの一撃が、クロガネの頭上へと襲いかかる。
普段のクロガネなら、なんなく受け止められただろう。でも、今は凛の鎖鎌が絡みついて体勢が乱れている。
「なんの、これしきっ!ぬっ?足元がぬかる」
確かにクロガネの鎧は防御力が高いが、衝撃を無効にする訳ではない。クロガネの周囲の土は、一見するとただの土だ。でも、数センチ下は魔法である泥に変化させてある。
鎧は無傷でも、土はそんなに頑丈ではない。結果、クロガネは膝まで泥に浸かってしまったのだ。
「ちょっとお前の足元の土を変化させてもらったんだよ……ドンガ、凛。先にいけ」
俺の合図と共にロープが垂れ下がってきた。ドンガは凛を抱きかかえると、スルスルとロープを登っていく……絶対に凛は一人で登れると思うんだけど。
「小賢しい。どっちにしろ、汝からの貧弱な攻撃は我に効かぬわ」
うん、知ってる。まともに攻撃する気はないし。
「そんじゃま……張り付く粘土。カリナ、頼む」
魔法で精製した泥を、クロガネのフルフェイス目掛けで放つ。ただの粘土じゃない。粘性が高く、熱さられるとへばりついたまま硬くなる谷特製の粘土だ。
「任せな!火炎爪」
パワーアップしたカリナの火炎爪は遠距離攻撃が可能になった。
そして狙ったのはクロガネではなく、足元の泥。
「お前の足元の泥はただの泥じゃなく、泥炭さ……良く燃えるぜ!……へっ?」
高らかに勝利宣言したと思ったら、誰かに足元を刈られた。転ぶと思ったが、誰かが抱きかかえてくれたようだ。
「いつまでお喋りしてるんだい。焼けちゃうだろ」
……カリナさん、お説教は良いですが、お姫様抱っこは勘弁して下さい。
しかし、カリナは俺の意思を無視して、三角飛びで壁を登っていく。
「流石はアコーギ家の王子様。お姫様抱っこでご帰還ですか……ジョージ、あいつ火炎系の魔法が効かないし、鎧も分厚いんだろ。火を消されたら、お終いだぞ」
俺に聞いてきたのは、にやけ顔のボルフ先生。
「あの炎は魔法じゃありませんからね。熱は無効化出来ません。そしてクロガネの鎧の中には、俺が放った本物の水があります。しかも密閉しています。水は蒸気に変わり、クロガネは蒸し焼きになるんですよ」
密閉性の高い、鎧の性能が逆に仇となるのだ。おまけに放射状に作られた通路が空気孔となり、筒状に作られた小部屋の熱はどんどん上がっていく。
「動かなくなったら、魔石を回収してトンズラってか。しかし、こんな倒し方したら、魔石の純度が下がるんじゃねえか?」
ちなみに、それも狙いのうちだったりする。結果、クロガネの魔石は大きさこそ見事だが、かなりくすんでいた。
「そういえばさ、どんなメモ置いてきてもらったんだい?」
魔石を回収して帰る途中、カリナが確認してきた。
「お礼状だよ。パペータ宛のな。“クロガネの情報ありがとうございます”って書いたんだよ」
パペータは部下からの人望が少ないから、離脱者が出る筈。そしてパペータが汚名を晴らす為には、俺を倒さなきゃいけない。
ウェルカム、パペータ君。罠を張ってお待ちしております。




