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嫌われ者始めました〜転生リーマンの領地運営物語〜  作者: くま太郎


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剣の力?

 謎の騎士ことウィル・ロッシュを倒した俺はとんぼ返りでボーブルへ。そして谷をのせてコーカツ領にUターン。ついでに日本から持ってきた電池式電動ドライバーとネジを積み込む。工業ギルドへの指示もバッチリだ。


「さっきから気になっているんだけど、その悪趣味な剣はなんだ?」

 谷君、君も大人なんだから空気を読んでスルーしましょう。


「敵さんからのプレゼントだよ。俺、剣術はあまり得意じゃないんだよな」

 しかもこんなに人目をひく装飾は勘弁して欲しい。ドクロやら蝙蝠の装飾なんて、どう見ても厨二病全開だぞ。厨二病はもう卒業したんだ。


「でも、切れ味は良いんだろ?……金色の鎧に真っ黒な剣を装備すれば、二十四時間戦える様になるんじゃねのか?」

 栄養ドリンクのCMかよ。黄色の鎧なら完璧にアウトだったな。……とりあえず鑑定だけでもしておくか。

 鑑定結果 破滅の剣:持つ者の負の感情を増加させる剣。正の気を持つ者が触れると火傷をする。

 設定が痛すぎないか?もしかして、この剣を使わせる為、ウィル・ロッシュの性格を変えていたのか?

 それと、俺普通に持てたんですけど。


「勇気の印になれってか。今晩、騒がしくなるけど、落ち着くまで部屋から出るなよ」

 俺の予想だと今晩ひと騒動起きる……いや、ふた騒動か。


「お前の事だ。対策はもう終わってるんだろ?」

 一つの方にはえげつないトラップを仕掛けてある。人道的にどうなんだろってレベルだ。


「まあな。出来たら六魔枢との戦いは、勇者のシロー君にバトンタッチしたいんだよな」

 シロー君は色んな所で経験を積み、順調に成長しているそうだ。そろそろおじさんは領地経営に専念したいです。


 ◇

 こうなる事は予想がついていた。リヤン様の鎧と破滅の剣を身に着けたら、半端じゃなくダサかったです。

 場所は俺に宛がわれた貴賓室。部屋にいるのは主要男性メンバーだ。


「正の気を持っていたら火傷するらしいんですけど、何ともないですよ?」

 俺は、まがりなりにもリヤン様に認められた男だ。しかし、全員笑いをこらえていて返事をしてくれない。


「……ジョージ、鎧を脱いで手を見せてくれ……低温火傷みたくなってるぞ」

 谷に言われた通り、鎧を解除して手を見る。

 リヤン様の鎧は顔面以外を完璧にガードしてくれているので、テネーブル伯爵の城から持ち帰った時か。つまりこの剣を使うには、リヤン様の鎧が不可欠と。

 しかし、流石は医者様だ。谷は診察をする時には真剣な顔つきに変わっていた。


「あー、笑った……お前、光属性の魔物を倒した事ねえだろ。だから属性が闇に傾いているんじゃねえか?それに裏工作が得意な人間が正の気なんて持てる訳ないだろ」

 ボルフ先生は息を整えると、呆れたように突っ込んできた。


「私心を持たずに裏工作をしていたから、低温火傷で済んだ訳ですか。しかし、このまま使い続けるとジョージ様が闇に呑み込まれてしまう危険性があります」

 それ嫌だな。この歳で闇落ちですか。


「六魔枢戦はテネーブル伯爵で最後にします。そうしたら、この剣の出番もないでしょ?俺は爺ちゃんに報告に行ってきますので、動きがあるまで休んでいて下さいね。何人かはコーカツ家主催の祝勝パーティーに顔を出しておいて下さい」

 俺が部屋を出ると笑い声が響いてきた……思い出し笑いですか。


 ◇

 爺ちゃんに謎の騎士を倒した事を報告。


「とりあえず向こうの動きを待つよ。まあ、今晩の可能性が高いから寝る時はネックガードを着けて寝てね」

 副将を倒されたテネーブル伯爵は何らかの動きを見せるはず。そしてこちらの戦力を削ぐには、爺ちゃんか俺を倒すのが一番だ。


「分かっとる。それとケイオス・ライテルの処分が決まった。騎士の称号と市民権を剥奪し、ライテック一族から追放。女の方は実家も取り潰しにするそうだ」

 この苛烈さは祖母(アデリーヌ)の仕業だな……えげつないというか躊躇がないというか。総合商店のお陰でアデリーヌのお茶会メンバーから俺の味方になってくれた人は多い。その辺も効いたのだろう。


「これで肩の荷が一つおりたよ……外が騒がしい。どうやら、罠に掛かったみたいだね。行ってくるよ」

 祝勝パーティーにはコーカツ家の騎士を総動員してもらった。その分貴賓室主に女性部屋を守る騎士が少なくなっているのだ。でも、それはあくまでコーカツ家の騎士の話。


 ◇

 えげつねえ。その一言に尽きる。騒動が起きたのは母さんが使っている貴賓室。ユリアと二人っきりになった瞬間、メイドに扮した賊が母さんに襲い掛かったらしい。尤も部屋にはオデットさんやその部下が潜んでいたんだけど……。


「ジョージ、人間ってあんなに痛めつけられても死ねないんだね……」

 カリナは俺の顔を見るなり駆け寄って来て、そう呟いた。もうタコ殴りってレベルじゃないぞ。


「殴っては回復魔法、蹴っては回復魔法を掛けている。尋問ってより後悔させる為なんだろうな」

 しかもじわじわと急所に近付いていっている。


「ジョージ様、予想通り賊が侵入しました。しかもユリアがわざと置き忘れたナイフを所持しております。異世界ではエビゼメと言う拷問があるそうですね。是非、効果を試してみたいのですが」

 海老責めは江戸時代に使われていた拷問で、かなりえげつない。縄で足首と顎をくっつける様に結ぶらしい。


「俺が鑑定しますから……ナイテックのアサシンか。ここに潜んでいたみたいなので、調べて下さい。他にも仲間がいるようなので気を付けて下さいね」

 杞憂という言葉がピッタリだった。一時間もしないで、アサシンの仲間は捕縛された。


 ◇

 謎の騎士討伐、ナイテックのアサシンの捕縛。二つの大きな騒動があった所為か、コーカツ領の騎士は疲れていた。そしてどこか油断が見える。もうこれ以上騒動は起きないだろうという油断が見えていた……まあ、全部俺の指示なんだけどね。

 テネーブル伯爵が攻撃してくるのは今晩だ。ナイテック家にコーカツ家の内情を伝えたのも、テネーブル伯爵の部下だろう。下手したら手引きしていたのも、そうかも知れない。

 そして俺はリヤン様の鎧を着てベッドに潜っている。ヴァンパイアが来ると思うと、上手く寝付けない。

 小さな物音にも反応してしまう小物な自分が哀しい。

 そんな時、窓が開く音がした。鍵が閉まっている筈なのに開いたのだ。ばれない様にギュッと目をつぶる。首に噛み付いてくるのをじっと待つ。

 ……まだか……これはフォーク?なぜか部屋にフォークソングが流れ始めた。


「消しゴムが欲しいにゃー。君との思い出を、君への想いを消せる消しゴムが欲しいのにゃー。でもどれだけ消しても君への想いは儂の心に沁みついて消えーにゃい。はい、みんなで肩を組んで歌うぞー……おい、起きてんやろ?まぶたがぴくぴくしてんで」

 そこにいたのはヒッピーの恰好をしたミケ……なんで、こいつはこのタイミングで出てくるんだ。


「……なんの用だ?今、誰かさんの指示で六魔枢と戦っている最中なんですけど」

 ビビッて、少し漏らしたじゃねえか。


「ウィル・ロッシュを倒した言うからお祝いに来たんやないか……ほう、破滅の剣か。皆さん、注目やでー。この破滅の剣と独鈷杵にチチンプイプイと魔法を掛けると、不思議な事に合体したで」

 合体と言っても、剣の柄の部分が独鈷杵と一体化しただけなんだけども……取りあえず、鑑定と。


 鑑定結果 ネガティブソード:持つ者のコンプレックスやネガティブな気持ちを力に変える事が出来る。マイナス思考の者が持つとその真価を発揮し、嫌われている相手が多い程、切れ味が増すという。(特殊効果・装備者のサービス残業時間を攻撃力に加算される)

 厨二な剣から一気にサラリーマン専用武器に変化しました。


新連載逝き先案内人もよろしくお願いします

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