問題発生?
時間は全てのものに平等に流れる……久し振りに学校に来たら居場所がありませんでした。
入学早々六魔枢戦に突入したせいで、クラスの中で浮いた存在になっていた。俺のクラスには平民しかも獣人が多い。同じ中学校だった奴はそうでもないが、他の中学からきたクラスメイトは近付いてすらこない。
後から入って来たフーマ三姉妹の次女紅葉の方がクラスに馴染んでいます。
俺の中身はおっさんで、肩書は貴族。しかもここのところ戦いに明け暮れていたとなれば敬遠されても仕方ない。
中学時代ならジョージパーティーの面々と馬鹿話が出来たんだけど、みんな恋人とラブラブで話し掛ける隙もないのだ。若人よ、幸せになってくれておじさんは嬉しいよ。
肝心のカリナは女子に囲まれて質問攻めにあっている。あそこに近付くのは血を垂れ流しながらピラニアのいる川にダイビングするようなものだ。
「ジョージ様、お久し振りでございます。色々お噂は聞いていますよ」
そんな中話し掛けてきくれたのはヴェルデだった。昔は子狸だったヴェルデも今や立派な少年狸。その顔は自信に満ち溢れており、弱々しさは微塵も感じさせない。
「お陰様で今度はコーカツ領に出張だよ。部下が育ってくれたお陰で、なんとか仕事は回っているけど、それでも猫の手も借りたい忙しささ」
コーカツ領なら日帰りで通えるから、両立も可能だと思う。せっかく付き合えたのにデートをする暇がなくて、このままではカリナに捨てられるかもしれない。
「でも社交界ではジョージ様のお噂で持ち切りですよ……少しお耳に入れたい事があるのですが、ちょっとよろしいでしょうか?うちが経営している宝石店にケイオス・ライテルが女性と来ました……その女性がボーブル騎士団のファンさんの奥様だったんです」
ヴェルデは俺にだけ聞こえる声でそう呟いた。まじか……ファンって最近結婚したばっかりなんですけど。日付け的にはボーブル騎士団を連れてイジワール領に行ってた頃だ。
「……ヴェルデ、先生に早退するって言っておいてくれ」
そのまま城に戻った俺はフーマ三姉妹の長女萩野にファンの嫁さんを探る様に命じた。
……結果、真っ黒くろすけでした。ケイオスは本領の賊退治の時にファンが新婚だと知り、奥さんに近付いたらしい。
「しかし、なんでファンの奥さんを狙ったんすかね?ケイオスってもてるんでしょ」
ファンの奥さんは綺麗系だけど、ケイオスが惚れる程ではない。事実、ケイオスは同僚に遊びだと自慢しているそうだ。
「ファンの女房からうちの情報を引き出したいのと、お前への意趣返しなんじゃねえか?」
この手の相談を出来るのボルフ先生しかいない。ファンの奥さんの父親はアコーギ城で文官をしている。家格もファンの実家より高く婿であるファンの事を馬鹿にしているそうだ。
「もう一つ問題があるんですよ。ケイオスが買ったっていう指輪。あいつの給料じゃ手が出せない代物なんですよ」
ヴェルデの店は現金払いだけだ。ケイオスが借金してまでプレゼントするとは思えない。
「一番の問題はそこじゃねえだろ。どうやってファンに事実を伝えるかだ」
この世界にはカメラがないから、いくらでも言い逃れが出来る。ファンは奥さんにベタ惚れしているから、事実を伝えても信じてくれないだろう。こんな時人は自分がそうであって欲しいと思った方を信じてしまう。
「ファンはコーカツ領に連れて行きません。とりあえず留守部隊の隊長に任命しようと思います。」
失恋した時は仕事に打ち込むのが一番だよね……経験談です。でもファンは既婚者だから俺とはダメージが比べ物にならないと思う。
「しかし、あいつ等隠す気ゼロだったぞ。普通、浮気ってコソコソするもんじゃねえのか?ハウスキーパー部門でも噂になってるみたいだし……お前が気を使っても、そのうちファンの耳に入るんじゃねえのか」
……隠す気ゼロか。見つかりたくないんじゃなく、見つけて欲しいってか。
「娼館の主に連絡を入れて下さい……それとファンの有給届けを持ってきてもらえますか?」
ファンは三週間後に有給希望を出していた。義理の家族を連れて総合商店に行くらしい。その日はとんぼ返りをして、とっちめてやろう。
◇
コーカツ領に連れて行くのは今や固定メンバーとなったボルフ先生、サンダ先生、カリナの三人。それに加えてユリアとアイン君、そしてベガルにお世話役のスノウさんの七人だ。
なぜベガルが参加するかというと、近々フェルゼン帝国に帰る事が決まったのだ。そしてスノウさんと式を挙げるとの事。
はな向けとして手柄を立てさせて欲しいとコルレシオン家からごり押し……熱い要望があったのだ。
そして今回も対策会議を開きました。初めて参加する人には俺に前世の記憶があって、六魔枢の事を覚えていると伝えておいた。
「それでは皆さん資料の1ページを開いて下さい。闇の六魔枢はヴァンパイアのテネーブル伯爵。そして副将は謎の騎士、その正体はグールです。テネーブル伯爵への対策は出来ていますが、謎の騎士は真っ向勝負でなければ倒せません。でもこいつの剣の腕は一流なので、警戒が必要です」
ゲームでは謎の騎士に認められた者しか戦えない。どんな奴が認められるかというと、剣の腕がたち騎士道に背いていない者だった。まあ、ゲームでは一定ターン数がたつとイベントが発生し、パーティー全員が参加できるようになるんだけど。
今回参加出来そうなのはアイン君とベガルだ。俺は剣の腕が合格基準に達していても騎士道判定で弾かれると思う。
「ヴァンパイアへの対策って、光属性の魔法か?この中に光属性が得意な奴はいないぞ。サンダは土属性の方が得意だし」
ボルフ先生の言う通り、アンデットには光属性の攻撃が有効だ。そしてテネーブル伯爵も闇属性なので光属性が効く。
「テネーブル伯爵は何回か光属性の攻撃を喰らうと魔石状態になって、ダメージを一切受け付けなくなるんですよ」
しかも魔石が解ける時に必殺技を使ってくる。だから光属性の攻撃は行わない。
「謎の騎士を倒して、直ぐにテネーブル伯爵の所へ向かうのですか?」
ゲームではテネーブル伯爵とは夜しか戦えなかった。昼に行っても棺桶の蓋を開ける事が出来ないのだ。
「俺の予想で謎の騎士を倒せば、テネーブル伯爵がなんらかの動きを見せる筈です。それに合わせて攻め込みます。その前にちょっとした準備が必要なので、準備が整うまで死者の森で経験を積んでもらいます」
個人的に死者の森はトラウマだらけなので、行きたくないんだけどね。
「またあの魔石入りのずた袋を振り回すのか?」
この話が通じるのはボルフ先生とサンダ先生だけだ。あの頃はここまで有用な人材を揃えられるとは思わなかった。
「保険で準備はしておきますが、大明からもらった独鈷杵を使ってみようと思います」
ずた袋攻撃は単独戦闘には向いているが、パーティー戦だと仲間に当たる危険性がある。
「よーし、やるっすよ。アインとの息のあったリア充攻撃をみせるっす」
ユリアさん、息の合ったコンビ攻撃じゃなくリア充攻撃っすか。ちなみに恋人同士をカップルと言ったら、ユリアに古いっすねと笑われた。
「あたいは棍を使うね。ジョージ、光属性の棍って手に入る?」
カリナは最初素手で戦おうとしていたんだが、谷から感染症が心配だとストップが掛かったのだ。
「これから取りに行くから一緒に行くか?自分に合った長さもあると思うし」
棍の丁度良い長さは乳首の高さだとて聞いた事があるけど、それを言ったら絶対にセクハラになるよね。
そしてカリナとやって来たのはマナプラントの畑。
「凄い大きなマナプラントだね。こいつにオボロの魔石を食べさせたの?」
カリナが見上げているのは、この畑で一番古いマナプラントだ。全属性対応しているエリートである。その姿は荘厳で美しい。
「ああ、お陰で王家に献上しても恥ずかしくない魔石が採れたよ」
闇の六魔枢を倒せば少しはカリナとゆっくりできると思う。
新作が伸びないです。嫌われ者の経験いかせず




