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嫌われ者始めました〜転生リーマンの領地運営物語〜  作者: くま太郎


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勧誘を頑張ります

さすが現役神官、話が上手いし人前で話す事に慣れている。バウム村の住民はロッコーさんの話に釘付けになっていた。特に若い村人は外の世界への憧憬からなのか、夢中になって聞いている。

シローも夢中になって聞いているらしく、表情が百面相並みに変化している。そんなシローを見て微笑むフレーズ。そして微笑むフレーズを見てへこむアイン……頑張れアイン君、超頑張れ。

「ジョージ、アインはこっちの勧誘にのってくると思うか?」

 今のところ、アインはシローに妬みも憎しみもみせていないから、俺の勧誘は大きなお世話だと言われるかも知れない。


「ルーベス家の家計は困窮しています。母親クレアに仕事を紹介して、アインを無償で高校に進学させるなんてうまい話は断らないと思いますよ」

 しかもアインは働かないで勉学と鍛錬に打ち込めるのだ。

シローやフレーズと離ればなれになるが、破格の待遇である。


「好条件過ぎて、かえって怪しまれるんじゃねえか?」

 確かに俺がアインの立場なら絶対に疑うし、信じないだろう。ましてやアインの母クレアは絶世の美女だ。母子家庭の弱みにつけこんだ誘惑は何回もあっただろう。ゲームでも、ルーベス家の暮らしは決して豊かとは言えるものではなかった。それでも周囲の助けを借りながら、生活をしていたらしい。中にはルーベス母子は村に寄生していると影口を叩く人もいたそうだ。

 

「だからロッコーさんに演説をお願いしたんですよ。ハイードロ教の神官の話なら疑われないですから」

 俺ハイードロ進学基金は今やオリゾン全土で活用されている。ゴルド領から通っている生徒がいるから、バウム村の住民でも噂くらいは聞いていると思う。

不安要素があるとすれば、シローの父親スートだ。スートはアインの剣の師匠で父親のように慕っていた。スートが反対すれば、この話が頓挫する危険性がある。何しろスートはライテック家の反乱に参加してたのが原因で王宮騎士団をクビになっている。つまり今でも爺ちゃんやイジワール公爵を恨んでいる可能性があるのだ。


「さて、何か私に聞いてみたい事はありませんか?私に分かる事でしたら、何でもお答えますよ」

 流石はロッコーさん、一方的に話すだけでなく、質問タイムを入れて飽きさせないようにしている。しかも質問をしやすいように、穏やかな微笑みを浮かべているのだ。ロッコーさんに羽毛布団を売ってもらえれば、大儲けできるかもしれない。

真っ先に手をあげたのはシローだった。

「神官様、外の世界には強い人がいっぱいいるんですか?俺、親父みたいな強い男になるのが夢なんです」

 シローはジョージと同い年だから、今年で十五歳になる。丁度、強い男や格好いい者に憧れる年だ。


「難しい質問ですね。その答えは、何をもって強いとするかで変わると思いますよ。ただ、これは覚えておいて下さい。強さには色々あるんですよ」

 上手な答えだ。シローが聞きたいのは一対一の戦いでの事だと思う。シローは父スートの強さに憧れている。多分、誰よりもスートが強いと思ってだろう。 

でも、スートより強い男は大勢いる。でもその現実を告げれば、シローは闇雲に反発するだけだ。しかし、スート一人を強いと褒め称えたら、村の男性陣の立つ瀬がない。恋人や子供の前で弱者の烙印を押されたような物だ。ロッコーさんはスートの武力を否定せず、バウム村の大人達の威厳も保ったのである。


「私も聞いて良いですか?外の世界には働き口は沢山あるんですか?私はお金を沢山稼いでママを楽させたいんです」

 次に質問をしたのはアインだった。その内容は立派で、言葉遣いもきちんとしている。だから、母親の事をママと呼んだのが、悪目立ちしてしまう。

アインがシャイン君やシェーン王子に人気投票で負けた理由がこれなのだ。アインはマザ……母親が大好きなのだ。

“耽美系キャラがマザコンだっていうのは、何番煎じですか?アイン様にマザコン属性は合いません”って、苦情がかなり来たらしい。アインは氷の海に潜らないのに。

 まあ、ルーベス家は母子が肩を寄せ合うようにして暮らしてきたので、アインが母親クレアを慕うのも仕方がないと思う。


「仕事も良いですが、高校に進学する気はありませんか?今、ハイードロ教では新たに高校進学基金を作ったんですよ。少し、話はそれますが私は今ボーブル城に勤めています。お望みなら高校進学基金への推薦状を書きますし、君のお母さんに働き口を紹介しますよ」

 ロッコーさんの話を聞いていた村民がざわつきだした。破格の条件に驚く者、あまりの好条件に眉をひそめる者。そして村から厄介者がいなくなると安堵する者。バウム村はお世辞にも豊かとは言えない。助け合いにも限界があると思う。

(うちも、そろそろ緊急時のセーフティーネットを考えなきゃな。魔王軍との戦いが始まったら、命を落とす兵士が出て来る。彼等の家族が安心して暮らせるシステムを今の内に作っておくか)

 こんな時にも領主の仕事を考えるなんてワーカホリックが悪化しているのかもしれない。

「あのお仕事はどんなものを紹介していただけるのでしょうか?」


 クレアがおずおずと手を挙げる。彼女にしてみればすぐにでも飛びつきたい破格の条件だと思う。でも、ボーブルはちょっと前まではアコーギ家の片隅にあった辺鄙な地でまだまだマイナーだ。まだ怪しんでいるだろう。


「それにつきましたては私オデット・コーレシャンが説明させてもらいます。今人手が必要なのはホームキーパー部門洗濯係ですが、貴方の能力次第では別の部門で働いてもらいます。また、希望がない場合は城で運営している城員住宅に入居して頂きます」

 月々、三万五千ストーンを給料から天引きさせて頂きます。


「昔、伯爵家に勤めていた事がありますが」

 これは有り難い。伯爵家で働いていたのなら、最低限のマナーは身につけている筈。


「それなら新人職員に礼儀を教育出来るようなら、教育係になってもらいます。その場合は給金も増えますので楽しみにして下さい」

 オデットさんも欲しいと思ったようで、すぐさま労働条件を提示した。クレアさんは美人だから、総合商店でモデル兼売り子をやってもらうのも有りだ。母になっても綺麗でいませんか?そんなキャッチコピーが書いたクレアさんの巨大絵姿ポスターを張ったら、売り上げが増えそうだ。


「ちょっと待った。アインは弟子の中でも、抜きんでた才能を持っている。ボーブルに剣を教授出来る者はいるのか?」

 良い空気になっていたのに壮年の男性が水を差す。鑑定してみるとシローの父親スート・ヨリックだった。ロッコーさん、オデットさんに目配せをして俺も会話に加わる。


「皆様初めまして。ボーブルで領主をしているジョージ・アコーギです。今そちらの方から提示された質問ですが、当家で兵の教育係をしているのはフェルゼン帝国で兵士養成所の所長をしていたベガル・コルエシオンです。その他血塗れの狂い熊と呼ばれたギガリ・シンセロ、幻の首席サンダ・チュウロー等豊富な人材が揃っております」

 ボーブルはリヤン様の力のお陰で、人材が豊富だ。ジョージに過ぎたる物、才能ある家臣なんて言葉があるらしい。他にはじょうしゅは貧相なのに、ぶかしろは立派でアンバランスなボーブルヒマワリなんてのもあった。アサシンギルドを使ったエゴサーチは、時に俺の心を抉る。


「……申し遅れました私はスート・ヨリック。この村で子供達に剣を教えています。ジョージ様、アインの事をお願い出来ますか」

 スートはそう言うと、俺に頭を下げてきた。憎きローレン・コーカツの孫である俺にだ。


「ジョージ様、アインの事をよろしく頼みます。アインは俺の親友ダチ)なんです」

 スートに習って、シローも頭を下げてきた。どうやら、同じ子孫でもヒロインと違い俺を嫌ってないようだ。ヒロインズとシローの違いは性別である。ヒロインズは俺を嫌っているのは見た目説が濃厚になってきた。


「気にしなくて良いよ。君も何か困った事があったら、城に来ると良い。出来る限り応援するよ」

 そういってシローに手を差し出し、握手を交わす。これで難題が一つ解決できたのだ。その日は、アイン母子の送別会が開かれたので、俺達もバウム村に一泊した。



 アイン母子をボーブルに連れてきた俺は鼻高々だった……はい、あくまで過去形です。もう、根元からポッキリと折れています。


「ベガルが引き籠りになった?たった数日でなにがあったんすか?」

 なんでもベガルが昨日から部屋に引き籠って出て来なくなったらしい。


「それとスノウ殿もホールに出て来なくなったそうだ」

 ミューエさんの話によると、一昨日からスノウさんは厨房から出て来ていならしい。


「取りあえず、カリナに何があったか聞いてきます」


「ジョージ様、昨日ホートー様から連絡が来まして、うちで外国からきた要人をもてなすパーティーを開きたいそうです。パーティーに参加する為、ホートー様、ラフィンヌ様、ムート様が今日から城にお泊りになるそうです」

 あれ、俺詰んだんじゃね?


次の話と一緒に人気投票を開催する予定です

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