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嫌われ者始めました〜転生リーマンの領地運営物語〜  作者: くま太郎


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なんでも、そんなにうまくはいかない

 これで万事解である。後はいつも通り気配を消してぼっちのまま、パーティーが終わるのを待つだけだ。


「それではゴルド様の経営手腕を学ばせてもらえる日を楽しみにしております」

 深々と頭を下げて、ゴルド公爵の前から撤退をはかる。


「ジョージ、少し待て。お前に紹介したい者がいるのだ。誰か、ヒーロ達を呼んでこい」

 ・

「ゴルド様、我ら永遠の勝者ウィナー・オブ・ザ・エターナル、をお呼びでございましょうか」

 ゴルド公爵の呼びかけに応じて四人組の男女が姿を現した……直ぐに現れたって事は、ゴルド公爵の側で待機していたんだろう。その第一印象は胡散臭い。全員容姿が整っているし強者だと言うのは分かるが、どこか胡散臭いのだ。そしてこいつ等を見ていると嫌な予感を感じる。

 冒険者や傭兵は有名になると二つ名が付けられる事が多い。ボルフ先生のスモーキングアサシンやギガリさんの血塗れの狂い熊なんかがそうだ。しかし、当の本人にしてみれば、いい迷惑らしくボルフ先生をスモーキングアサシンと呼ぼうものなら、地獄の鍛錬が待っている。


「ここにいるのがお前達の会いたがっていたジョージ・アコーギだ。ジョージに頼み事があるのだろう?自己紹介の後に頼んでみてはどうだ?」

 正直、嫌な予感しかしない……ゴルド様、俺の意思は確認してくれないんですか?

 俺の意思を確認してもらう前に一人の青年が俺の前に立った。ツンツンに逆立てた茶髪、鍛えられた身体とは不釣り合いな幼い顔立ち。歴戦の傷が刻み来れた鎧。特に目を引くのが異様な存在感を放っている剣。


「僕の名はプレイブ、次代の勇者プレイブとは僕の事さ。ジョージ君よろしくね」

 日本だと紛らわしいってジャロに怒られそうな名前だな。しかも次代の勇者を自称できる度胸は凄いと思う。

 鑑定結果 タゴーサク・カッぺー・装備ドラゴンスレイヤー……名前も自称なのか。やれやれ系の人とかならドヤ顔でタゴーサク君っていじるのかもしれないが、彼は名前がコンプレックスなんだと思う。武士の情けでスルーしておくのが大人の対応。

 問題はタゴ……プレイブがドラゴンスレイヤーを持っているって事。どうやらこいつ等がボーブルを探っている冒険者なんだろう。


「私の名はダーク、天災の魔導士とも呼ばれているダークです。ジョージ様よろしくお願いします……プレイブ、私達より年下とは言え貴族で領主なんですよ。きちんと敬語を使いなさい」

 プレイブをたしなめたのは真っ黒なローブを身に纏った青年。今の会話から察すると彼等の身分は平民って事になる。直答している時点でダーク君もアウトなんですが。


「俺、敬語って苦手なんだよな。それにため口の方が、仲良くなれるじゃん」

 ヘラヘラした態度でダークの叱責を交わすプレイブ。いや、少なくとも俺はプレイブ君達と仲良くなれそうにないです。プレイブ君に教えてあげたい。社会に出たらタメ口を使う機会は殆んどないんだよ。


「プレイブッ!」

 そんなプレイブの態度を見かねたのかダークが叱責する。さすが天災の魔法使い。こんな短時間で、俺を身内ノリっていう災いに巻き込んでくれた。

「ダーク、それがプレイブの良いとこじゃん。僕は戦士のピュア、よろしくね」

 にっこり笑顔で話し掛けてきたのは、赤い髪の少女。髪型はベリーショートで、快活な印象を受ける……ピュアさん、よろしくねって言って直ぐに目線を外すのはやめましょう。それ、地味にへこむんですよ。


「皆さん仲良しですね。申し遅れました私は神官のホーリーと言います。仲間から元気をもらいながら頑張っています」

 俺が感じていた嫌な予感が的中した。こいつ等、身内ノリを他人に強要してくる人種だ。居酒屋で騒いでいるリア充大学生と似ている。流行の一発ギャグで盛り上がり、迷惑そうな顔をすると空気読めないとか聞こえるように言ってくる奴らだ。ただ、全員俺より強いのは確かである。正面から闘ったら絶対に敵わないと思う。


「話は変わるけど、ボーブルにはドラゴンがいるんでしょ?僕、ドラゴンと戦ってみたいんだね……ジョージ君、良いよね?」

 さっきまでのヘラヘラとした表情から一変し、プレイブは不敵な笑みを浮かべる。タスク山のドラゴンはボーブルの守りの要、こいつ等なんかと重要性が違う。

 プレイブ達が騒いだせいで、会場の視線が俺達に集まっている。リア充に絡まれて晒し者になるボッチ。前世の苦い思い出が蘇ってくるじゃないか。


「ジョージ、検討してやってくれないか?プレイブ達が経験を積む事はオリゾンにとっても有益な事だ」

 そしてここぞとばかりに権力を振りかざしてくるゴルド公爵。立場上、俺はゴルド公爵に逆らう事が出来ない。そしてこれだけ大勢の前で約束をしてしまえば、約束を反故する事は出来ないだろう。


「ちょい待ち。それジョージに得はあるのか?ゴルド、ジョージは王様と俺のお気に入りって事を忘れてないよな?」

 助け船を出してくれたのはホートーだった。パーティー会場でゴルド公爵より立場が上なのはホートーくらいだ。贈り物をしておいて本当に良かった。


「ホ、ホートー様?しかし、次代の勇者とも言われているウィナー・オブ・ザ・エターナルに経験を積ませるの国益に繋がりますので」

 プレイブ達は実力者だ。魔王が復活したら重要な戦力になるだろう。その為には経験が必要だ。長く伸びた鼻をぽっきりと折れる経験が……良い事考えた。


「それでしたら、ホートー様に立会人になって頂き、公平な条件を結ぶと言うのはどうでしょうか?取りあえず私がドラゴンに渡りをつけ、会場を準備します。費用はゴルド公爵に請求しますので」

 もちろん、きっちり架空請求してやる。ドラゴンと闘うまで、ゴルド公爵は俺に手を出せない。つまり、安全に勇者に会いに行けるのだ。帰ったら、仕込みを始めよう。その前に明日から学校だから、その準備もしなきゃいけない。


 ◇


 今日から新学期である。外を見ると雪がちらついており、確実に寒い。予定なら日本から持ち帰ったトレンチコートを着て行きたかったんだが、工業ギルドからストップが掛かった。足ふみミシンで量産が可能なので、発売前からイメージダウンになる事は避けて下さいと頼まれたのだ。確かにアジア顔でフツメンの俺にトレンチコートは似合わない。悔しい事のボルフ先生やサンダ先生は憎いくらい似合ってた。そして同じ日本人でもイケメンの谷も似合っている。


「お兄様、馬車の準備が出来たそうですよ。早く学校に行きましょう」

 アミは虫垂炎が再発する事もなく元気いっぱいだ。このままボーブル城に住んでくれたらお兄様は仕事をさらに頑張れると思う。


「随分、嬉しそうだな」


「はい、早くお友達に元気になった姿を見てもらいたいです」

 アミはクラスメイトに会えるのが嬉しいらしく、ワクワクしている。ちなみにお兄様は明日から勇者に会いに行く為、しばらく自主休校します。

 今回一番悩んだのはゴルド領に付いて来てもらう人だ。ゴルド領は猿人至上主義の人が主流を占め、多くの獣人が奴隷にされている。つまり獣人にとって気持ちのよい土地ではないのだ。次に能力的な問題。ゴルド公爵は手を出してくる確率は低いが、魔物との戦闘は十分考えられる。最低でも自分の身を守れる戦闘能力は欲しい。

 そうなると谷が除外となる。あいつに奴隷を見せるのはまだ早い。同じ理由でサンダ先生もアウトだ。戦闘能力は申し分ないが、奴隷を嫌っているサンダ先生を連れて行くのは酷だと思う。

 そこで今回は御者をオデットさんに頼み、ロッコーさんとボルフ先生に同行してもらう事にした。ロッコーさんはゴルド領でも顔がきくし、裏街道を歩んできたボルフ先生ならゴルド領でカルチャーショックを受ける事もないだろう。


「よお、ドンガ久し振りだな。元気にしてたか?」

 待ち合わせ場所に着くと、ドンガは胸の前で腕を組んで震えていた。毎年、思うがこいつの毛皮には防寒能力はないのだろうか?


「ジ、ジョージ様、挨拶は後からするから早く馬車に乗せて欲しいだよ。おで、このままじゃ凍死しちまうだ」

 ドンガをいじりたい気持ちが首をもたげたが、そんな意地悪をしてアミに嫌われたら最悪だ。扉を開けてドンガを馬車に招き入れる。


「これくらいで凍死する訳ないだろ。そういやギガリさんは高校進学の事を何か言ってたか?」

 俺が高校に誘ったのはドンガ・カリナ・ヘゥーボ・リリルの四人。ヴェルデは自分の稼ぎで通えるし、コニー・ラパンの進学費用はギリアム商会で持つそうだ。


「家の手伝いを休まなきゃ、高校に行って良いって言ってただ。でも、高校に入学するには試験を受けなきゃいけないんだべ。おで、自信ないだよ」

 オリゾンで高校に進学する人間はほんの一握りだ。殆んどの人は中学を出たら働きにでる。特に農家は人手が欲しい家業だから、進学を許可してくれたギガリさんには感謝しなくてはいけない。トラクターゴーレムとかの農作業特化型ゴーレムを作れば収穫率もアップして、農家の人も楽になるだろうか。

 教室に入ると、クラスメイト達は冬休みの体験に花を咲かせていた。俺とカリナの場合は異世界(にほん)に行って来たという凄い体験をしたのだが、さすがにここで話す訳にはいかない。


「よお、久し振り。和包丁の切れ味って凄いね。親父も気にいったみたいだし、あんたのお母さんから教えてもらった料理も大好評だよ……ところで、あんたが連れてきたベガルって何者なんだい?お姉ちゃんとあんなに仲良くなる男の人は初めてだだよ」

 カリナの話によると、スノウさんは男性が苦手だったらしい。エロ・カッパーのせいで男性に恐怖を感じるようになったのに加え、美人だから強引に口説かれる事も少なくなかったそうだ。その点、ベガルは紳士な態度で接してきて、口説く素振りすら見せないからスノウさんは安心して話せているらしい。ベガルのヘタレが功を奏したのか。


「気付いていなかったのか?イリスさんの元婚約者ベガル・コルレシオンだよ」


「あの人も貴族なの?しかもコルレシオン家って言ったら公爵家じゃない」

 さすが国際経験豊かな食堂の娘。ナイスリアクションだ。


「この間の事件で大分ショックを受けたみたいんなんだよ。威張りもしない優しくて良い人だろ?」


「うん、お姉ちゃんも会えるの楽しみにしているみたいだし。ベガル様、お姉ちゃんをデートに誘ってくれないかな?でも、獣人相手じゃ無理かな」

 この獅子人の娘は何を言ってるんだ?そんなハードルの高い事、ベガルには無理だぞ。


「ベガルってドンガ以上に純情なんだよ。毎晩、お星様に向かって“スノウさんと一秒でも長く話せますようにって”お願いしてるんだぞ」

 一瞬、カリナの動きが止まった。俺も初めて聞いた時、耳を疑ったし。

「それ、マジ?」


「マジもマジ。大マジだよ。ベガルの親父さん、年下の女性ときちんと会話出来ているって聞いて涙を流して喜んでいたんだぞ」

 スノウさんは昔のトラウマから恋愛は奥手らしい。しかし、ベガルはそれを上回る超奥手な訳で……この恋上手くいくのか?


勇者登場まで後少しです。

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