表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/77

3 「はじまりました! 深夜のくすぐりブランデー!」

「はーい! はじまりましたぁ、深夜の『くすぐりブランデー』略して『くすブラ』! 今日もあたしら『てんつくてん』がお送りしまーす!」

「またオカルト企画かいな。夏だからって安易すぎちゃう?」

「ええやんけ。おれら漫才なくてめっちゃ楽やないの」

「なにいうてんのん! 毎回毎回キャーキャー言われてしがみつかれるんやで? まじたまらんわー」

「みとめるんかい!」

「ワイ、若い娘の生気吸って生きてますねん」

「ドラキュラか! めっちゃブサイクなドラキュラやな!」

「ドラキュラは顔やない! ニンニクがキライかどうかや!」

「ニンニクキライなん?」

「ラーメンにニンニクむっちゃかける」

「フツーやん! ただのニンニク好きなブサメンやん!」


 カメラの前で、MCの二人がテンポよくかけあいを繰りひろげる。

 みすずはドキドキしながら自分の番を待っていた。

「はい、今日のゲストのご紹介。まずはこの人! 世紀の霊視能力者、もはやこの企画の準レギュラー、ミス・ギボー!」


「見えるわ」


 仰々(ぎょうぎょう)しくギボーが水晶玉を持ちあげた。

「はい。なにが見えてるんでしょうねー。次は、いまや物理学界に名を馳せる若き天才物理学者! 下田教授!」


「『ブツカク』! ネット通販受けつけ中!」


「宣伝はやめていただきましょう! さぁ、ココでもう一人、この弓杜町に漂う妖気を気づき、駆けつけてくれたこの人――」

「…………」

 もったいぶった様子で立ち上がる金剛。大きく息を吸い込み――



「喝ぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!」



 ビリビリと、空気がふるえるような大声に、その場にいる全員が耳をふさぐか腰を抜かした。


「……さすらいの伝道師。金剛と申す」

 全員が唖然あぜんとするなか、満足げに土の上にあぐらをかく。


「今井さん! 今井さん!」

 小声で呼びかけるADの声にわれに返るや、場を取りなすようにコホン、とせきをする。

「えーと……声のおおきなお坊さんです」

「てか、マジビビったわ。なんやの? 大声自慢大会ちゃうでココ」

「さ・て・と。みなさんお待ちかね! 今回のイケニエとなる女の子ゲストは――」


(わたしだ)

 緊張で胸が高鳴たかなる。


「みっちーこと、美倉みすずさんです!」


「は、はいっ!」


 シャキリと起立する。

(みすず! 笑顔だえがお!)

 笹岡さんが必死にジェスチャーで伝えてくる。


――どうしよう。


 いつものカメラとちがって、たくさんの人が自分を見つめてる。

 どうしよう。

 いつもだったら振りまける笑顔が固まってしまう。

 四角いカメラの奥に自分が映ってるのがわかる。


「みすずちゃん?」


 今井さんがコメントをせかしてくる。

 なにか、いわなきゃ――


ドォォォン!!


 ビクッ!


「たらったらったーたらったらったー♪」

 調子外れの鼻歌とともに、モクモクと白いケムリがたちこめる。

「なんやねん!」

「なんだ! なにが起きた!?」

「『ブツカク』は全国書店からも注文できます!」

「ちょォ! しつこいでアンタ!」


 すぐにケムリは晴れていく。

 人影が見えた。

 パチン、と指先のはじける音。


「はい! ビー・ズィー・エムッ!」


 ADが反射的にカセットの電源を入れた。


 ぱっぱー! ぱぱらぱー! ぱぱらぱー! ぱっぱっぱー!


「はい! ライトォォォ!!」


 スポットライトが交差する。

 腕をビシッ、とナナメ45度に開き、まるで一大マジックでも成功させたように男が一人、ポーズを決めていた。


「……負けた」

 ぬぅ、と金剛がうめく。

「そして飛び入りゲスト! は、このボク!」

「だれやねん!」

 谷川がつっこむ。


「ちょっと! 撮影中なんで、一般人は立ち入り禁止! ダレだよ! ここのロケリークしたバカは!?」

 プロデューサーが顔を真っ赤にしてADに怒鳴り散らす。


「ノンノンノン。Meミーがガイドのミスタ・ブシドーねー」

 金髪であきらかな外人の男性は、夜にもかかわらずサングラスをかけたまま、「HAHAHA」と陽気に笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ