表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/77

5 オンナノコノキモチ<1>

「プリントか?」

 廊下にでたあと、日和は美鈴に声をかけた。


 副委員長だったあずまがいなくなり、委員会の仕事が美鈴一人では重荷になっている。彼女には気軽に声をかけられる友人もいない。もっぱらくされ縁の日和が手伝うという状況になっていた。


 なかでも大量のプリント用紙は女子にとって重いようで、ちょくちょくかりだされて運び役にされることが多い。


「――美倉みすずって、きれいよね」


 突然そんなことを言われ、日和はハァ? という顔をした。

 立ち止まる美鈴。

 明後日あさっての方向を見上げ、日和をさしおいてつづける。


「なんてったってアイドルですもの。男の子の視線もクギヅケよ」


 誇らしげな美鈴。

 きもち悪そうな日和。


「用事無いならもどるぞ」

 美鈴は慌てた。


「待ってよ! 東さんにくらべてどうかな!?」

「なんでそこで香月ちゃんがでてくるんだよ」

「いいから! あんなお高くとまった女より、みんなのアイドル美倉みすずのほうが絶対いいよ!」

 しつこくとりすがる様子に、日和はあきれた。


「まじめな委員長がグラビアアイドル押しって……変だぞおまえ」

 腕をつかまれたまま、ため息をつく。


「おまえは本人知らねえからそんなこといえるんだよ」

「そ、そんなことないよ!」

「いーや! 知らないね!」

 鼻で笑う。

「香月ちゃんとくらべりゃ月と団子だ」


「…………」


 半眼になる美鈴。

「あ、そぅ」

「そうそう。みすずって女はスーパーワガママ女なんだ。そんでもってウルトラ自己チューで可愛げなんぞ一切ない最低なDV女――」


 パシィン!


 ほほにひらめく一閃。

 痛!

 張られたほほにじんわり涙がでる。


「なにすんだ!」

 にらみ返すと、眼鏡の奥に光るもの。


「――日和なんて、だいッきらいっ!!」


 大声でさけぶなり、教室のドアを勢いよく開け放ってもどっていった。

「むぅ」

 なぜ美鈴が泣く?

 釈然しゃくぜんとしない思いでたたずんでいると、


「朝から痴話ちわゲンカ? この学校の生徒は節操せっそうないわね」


 スーツ姿の女性が、横を歩いてとおり過ぎた。

 教室前の扉で立ち止まる。

 ショートカットで知的な雰囲気の女性だった。


 ……誰?

「入って。初日から遅刻のカウントなんてとりたくないから」

 手に持っている出席簿をこれ見よがしに見せて、女性は日和をうながす。

「あれ? 校長は……?」

「引きつぎはうけています。早く」

 うながされるまま、教室へと入った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ