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『オーレリア戦記』  作者: りあと
『オーレリア戦記』帝国歴326年
279/287

『翡翠宮の東雲杓子(しめののじゃくし)』

ブランガ艦隊によりシューコルンは占領された。 オーレリア、アルヴェリア、そして聖ゲンドラスによる連合艦隊は、シューコルン沖海戦において勝利を収めたと言える。しかし、その代償としてオーレリア艦隊のみが甚大な被害を受ける結果となった。

彼らがシューコルン奪還を断念した最大の理由は、上陸部隊を用意していなかったこと、そしてオーレリア帝国が前年に敗退したイメイルの奪還を優先したことにある。海の民と称されるゲンドラス海軍とて、単独でブランガに立ち向かえるはずもなく、撤退を受け入れるほかなかった。この連合艦隊は「寄せ集め」ゆえに足並みが揃わず決裂したわけではない。アルヴェリアは皇帝直属の軍隊であり、聖ゲンドラス教国もまた公表こそされていないものの、オーレリア帝国の実質的な属国であったからだ。失策の原因はひとえに、承認欲求に囚われて浮足立った皇帝の独断専行にあった。

シューコルン海戦と同じ頃。オーレリア皇帝イリアードは、久々の親征にすっかり夢中になっていた。太尉レイナルド・デル・ペーレも、今回ばかりは全軍権を委ねられるとあり、「俺たちならやれちゃうもんねー!」という幻聴すら聞こえてきそうな勢いで、鼻歌交じりにリュックに、バナナでも詰めていそうな浮かれようで、遠征の支度を進めていた。そして、そそくさと、二ヶ月にも及ぶ行軍へと飛び出していったのだった。イリアードは前年、息子の皇太子リアムに三十人もの側室を押し付け、「お前は酒色に溺れて留守番でもしていろ。父が凄まじい手柄を見せてやる!」と、口にこそ出さないものの、大げさで大人気ない表情を顔全体に浮かべていた。その幼稚な目論見は容易に想像がつく。歳を重ねてもなお美しい二人の妻の気を惹こうと、馬上で甘い妄想にふける皇帝イリアード。彼は数ヶ月後の誇らしげな帰還へと思いを馳せながら、行軍を続けるのだった。


◇

4月。四つ葉堂は大忙しである。后妃が30人増えると各宮なら仕える者もその3倍は多くなる。そして、新たな宮女見習いも採用されて賑わう、四つ葉堂のうさぎ達も抱かれて、撫でられ、抜け毛に悩んでいた。日頃は彼らに無関心の山羊が流石に同情するくらいである。皇孫女シェルランテはというと、翡翠宮に入り浸り、貴妃セシリアの奏でる古琴で舞を舞うのにハマっていた。ココロギが作って、ミタマが使っているクリスタルロッド『東雲煌竜(しののめこうりゅう)』を気に入って、同じ色に光るだけの棒を作ってもらった。

名前は『東雲杓子(しののめじゃくし)』である。

優美な旋律を奏でながら、愛らしい2歳児の舞を見て、セシリアが微笑んでいる。優雅さや雅を取り入れ始めた2歳児の優雅でも雅でもない姿が微笑ましいのであった。皇孫女が目線を送ってくる。

「とてもお上手ですよ。シェルランテ様」

シェルランテは褒められて満足な表情をしている。

この褒められたがりなのは、ルシアの父であり、シェルランテの祖父である皇帝イリアードに似たのかも知れない。そう思うとセシリアは笑顔が止まらないのであった。

登場人物一覧


【オーレリア帝国・皇族】


•イリアード

オーレリア帝国皇帝。


•リゼリア

オーレリア帝国皇后。帝国の母としての威厳と気品を持ち、後宮を束ねる。セシリアとは幼馴染で親友。

リヴィエール一族で異能者であるが、念話、念視、予知。後宮の運営や皇帝の政務の手伝いが上手なのはその為であるが、

異能者のみにしか知られていない。その為、妙に完璧な人と思われている。リアムとシンシアの母親。


•セシリア

貴妃(イリアードの妻)。3年前に愛娘ルシアを亡くし絶望していたが、孫娘シェルランテの愛しさに心を救われる。

リゼリア、イリアード共に従姉妹、従兄妹の関係である。

リヴィエール一族で異能者。念動。念創。パイロキネシス。など使いこなす。



•リアム 

皇太子。シェルランテ、ソリス、オリオンの父。325年に反乱を起こしたイメイル領の遠征にて敗退。父イリアードから30人もの側室を押し付けられる。后妃たちの間で愛憎劇が繰り広げられている。ルシアの異母兄。シンシアの兄。



•シルヴィア

皇太子妃。シェルランテとソリスの母。高貴で冷厳だが、夫リアムとの溝や側室エレノアとの確執に悩む。

夫のエレノアとの浮気と2人の子供が同じ時期に生まれた事から、嫌悪感が積もり埋められない溝となった。

息子を後継者にする事に全力集中しているので、長女のシェルランテの奇行などはもはや気にならない様子である。


•エレノア:皇太子側室(良娣・正三品)。オリオンの母。元は身分の低い女官だったが、皇太子の寵愛を盾にシルヴィアへ対立姿勢を見せる。野心家で女を武器にできるやり手である。



•ルシア:故人。イリアードとセシリアの娘。18歳で戦死したが、母を慰めるため皇孫女シェルランテとして転生した。

『真理の光教団』なるインチキ宗教を4歳で作ったのは、

政教商の一致により、領民と国の正常化への取り組みからであった。民衆の信仰心から貴族のお金がリヴィエール商会にお金が流れてリヴィエール商会が国、政府に税を払う事で、領民は重税に苦しまず、貴族に余分な財産が蓄積されにくい仕組みとなっている。イリアードはそれを知っている為、『真理の光教団』と聖ゲンドラス教国を黙認する形で維持している。


•シェルランテ

皇孫女(リアムとシルヴィアの娘)。2歳。白鷺姫。

実はルシアの生まれ変わり。見た目の可愛さに反して驚異的な身体能力や冷静な戦術眼を持つ、強力な異能者



•ソリス

皇孫子(リアムとシルヴィアの息子)。1歳。シェルランテの弟。


•オリオン

皇孫子(リアムとエレノアの息子)。1歳。シェルランテの異母弟。



•シンシア

皇女(16歳)。

『真光の巫女(ルークス・ヴェリタス)』

月華の錫杖『朧三日月(おぼろみかづき)』を使う。

リアムの妹。ルシアの異母妹。『真理の光教団』の聖書を丸暗記し、白亜宮にて働く人間の名前と生い立ちなどすべて記憶している知者でもある。

10歳で親元を離れて後宮に入れられ、11歳で恐ろしい事件に遭遇した経験もあるが14歳まで引きこもりだったのは、天才であるが故の他人との違和感が大きい。自分は何か違うを肯定的に捉えられる様になって、別人の様になった。ココロギを愛し、心の拠り所としているのも、彼女がココロギを必要としているからである。


【オーレリア帝国・家臣および協力者】


•レイナルド・デル・ペーレ:オーレリア帝国の太尉。


•ツルギ

『明光の聖騎士(パラディン・レイディアンス)』

宙属性は土星。万物の属性は土属性の力を持ち、『龍鱗盾』を構えてココロギや仲間たちを守る。エミーナの息子。ミタマの双子の兄。亡国ダラーンの英雄であり、国士とも至高の騎士とも言われるクラーク・ダナミヤの転生した姿であるが、記憶は継承していない。


•ミタマ

『真理の光乙女(リ・ルミエール)』。

水流のオーラを纏う聖騎士であり巫女。『空斬水鏡』と『東雲煌竜』の二振りの短杖を組み合わせた華麗な演武・武術で戦う。ヴィオというルシアが気に入っていた少女に似ており、ヴィオと同じ両手生殺(二刀流)を得意としている。エミーナの娘。ツルギの双子の妹。


•ルチア / フィオナ:春宮でシェルランテに仕える若い侍女たち。シェルランテの壮絶な縄跳びトレーニングを崇敬の目で見守る。



【聖ゲンドラス教国・アルヴェリア】


•ココロギ

教皇ゲンドラスの娘。

『至高の光巫女(ハイ・プリエステス)』。オクタヴィアの後宮、四つ葉堂に在中している。日光を集束させる錫杖

『旭日神劫(きょくじつじんこう)』を振るう。

『異能の至宝』であるが、天然であり、ドジでもある。元来の人に優しい性格である為、異能の力はあっても殺意が薄いので、凶暴性は皆無である。


•エミーナ:『神託の聖母』。ブランガの両腕を粉砕した強力な異能者。海戦ではシェルランテに竹筒の麦茶を渡すなどマイペースな一面も。セシリアの元侍女である為、ルシアにとっても母であり、姉の様な存在であった。ルシアの生まれ変わりであるシェルランテとのシュールな雰囲気は20年来の親しき関係にある。ミタマとツルギの母親。




•アレス・サイリュン:聖騎士団長。教皇ゲンドラスの実子でエミーナの夫。元アルヴェリア海軍トップ。


•フェリス

シンシアに従う純白の鷹。卵からシンシアに育てられた為。自分も人間だと思っているか、シンシアを鳥だと思っているかのどちらかである。



【ノースフォレスト遠征軍・敵対勢力】


•ブランガ・オデュヌ:ノースフォレストを率いる「魔王」。転生者である。異能の魔導士に両腕を繋ぎ合わされ復帰。獄炎魔槍『煉獄の咆哮』を操る。


•ボーロス:ディヌイヤの覇王。重戦車部隊を率いてブランガと死闘を繰り広げ、最期まで王としての尊厳を保ち討ち取られた。



•アルカディアス:深紅と金の法衣を纏う初老の神職者。圧倒的な神気と空間破砕の力を持つ謎多き黒幕。


•戦斧の女:アルカディアスの命でシンシアを強襲した赤茶色のオーラを纏う刺客。シンシアに両脚を粉砕され深海へ沈んだ。



•暗灰色の騎士&短弓兵:ブランガ艦隊の強力な異能戦士たち。ミタマの極冷気と灼熱の連続攻撃の前に撃破された。


用語集一覧


【国家・地域・場所】


•オーレリア帝国

大陸の強大な帝国。帝都はオクタヴィア。

『錦を織りなす者(オーロラ・レリーフ)』が語源とされているが、錦族の国がなぜ天信族の国に変わったのか定かではない。



•オクタヴィア:オーレリア帝国の帝都。



•白亜宮(はくあきゅう):帝都オクタヴィアにある広大な宮殿。後宮や各宮殿を内包する。 


•水明宮(すいめいきゅう):貴妃セシリアが暮らす館。池のほとりに佇む。



•春宮(しゅんきゅう)

皇太子妃の居館。白鷺宮。

皇孫女シェルランテの居住空間がある。

皇太子妃シルヴィアがシェルランテを身籠った頃から、

大きな白鷺が庭に住み着く様になった。

以降、白鷺宮とも言われる様になった。


•翡翠宮(ひすいきゅう):イリアードの母、フレデリカの居館であった。リゼリアとセシリアが宮女として15歳まで過ごした。イリアードが生まれて育ったところでもある。後にセシリアの妹、徳妃ルネッタの居館となったが、ルネッタは皇子イスファに噛み殺された。

皇帝家にとって思い出深い居館である為、そのまま保存している。



•四つ葉堂(よつばどう):後宮の礼拝堂。

ココロギの家でもある。うさぎや山羊、牛、鶏が飼育されている賑やかな施設。


•ディヌイヤ:南海に位置する湿潤な熱気に包まれた陸の孤島。覇王ボーロスが統治していた。


•シューコルン:ブランガ艦隊に占領された要衝。沖合で大海戦が繰り広げられた。



•イメイル

帝国の最西最南の領土で数代前の親王家が世襲していた。

反乱により親王家は抹殺された。

前年、皇太子リアムを総大将として奪還に向けて、軍を送り込んだが敗退した。皇帝イリアードがイメイル奪還に向けて、出立してしまっていた為にシューコルンは未対応となった。


•聖ゲンドラス教国:オーレリア帝国の実質的な属国。強力な海軍と聖性を有する。



•アルヴェリア:皇帝直属の軍隊・国家。海軍の治安維持活動などで非常に高い錬度を誇る。


【武具・法具・道具】


•東雲杓子(しののめじゃくし)

シェルランテが『東雲煌竜』を真似て作ってもらった、東雲色に光るだけの棒。という事になっている。


•東雲煌竜(しののめこうりゅう)

ココロギが作成し、ミタマが使用する

クリスタルロッド(短杖)。火炎術の使える杖。



•空斬水鏡(くうざんすいきょう)

ミタマが持つ風属性の短杖。『東雲煌竜』と接合することで長杖になる。


•朧三日月(おぼろみかづき)

皇女シンシアが持つ月華の錫杖。

三日月形の光刃や粒子を放つ。宙属性の錫杖。



•旭日神劫(きょくじつしんこう)

ココロギの錫杖。日光を集束・倍増させ、万度を超える超高熱線を解放する。宙属性の錫杖。

杖頭が四つ葉の形をしている為に、ハエ叩きや布団叩きに似ている。

実際、ココロギはそれらで発想をえて作った。



•龍鱗盾(りゅうりんじゅん)

ツルギが使用する翡翠の鱗が埋め込まれた丸盾。

土属性の威力を引き出す。

ココロギがビー・スーの盾を改造した。


•煉獄の咆哮(れんごくのほうこう)

ブランガが持つ獄炎の魔槍。


【称号・役職・その他キーワード】


•真光の巫女(ルークス・ヴェリタス)

『真理の光教団』における高位称号。皇女シンシアに与えられた。


•至高の光巫女(ハイ・プリエステス)

ココロギが持つ絶大な聖性を示す称号。



•神託の聖母:エミーナの称号。


•良娣(りょうてい):皇太子側室の最高位(正三品)。



•ブラッド・エミーナ

元アルヴェリア水軍の戦艦であり、オーレリア海軍全体でも最も戦功のある船である。「東海の鬼女」エミーナの専用艦。

イリアードの許可をえて、

エミーナと共に聖ゲンドラス教国所属の艦船となった。


• ブラック・ルシア

ブラッド・エミーナと同型艦。ルシアがエミーナと同じ船が欲しいとわがままを言って、4歳の時にイリアードに作らせた。

エミーナみたいに強くてカッコいい感じをだそうとしてブラックと名付けたが、完成間近でやっぱり白紅蓮花の白から桃色のグラデーションの色に塗り直しさせて完成したは船である。爪で引っ掻くと黒い部分が出てくる。


•ウォーターライト:シューコルン沖海戦に投入された聖ゲンドラス・連合艦隊の主要戦艦。水明将軍の称号を持っていたセシリアの戦艦である。アルヴェリア艦隊旗艦のウォータードラゴンと同型艦である。


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