↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愚王と呼ばれた男  作者: 中原九尾


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
24/24

第二十四話 消えた愚王

 ダニーの左遷から、しばらく経ったある日。


「俺、この会社辞めることにした」


 サイモンが、そう切り出してきた。


「独立するのか」


「ああ。一人でやってみようと思って」


「そうか」


 カインは、特に驚くこともなく、素直にそう受け止めた。長い付き合いの中で、サイモンが仕事に対して真面目に向き合ってきたことは、よく知っていた。彼なら、独立してもうまくやっていくだろうという確信があった。


「じゃあ、もう愚王とは関わりなくなるんだな」


 カインがそう漏らすと、サイモンは、少し考えるような顔をしてから、小さく笑った。


「まあ、あいつのことだから、どこにいてもこの調子で何とかやっていくだろ」


「だろうな」


 その言葉に、カインも思わず笑ってしまった。


 あの新人講習で出会った日から、ずっと振り回され続けてきた。仕事のこと、女のこと、家族のこと、金のこと。数えきれないほどの「ぐお”お”お”お”ぉぉーー」を聞かされ、そのたびに、呆れながらも付き合ってきた。


 それでも、不思議と憎めない部分があったのも、また事実だった。


「まあ、元気にやってんだろ、どうせ」


 カインは、そう呟きながら、静かにグラスを傾けた。


 この日を境に、カインとサイモンの前から、ダニーの――愚王の姿は、完全に見えなくなった。


 連絡が来ることも、噂を耳にすることも、二度となかった。


 ただ、時折ふと、あの独特な嗚咽を思い出しては、カインは一人、小さく笑ってしまうのだった。


〈了〉

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。