第十二話 黒+白=?
「ヴギャァァァァァァァァァァ!!!!」
つんざくような悲鳴を上げ、黒を振り払おうと手を振り回す鳥。
段々形が保てなくなり最後はペンキのようにべしゃっと潰れた。
「なになになに!?なんなの!?」
取り込まれかけていた白玖がペッと追い出され、白いペンキのようにベタベタしてる地面に転がる。
「白玖!無事か!無事だな!ちくしょう!無事でよかったが、もうちょっと傷ついてくれてもよかった!」
駆け寄る李仁。黒い服が白く染まるがこれはあとで琳が落としてくれるだろう。それと本音ダダ漏れなのは御愛嬌である。
「ねーさん嫌い!近寄らないで!だって、僕を嫌ってるんでしょ!?」
支えてやろうとした手が止まる。
「…そうだ。オレはお前が大嫌いだよ。白玖。お前は?」
びくっとして恐る恐る李仁を見上げる。その目には憎悪があった。自分の思う通りにいってくれない李仁への。
「…ウソウソウソウソウソ!!この!ニセモノめ!僕を嫌うねーさんなんて死んじゃえぇぇ!!!」
李仁が昔あげた果物ナイフで李仁を傷つけようと振り上げる。
「おい、李仁傷付けんな。俺の神様だぞ」
いつの間にか近くに来ていた琳が手を掴んで止める。衣装はまだ黒と狼と星モチーフのままである。
成人男性より非力な白玖と成人男性より畑仕事で握力がある琳との差は歴然だ。
「離して!僕が離せって言ってるんだから離せってば!」
やたらめったら果物ナイフを振り回そうとするが抑え込まれてて何もできない。
「いーや離さん」
それどころか力を込めてぎりりと捻り上げる。
「痛い痛い痛い痛い痛い!!やめて!」
顔を苦痛に歪めて果物ナイフを落とす。
「やめん」
果物ナイフを足でまた取れないようにと飛ばしながらニヒルに笑う。
「ざまぁねぇな、善人坊っちゃん」
ガルルルと言わんばかりに歯をむき出しにして威嚇する白玖を嘲笑う琳。善と悪。白と黒。善や白のほうがいいとされているのに、今は悪…所謂、黒のほうが正しそうだ。
「善人も、いいことばっかじゃねぇな」
ポツリと呟く李仁。
「そりゃあそうだろ。自分の色を持って生きたほうが楽しいさ。お前が昔言ってた言葉だ。もう大丈夫だよも、大丈夫かも言わねぇけど、お前が昔言った言葉を繰り返してやれるよ」
ウインク。今朝、李仁がしたように。
「っ…ホントにお前は…オレそっくりだな」
くしゃっと笑って拳を琳の胸元にとんと当てる
「ありがとうな」
耳そばでそれだけ言って離れた。
「白玖はそこに転がしとけ」
おうと白玖を見ると
「李仁、大変だ。白玖の髪が…オレみたいな灰色に…!灰魔化か!?」
どんどん白玖の白い髪が灰色に染まっていく。 琳は驚いて手を離した。
「な、なにこれなにこれなにこれ!?ねーさん助けてぇ!!」
嫌いだなんだとあれだけ言っていたのにいざとなると李仁に頼る白玖。髪を掴んで狼狽えている。
「琳、黒+白は?」
突然の色の質問。
「は、灰色?」
頭に?マークを大量に浮かべながら答える。
「そ。だからだよ。色染めはその名の通り、今の色を落として、黒に染める力だ。灰魔は元々が透明だ。だから黒に染まる。元々が白なら?」
「灰色になる…!」
「せーかい♡」
いつものやり取り。李仁が質問をし、琳に答えさせる。そうすると答えが自ずと出る。
「僕の白が!そんな…!」
だが、白玖はそうともいかない。唯一のものが取られた感覚。それが李仁への嫌悪と憎悪に変わる。
「ねーさんのせいだ!ねーさんが!」
また掴みかかろうとしたのでまた琳に捻り上げられる。
「痛い!ひどいひどいひどい!お義父様に言ってやる!!ねーさんが酷いことするって!僕が正しいんだ!僕こそが!」
子供が喚いてると通報があったのか人が集まり始めた。
「やべ!撤退だ!てったーーい!」
李仁と琳は逃げるように森に入っていく。
「あぁ…街がめちゃくちゃだ…!そんな…!」
白に染まった街を見ながら絶望する市民たち。
「あ、大丈夫か!?坊っちゃん!森の近く…あ!あの退廃の森の魔女共の仕業だな…!家をめちゃくちゃにしやがって…!次あったときに火付けで燃やしてやる!」
もう大丈夫だよ怖くないからねと白玖にみんな声を掛ける。
「僕が…僕こそが…」
白玖はぶつぶつと呟き、大声で。
_ボクコソガタダシインダ!!!!
そう、強く願ったら黒をはじき出すように白に染まった。
「やったぁ!僕の色!僕の色だ!善人の色!ねーさんは悪の色!僕が正義なんだよ!ねーさんを殺さなきゃ…!」




