第13話 新しい相棒
・コスモ(女)=モウガス(男)
元騎士団の39歳のおっさん冒険者、職業は【ソードアーマー】
領主騎士団時代に負傷した右膝を治す為に飲んだ森の魔女の秘薬、万能薬の効果により39歳のおっさんモウガス(男)から見た目が20歳前後のコスモ(女)となる
本人は嫌々ながらも着る服が無いので、ピンク色で統一されたビキニアーマーにハート型の大盾、魔剣ナインロータスを仕方なく装備する事になる
諸事情によりモウガスの姪という事になる
宿で寝ていたコスモが目を覚まして、窓の外を見ると日が昇り始めていた。外の道も人通りが少ない、この早起きの習慣は【薬草採取】を行っていた時に身に付いたもので、自然に出来るようになっていた。
桃色のビキニアーマーを装着すると部屋の隅に置いていた折れた鉄の剣を腰に携帯する。今日は鍛冶屋【覇者の剣】に行って鉄の剣の修理を依頼するつもりであった。
宿を出て町中を歩くと、人通りは少ないが通り過ぎる者からの視線を感じるが、無視をして歩みを進める。最初は恥ずかしい気持ちであったが、人間慣れたら気にならなくなるものである。そのままカルラナの職人地区へと入って行く。
鍛冶屋【覇者の剣】の前に到着すると、すでに外には開店を知らせる看板が出ていたので、店内にそのまま入る。勘定台には主人のドノバンが座って眠そうな顔をしている。コスモが丁度良いと思い、一声掛けると鉄の剣を腰から外して勘定台の上に置く。
「おはようドノバン!悪いけどさ、この鉄の剣が修理出来るか見て欲しいんだけど……」
「コスモか、モウガスの野郎と一緒で朝が早えな。どれ見せてみろ」
コスモの置いた鉄の剣を慣れた手付きで手に取ると、端から端まで見渡す。しかしすぐに鉄の剣の状態が分かったのかドノバンがしかめっ面になる。
「あちゃー……こりゃ駄目だな、鉄の剣の芯が折れちまってるよ」
鉄の剣を握り水平に掲げ目を細めながら折れ具合を見て修復出来ないと判断する。コスモも何と無く分かっていたが、それでも残念な気持ちになる。
「うーん、やっぱり駄目か……長い付き合いの剣だったんだけどな」
地方都市カルラナにやって来てから1年を共にした相棒でもあり、思い入れもある鉄の剣が壊れてしまい落ち込む。そのコスモとは反対にドノバンが折れた鉄の剣の状態を見て呆れていた。
「しっかしまあ、どんだけ馬鹿力入れりゃ、こんなになるんだ」
「本当はもっと頑丈な鋼の剣が欲しかったけど、お金が無くてさ」
「何言ってんだコスモ、鋼の剣だったとしても持たねえ折れ方だぞ!ったく」
騎士団のなけなしの退職金で重装鎧や盾などの防具一式を受注生産した時に、おまけで貰った鉄の剣だった。本来であれば鋼の剣以上の剣が欲しかったが、当時のコスモにはお金が無かった。
だが今なら巨大赤猪の報酬もあり懐も潤っている。そこでドノバンに新しい剣を見繕って貰おうとする。
「あ、あのさドノバン、とりあえず、俺に合う良い剣はないか?」
「はっ!俺なら剣なんかじゃなくて、頑丈な斧をお勧めするぜ」
結論から言ってコスモに扱える剣は売り物には無かった。ドノバンが自慢の剣を折られて機嫌が悪いのか、遠回しにお前の馬鹿力に耐えうる剣は無いから斧にしろと返されてしまう。その様子を鍛冶場の奥から嬉しそうに見つめるミリットが声を掛ける。
「困ってるようだねーコスモ」
「げえっ!ミリット!」
この桃色の重装鎧ビキニアーマーの製作者ミリットが登場すると、コスモの中で先日の悪夢が蘇る。その悪夢もあって思った事をつい口に出してしまう。そんなコスモの反応を見てミリットが顔を渋くする。
「酷いなあ、折角困ってるコスモを助けようと良い剣を作って持って来たのに……」
「ミリットが作った……剣?」
物凄い嫌な予感がする。なぜならミリットの手に持っている剣の色もさることながら形状がすでにおかしいのだ。ミリットが満を持してその剣を意気揚々と天井に向かって掲げる。
「じゃーん!戦神ライオネルシリーズ!愛の剣だ!」
「「うっわぁ……」」
コスモとドノバンがその剣を見て同時に引いてしまう。
剣の柄から鍔まで桃色、鍔がハート型の形、何より刀身の先端、切っ先もハート型になっている。しかもハートが逆さなのだ。ハートの先端が切先を向いていて、丸みのある部分が柄の方を向いている。男の象徴をわざと狙って表現しているのか、どう見ても……チ〇チ〇の形なのである。
こんな剣を装備して外を歩いていたら真の変態である。コスモが顔に汗をかきながら父親のドノバンに小声で問い詰める。
「お、おいドノバン、ミリットにどういう教育してんだよ……」
「あんまりにも鍛冶の腕が立つもんだから、自由にやらせ過ぎた……すまねぇ」
ドノバンもこの剣のやばさに気付いているのか、親として申し訳ないと感じ素直に謝ってくる。確かに鍛冶師として優秀な自慢の娘がこんな卑猥な物を、客先(女)に出したら謝りたくもなる。
すでに桃色のビキニアーマーで十分に精神的ダメージを負っているコスモが見なかった事にして違う剣を探し始める。
「コホン!えーっと他に良い剣は……」
「おーい!無視するなコスモ!」
ミリットからの突っ込みの声が聞えるが、無視をして店内を見回すと店の隅に乱雑に置かれた剣が目に入る。値札が付いていない所を見ると、廃棄する予定のものだろう。どの剣も刃こぼれが酷く、刀身が折れたり錆びていた。
その中に埋もれているが、一際目立つ寂しそうに佇む黒い大剣がコスモの目に付く。
黒い大剣はコスモの背丈より、少し低い程度の長さ、特徴的なのが厚い刀身にその太さと、刃が潰れている点である。それは剣というにはあまりにも……。
コスモが黒い大剣の説明を無視してドノバンに直接、黒い大剣について確認する。
「おいドノバン、あの黒い大剣は捨てるのか?」
「ああ、あれか、最近、呪いの武具を集める蒐集家が亡くなってな……その遺族が片してくれって置いてったもんだ、どんなものっかてーと……」
「コスモそんな剣より私の剣を……」
ドノバンが説明を始めようとすると暴走するミリットが割り込んでくる。やかましいその口をドノバンが抑えると、それ以上暴走しない様に強制的に鍛冶場の奥へとミリットを引っ込めて行く。そして店内には誰も居なくなった。
静まった店内でコスモがドノバンを待つが、黒い大剣に呼ばれるように感じると、静かに近付き黒い大剣の柄を握る。その瞬間、黒い大剣のかつての使用者達だろうか、その者の人生が映像の様に頭の中へ流れ込んで来る。
モウガスにも劣らない屈強な男がこの大剣を握り魔獣や敵兵を薙ぎ倒す。権力者らしき人物に祝福され家族も出来て幸せの絶頂、その力を恐れた権力者に裏切られ家族諸共、処刑される……。
と言った内容なのだが、共通してどの使用者達も黒い大剣で活躍するが家族を守り切れず、最後は必ず打ち取られていた。それぞれの立場は違うものの、その映像が次から次へとコスモの頭の中へと流れ込む。
使用者達の全員の映像が流れ終わると、漸く現実へと戻される。現実に戻ったコスモが辺りの様子を確認するが、それほど時間が経過していないのか、まだドノバンは戻っていなかった。
「な……何だ!今のは……この剣の持ち主は全員亡くなっているのか?」
そしてコスモが黒い大剣を握り良く見ると、黒と青の混じった暗い悲哀の色を中心に、淀みの無い白色が円を描いて煌々と囲っているのが見える。まるで何かを成し遂げていない後悔の念を、誰かに気付いて欲しいその様な感じがした。
(技能の【慈愛】が発動したって事はこの黒い大剣には心がある?)
通常武器は無機質な物で出来ていて、生き物の様に心を持ち合わせてはいない。だが稀にその装備を長年に渡り愛用する事で、装備者の心が移る事もある。それが一般的に呪いの装備と呼ばれていた。
コスモが柄を離すと、黒い大剣から見えていた心の色が静かに消えて行く。ちょうどミリットへの教育が終わったのか、ドノバンが勘定台に戻って来て説明を続ける。
「待たせたな、その黒い大剣は魔剣だ、鑑定しみたんだが凄いぞ?」
「魔剣……か」
ドノバンが少し興奮気味に詳しく鑑定結果を伝える。
まず装備出来る条件があって、必要な能力値は【力】50以上である事。条件が困難な反面、特性が抜群だった。
武器特性として技能【看破】を備えている。【看破】とは相手の持つ技能を無効にさせる技能。簡単に言えば技能を活かした戦闘が出来ない、互いの素の能力値での戦いを強制するという事になる。
さらもう一つの特性が相手の【守備】【魔防】の能力値を無視するという破格の効果だ。そして最後に必ず使用者が【運】の高さに比例して、幸福の絶頂から不幸の底へと落ちる。と言った内容だ。
その名も魔剣ナインロータス、持ち主を英雄に仕立てるが最後には不幸にさせるという。
魔剣の名に恥じない性能を秘めてはいるが、装備条件が厳しいので時の英雄級の能力値でないと装備出来ない、いわくつきの一品だ。
「……って、まあ装備出来る奴はいねぇ、まず【力】50ってのは神器の力を借りた者がやっとの上限値だ、だから炉に溶かして成仏させちまおうってな、そこに置いてたんだよ」
ドノバンの言う通り普通であれば条件を満たす者は居ないだろう。能力値が英雄級のコスモを除いての話ではある。そんな説明を受けて、ますます黒い大剣に興味を示す。
「なあ、少し持ってみてもいいか?」
「ああ、いいぜ!持てたらな?俺とミリットの二人掛かりでようやく持ち上がった代物だぜ」
元の持ち主の遺族もその異常な重さで扱えず、処分する事を決めたのだろう。コスモが魔剣ナインロータスの柄を掴むと片手で事もなげに、ゆっくりと横へ持ち上げてみせる。
「ふむ……悪くないな」
「も、持ち上げた?しかも片手だと!コスモ、お前まさか……」
涼しい顔で持ち上げるコスモを見てドノバンが驚愕した表情で見つめていた。コスモに装備条件の能力値【力】が50以上ある事に気付いたからだ。
しかしそんな事に気付かない程にコスモは魔剣ナインロータスに夢中であった。
「ちょっと、こいつを振ってみたいな、ドノバン、裏庭を借りてもいいか?」
「あ、ああ、案内する、こっちだ」
装備できたのが信じられないドノバンがそれを確かめる為、コスモを連れて店の裏庭へ続く扉に案内する。扉を開けて裏庭の広い場所へと出ると、コスモが魔剣ナインロータスを右手で構えて素振りを始める。
ブンッ!ブンッ!
魔剣を振る度に空気を裂く重い風切りの音が聞こえてくる。剣を振る速度が段々と早くなって行く。
ブォッ!ブォッ!ブン!ブン!……
その内ドノバンの目には見えない程の早さになると、重厚な風切り音を唸らせ辺りに響いて行く。手に馴染むのかコスモが笑顔になって魔剣ナインロータスを褒める。
「はははは!良い剣だ!重さも丁度良い!」
コスモがあらゆる方向に魔剣ナインロータスを振り回す、まるで踊りを踊るかの様にだ。その様子をドノバンが神妙な面持ちで見守っていた。しばらくして魔剣ナインロータスの使い勝手が解ったのか、素振りを止めてるとドノバンの方を向く。
「ドノバン、この魔剣なんだが……」
「くれてやる」
「えっ?」
コスモが用件を言う前に心を読んだ様にドノバンが魔剣ナインロータスを譲ると言う。
「これでも一端の鍛冶屋だ!死に掛けた剣が蘇る様を間近で見て断れるかってんだよ!」
「ドノバン……」
誰にも扱えない事で長く放置され、静かに剣としての役目を終えようとしていた魔剣ナインロータスに新たな持ち主が現れたのだ。武器を扱う鍛冶屋としてこれ以上に断る理由が無い。
「で、刃はどうする?すっかり潰れちまって切れ味、つまり剣としての威力は全くねえぞ」
魔剣ナインロータスの刃の部分を良く見ると潰れていた。しかも自然でそうなったのでは無く人為的に刃が潰されていたのだ。コスモがその刃を優しい目で見つめると指で撫でる。
「……いや、このままでいいよ、今のこの魔剣には必要の無いもんだ」
頭に流れ込んで来た歴代の使用者達は倒さなければならない相手が居た。そして相手を倒す為に、魔剣ナインロータスの特性を最大限生かす為に、刃を常に鋭く研いでいた。
だが今は邪神竜が討伐されてから40年、この魔剣ナインロータスを必要とする相手はもうこの世にはいない。コスモがそう判断したのだ。するとドノバンがコスモの身を心配して忠告する。
「わかった……だが、必ず持ち主が不幸になる魔剣だ。気を付けろよコスモ」
「おいおい、今の俺のこの姿を見ろって、幸せに見えるか?恥ずかしさが勝ってるっての」
「ふっ、確かにちげえねえや!一生呪いは発動しねえな!はっはっは!」
コスモが自身の装備している桃色のビキニアーマーを不幸と揶揄すると、ドノバンが同調して大笑いする。すると店の扉から一部始終を見聞きしていたミリットの存在に2人が気付く。
「「はっ!」」
「うぅぅぅぅぅ……」
ミリットの目には涙が溢れていた。自慢の鎧が馬鹿にされているのである、悲しい気持ちになるのも仕方が無い。慌てた2人が必死にビキニアーマーの性能や使い勝手の良さの素晴らしさを語るなどして慰め始める。
漸くミリットが落ち着くと涙を拭いながら、許す条件を突き付ける。
「その魔剣、可愛くないから私が直す!」
である。
元々、長く放置された汚れによって刀身を含め全体的に黒くなっているので、コスモにしたら渡りに船な話なのだが、何せあのミリットである。魔剣なだけに魔改造されそうな事を懸念するが、さすがに先程の様なチ〇チ〇の形にはなるまい……いやそうであって欲しい。
身から出た錆ではあるが、コスモが仕方なくその条件を飲みミリットに魔剣ナインロータスの調整を依頼する。夕方には作業も終わるという事なので鍛冶屋【覇者の剣】を出ると仕事斡旋所へと向かい、いつも受けていた【薬草採取】の依頼で時間を潰す事にした。
右膝も治ってカルラナから近い薬草の群生地までは楽に行ける様になったのだが、今日はやたらと人が多い。なぜならコスモが【薬草採取】の依頼を受けた後に、数人の男の冒険者も同じ依頼を受けて付いて来たからだ。
薬草群生地に到着すると早速、薬草の採取を始めるのだが屈んだコスモを正面、背後から挟み込むように男達が採取してる振りをしてこちら見ている。
(何だこれ、やりずらくて仕方ねえ……)
シノとの巨大赤猪の討伐の件で冒険者達に名が知れ渡り、コスモに興味を持つ者や美貌に惚れ込む者、そういう者達が増えていた。ぶっちゃけるとその目的はただの助平心である。技能【魅力】持ちが抱える宿命とも言えるだろう。
ねっとりとした視線を感じる中、夕方前には採取を終えるとカルラナへと帰路に着く。
コスモが仕事斡旋所に戻って【薬草採取】の精算を済ませると仕事斡旋所を足早に出て行く。しかし、その後の受付窓口には冒険者の行列が出来ていた。普段よりも多い薬草の数が持ち込まれ、受付嬢のシグネが嬉しそうな顔で枚数を数えているが、サラの方は普段より多い理由が分かっていた。
そして何かを察したのか達観した顔で冒険者達の取って来た薬草を受取り見つめていた。
報酬を受け取った後は約束の時間に通りに鍛冶屋【覇者の剣】へと向かう。店の扉を開けると勘定台で店番をしていたミリットが嬉しそうな顔でコスモを待っていた。
「待ってたよコスモ!魔剣なんだけどね、すっごい可愛くなったよ!」
「あ、ああ……」
(魔剣に可愛さは必要ないんだけど……)
心の中でそう呟くが、口に出せば再び無理難題を言って来るのは明白だ。顔を渋くして返事をする。
「いやー本当に愛剣が重くってさ、ここに持って来れないから鍛冶場の奥まで来てくれる?」
「愛剣?」
愛が重いみたいな言い方をするミリットに案内される。奥の鍛冶場に入ると鍛冶仕事をしていたドノバンと目が合うが、なぜ不自然に視線を逸らす。頼むから何か言ってくれ。
すると作業台の上に布が掛けられた魔剣ナインロータスがある。その横にミリットが立つと、本当に嬉しそうな顔をする。コスモが神頼みをするかのようにチ〇チ〇になっていない事を祈る。
「では改めて!戦神ライオネルシリーズ第二弾!愛剣ナインロータス♪ちゃんです!」
ミリットが布を取るとそこには……。
……桃色!圧倒的な桃色!まごう事無き桃色!柄から刀身、切っ先まで全てが桃色だった。
先ほどの竜を殺せる勢いのあった黒い大剣の面影は一切無い。鍔の部分には先ほどのチ〇チ〇ソードと同じハート型の装飾が施されている。まさかの鎧とのお揃いにコスモが思いの丈を大声で放つ。
「……またピンクかよぉおおおおおおおおお!!」
その場で四つん這いになるコスモ。凹むコスモを無視してミリットが嬉しそうに説明する。
「魔剣って印象が悪いから、愛の為に戦う戦神ライオネルと同じピンクにしておいたよ!可愛いでしょ?」
(だからって全部桃色にする奴がいるかっ!)
先程、ドノバンがコスモから視線を逸らした理由が解った。この娘の頭の中身から足先まで戦神ライオネルの成分で構成されていたのだ。恐らくその想いは大陸一と言っても過言では無い。
「ほらほら、愛剣ナインロータスちゃんを握ってみてよ」
「あ、ああ……」
レベル1で邪神竜と出会った様な理不尽な精神的苦痛を耐えると、ゆっくりと立ち上がって魔剣ナインロータスの柄を握る。すると魔剣の心の色が技能の【慈愛】を通して見えて来る。
先程の黒と青の色が薄まり、桃色がほのかに出ていると、その周囲が嬉しい喜びの桃色に包まれていた。魔剣ナインロータスが喜んでいた。
(魔剣ナインロータス……お前もか)
コスモが裏切られた気持ちになるが、魔剣ナインロータスは満更ではない様子だ。今さら元に戻るものでもない。コスモが諦めて桃色になった魔剣ナインロータスを受領すると、おまけで魔剣を背中に掛ける専用の留め具を貰った。
だがその留め具もハート型を模していてる。ミリットは要らない所で本当に芸が細かいのだ。
折れた鉄の剣の代わりとして、魔剣ナインロータスが新しい相棒となったが、これ以上に心強い剣は無い。颯爽と魔剣ナインロータスを背中に掛けると、全身を桃色に包み込んだ立派なビキニアーマーが誕生する。
やりきった達成感で満足顔のミリットに見送られ鍛冶屋【覇者の剣】を後にする。外も日が落ち始め、暗くなって行く。
今日は魔剣に出会うまで大変な1日だった、その疲れをラガーで癒そうとそのまま仕事斡旋所の酒場に向かうのだが、酒場に居た冒険者達がコスモの魔剣ナインロータスを見た瞬間、仕事斡旋所の設立以来の最大の笑い声が起こり、町中にこだました。