アーツ
ブックマークが少しずつ増えてきて嬉しいですね。
ありがとうございます。
うさぎを釣るためのアイテムの購入や討伐クエストを受注して草原へとやってきた。
ゴブリンがいた草原とは逆方向で、あちらは山に面しており、こちらは森に面している立地だ。
適正レベル(レベルは存在しないが)順ならばうさぎの方がゴブリンより低いのでこっちが初心者用フィールドって所かな。
初日は人に溢れていたフィールドだったが、今日は人の数がとても少なくなっているようだ。
初日に初心者フィールドであるここに来なかった理由は2つある。
人が沢山いて狩りの効率が悪いこともあるが、意図せずPKをさせてしまう可能性があったからというのが大きい。
PKが可能なこのゲームでは、パーティ内のプレイヤーへの攻撃は無効化される(フレンドリーファイア無し)のだが、パーティ外のプレイヤーへの攻撃はダメージが通ってしまう。
人に溢れたフィールドで、物理耐久が低い妖精がいたらどうなるか。
人がたくさんいる中で剣や槍を振るうのだ。
人間サイズのプレイヤーには気を払えるだろうが、人間よりはるかに小さい15センチサイズのふわふわ浮くものにも気をつけられるか。
妖精以外のプレイヤーなら仮に当たってしまってもよっぽど体力が減っていない限り一撃で倒すことはないので軽く謝って終わりである。
しかし、物理耐久が特別低い妖精では即死となってしまう。
相手側も意図しない形でPKをしたことになってしまうだろうし、こちらも気がついたら死んでいてデスペナルティを支払う羽目になってしまうだろう。
ベータ時代から妖精(もしくはそれに準ずる超低耐久)は人で溢れかえっているところにに近づかないという暗黙の了解があったくらいだ。
なので、ドロップもさほど美味しくなく、リポップ速度が少し早いだけのゴブリンを初日の狩りに選んだのだった。
今日は人が少ない。なので、モンスターの取り合いが起こらない今、うさぎを引き寄せるアイテムを使っても咎められることはないだろう。
【魔力察知】を発動する。
すると、脳内にもうひとつの視界のようなものが表示される。
この仕様がベータテスト時代には嫌われており、索敵系のスキルをとる人はとても少なかった。
慣れれば独特の感覚が気持ちいいし索敵は便利なのだが、慣れてない人はチグハグな情報を処理しきれずに乗り物酔いのような感じになってしまうのだ。
ちなみに、索敵系のスキルは筋力耐久器用といった大枠ごとにひとつずつ存在している。
索敵系で表示されるのはレーダーのようなもので、モンスターは赤色、プレイヤーは緑色で表示されている。
【魔力察知】で表示されたレーダーを頼りに、プレイヤーがいない方へと吹き飛んでいく。
レーダーの範囲内にプレイヤーがいないところまで移動したところで人参を次々と取り出してフィールドに落としていく。
ところで、うさぎの好物って人参なのだろうか?
暫くするとフィールドに落とした人参につき2匹から3匹ほどが集まってきた。
それをゴブリンを倒していた時と同様に空中からの燃やして倒していく。
【精霊魔法】強いなぁ。
エリミネイトの指輪の補正もかなり強いと思うのだけどMP消費も少ないし火力は高いし汎用性は高いしスキルスロットは一枠だけだし問題らしい問題が見当たらない。
角が生えたレアなうさぎの飛びかかりで空中に浮かんでいるための水球が壊されてひやひやしたりしながらも、うさぎの丸焼きを大量に作っていると日が暮れてきた。
インベントリの整理を挟んでから夜の狼狩りをするとしよう。
◇
冒険者ギルドでうさぎの討伐クエスト(ランク1の依頼である)の報告や狼狩りに必要ないアイテムを売って夜の草原に戻ってきた。
昼間よりは人がいるっぽいが、問題ないくらいの数である。
が、暗い。
ベータテスト時代は夜の闇にも負けない目を持っていたので忘れていたが、本来夜とは暗いものなのである。
火の精霊に明かりをつけてもらうのもいいが、それでは狼たちに警戒されてしまうので昼間に作ったお金でスキルを買うことにした。
移動の時間がかかるが、道を無視して吹き飛べる妖精ならばそこまで時間はかからない。
さっさと行って戻ってくるとしよう。
◇
ぱっと行ってぱっと戻ってきた。
購入したスキルは【魔力視】だ。魔力を見るのではなく魔力で見るスキルである。
【魔力放出】や【魔力察知】と同じで補正は平均的である。
【魔力視】を発動すると、視界は暗いままなのに何故か物の位置や形が分かるようになる。
【魔力視】は鍛えると明るく見えるようになるというからそれも期待しておくとしよう。
【魔力察知】のレーダーで昼間と同様にプレイヤーのいない方へと移動したあと、薬草採取の副産物である雑草を煮詰めた液体をかぶる。
とても草臭いがこれで狼の嗅覚からは逃れられる。
ちなみに、この雑草汁はポーション瓶換算で70本ほど持っている。
うさぎの肉をポイッと投げ捨てて少し待つと、三匹の狼が現れた。
最小単位の群れだ。
出来れば単体の《《はぐれ》》が良かったがそこまで運は良くないらしい。
火を使えば大ダメージを与えられるが明るくなることでこちらの位置がバレてしまう。
風精霊に適当に切り刻んでもらうことにした。
風の刃が狼に襲いかかり、1匹の足を切りつけた。
それにより残る2匹がその場から飛び去って警戒をする。
しかしこちらは臭い薬草汁をかぶって匂いで察知されないし、小さいから視覚察知も難しい。
一方的に攻撃していると、狼が吠えた。
ゴブリンの時と同様に水球がはじけ飛び、浮力を失う。
【魔力放出】で高度を維持すると、狼がこちらへ飛びかかってきた。
水が弾ける音がいけないのか【魔力放出】がいけないのかはわからないが狼相手には一方的にはやりづらそうだ。
魔力放出で吹き飛んで攻撃を回避して火の精霊に燃やしてもらう。
スニーキングミッションは失敗になってしまったので火を使わない理由がなくなったのだ。
獣系は例外もあるが基本的に火が弱点だ。
燃えた狼は地面を転がると体力がなくなり、ドロップアイテムを残してポリゴンの欠片になった。
残りの足を怪我している狼を倒してひと段落。
検証の数が足りていないが、【魔力放出】で高度をとるのは問題がなかった。
水球に浮かぶのはダメだったが、【魔力放出】が有効ならば戦えるだろう。
ということでうさぎの肉をボイボイと投げ捨てていく。
風の精霊に肉の匂いを周囲に散らしてもらって準備は完了だ。
戦い始めるまでは水球は問題なく活用できるので水球に浮かびながら狼たちを待つ。
すると、平均4体の群れが何個も集まってきた。
その中で一体だけ大きい狼がいることに気がつく。
ゴブリンソードマンや角が生えたウサギのようなレアモンスターだろうか。
とりあえずあいつは手強そうなので一番に倒すことにする。
火の精霊にでかい狼を燃やしてもらい、それと同時に風の精霊が風の刃を吹き散らす。
ちょっとファイアーストーム的な絵面になったことを覚えておくとして水球から自発的に抜け出して破裂させる。
すると、攻撃に警戒していた狼たちが一斉に水球に向かって飛びかかった。
1箇所にまとまっている狼たちに先程の火と風の合体魔法のようなものを浴びせる。
もう狼たちの適性レベルも超えているのか、一気に撃破することが出来た。
残っているのは傷だらけのレア狼と水球に反応しなかった数体の狼だけである。
水球の破裂音に反応しなかった狼はレア狼の群れのメンバーだったらしく、レア狼の鳴き声で攻撃をしてくる。
最初にテストとして戦った狼とは違い、しっかりとした連携だった。
意外とジャンプ力が高いのか5メートルか6メートルほど浮かんでいるところまで普通に攻撃が届いている。
この高度までくると【魔力放出】に使うMPが結構な量で、これ以上高度をあげると攻撃はよけられても攻撃手段がなくなって最終的にはMP切れで落下してからの捕食ルートである。
高度を高くしても意味が無いなら普段通りの2メートルラインまで高度を落して戦うことにする。
自分の数倍は体高がある四足歩行の獣が飛びかかってくるというのはかなり怖い。
【魔力放出】による加速で回避しながらもそれでも避けきれない攻撃は【回避術】のアクティブスキルで回避する。
アクティブスキル――アーツと呼ばれるものは、スタミナを消費して使う特殊行動だ。
【回避術】のアーツはスタミナを消費すると三メートルほど前後左右へ移動できる«ステップ»と呼ばれるものだ。
あいだに障害物があろうが、それが壁でない限り無視して移動できる。
人間が三メートル移動するというのもかなりの移動距離で攻撃を回避するには十分だが、15センチサイズの妖精が三メートル移動するというのはもうほとんどの攻撃を回避できると言っても過言ではない移動距離だ。
さらに«ステップ»には出始めのゼロコンマ数秒に無敵時間があるのでそれを上手いこと使うことが出来れば回避ができない物理攻撃があったとしても生き延びることが出来るのだ。
妖精の切り札にして最強の盾である。
余談だが、【回避術】はメジャーなスキルであり、そうなると«ステップ»もメジャーなアーツとなる。
対人戦ではすり抜ける性質を使って前方に«ステップ»し、相手の背中をとるという戦法が多用されていたりする。
もっとも、対人戦になれたプレイヤーはそれに対応できるのでそれだけで勝負がつくほどではないが、なかなか強力なアーツである。
狼の包囲網から«ステップ»で抜け出した直後に火と風の複合魔法を放つ。
離れたところで指示を出していたレア狼以外を撃破し、残るはレア狼1匹となった。
取り巻きの狼と戦っている時間で足の傷が治ったのか普通に立ち上がっている狼を相手に再び戦闘が始まった。
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PN『ルフレ』
種族『妖精』
スキル
【魔力放出】【無属性魔法】【精霊魔法】【錬金術】【精神力回復】【魔力察知】【使役術】【回避術】【魔力視】
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某ラノベのソードスキル的なものはFoEにはありません。
あれはオートとかセミオート操作ですからね。
【剣術】スキルみたいなものはアーツを発動するとスタミナを消費してその攻撃の威力を上げるとかそんな感じです。
レベルが上がるとスタミナ消費が減ったり倍率が高くなったりするのが基本ですが、使えるアーツが増えるスキルもあります。
システムの補正がかからないので武器を扱うのが難しいの初心者は魔法使いになることがが多いです。
その代わり近接職はリアルではモンクタイプな人だったり、別ゲーで武器の扱いを学んだ人だったりします。
VRMMOがありふれている時代設定ですのでそういうのになれている人が多いということで。