決勝トーナメント 7
『第一回トーナメントマッチ! 決勝のカードは二刀流の剣士、《††》と炎の魔法使い、《ルフレ》の試合となります! 正直どちらが勝つか分かりません。第一回にして最高の盛り上がりを見せてくれるでしょう! それでは、カウントダウンを開始します!』
実況のみならず進行も行っているマスコットの中の人――望月さんがカウントダウンを開始した。
「あなたの魔法を無効化する技はとても厄介そうですね。どういうカラクリか興味があるのですが?」
「相手さんに切り札を解説なんてすっかよ。そもそも、分かっているんじゃないか?」
「いえいえ、予測と答えは違いますから。答え合わせ、させて頂けませんか?」
黒華はそういうが、予測なんて出来てねーよ!
間に受けて白状しろー!
「答え合わせは戦いながら行うんだな。ほら、始まるぞ」
よし、開幕の会話時間は握った。
特に意味は無いが相手から探られることは無くなったのでよしだ。
カウントダウンがゼロになると同時に黒華の【黒炎】と【精霊魔法】の火がフィールドを飲み込む。
範囲はとても広く、こっちの背後以外はすべてだ。
中央を基準にして五メートルずつ後に下がっているので、フィールドの六割は焼かれていることになる。
ぶっちゃけ、ノーダメージでこれを対処できるやつっているの?
そう思っていると、三メートルほどの高さがあった炎の塊に一本の空白地帯が生まれた。
正確には、双剣士の通った跡が空白地帯となっていた。
…………。
おいおいおいおいおい。
なにそれ。魔法を全部消滅させるわけでもなく無効化出来るんですかい。
同じスキルから生み出される別の現象って考えるのが一番かな?
一応装備の端が焦げている――というか焼失しているのでダメージは通ってると思うが。
というかそう思いたい。
こちらに向かってくる双剣士に向かって炎を投げつけ、それを躱すためのルートを塞ぐようにも炎を設置する。
しかし、塞ぐのが間に合わずに避けられたり、完全に塞いだとしても双剣士は回避の動作を見せず炎と正面衝突し、一方的に炎が消滅する。
《固定砲台》戦と違って後退すらしない!
どうする? 土で壁でも作ってやるべきか?
「(炎以外での援護は不要です)」
黒華が口の中で呟くように言う。
……どうすればいいんだ?
正面から無条件(?)で魔法を無効化してくるとか聞いてないぞ。
考えながらも炎による攻撃は継続し、黒華はどんどん後ろへ追い詰められていき、コロッセオの端まで後三メートルとなった時に気がつく。
なんかあいつ遅くない?
流石にファイターの速度を相手にしてここまで下がれるなんておかしいぞ。
双剣士のことを黒華の視界越しに見るが、【呪炎】の縄は見えない。
つまり、こちら側から作用しているのではなくあっちが勝手に弱くなってる?
そして、ついに双剣士が炎を回避した。
左に大きく跳んだ双剣士だが、その着地点が黒華の【神通力】に砕かれる。
着地に失敗し、体勢を崩した双剣士に黒炎が激突し、今までとは違う反応を見せる。
霧をかき消すように消えるのではなく、爆砕するように破裂したのだ。
普段の反応とは違うが別の反応だ。
……追い詰めている?
しかし反面広範囲を焼くような魔法は接触範囲が消しゴムを通したかのようにかき消されている。
条件わけがわからないぞ。
完全無効化されていそうな範囲魔法を避け、小玉を投げていると、そのうち何個かが双剣士にあたる。
しかし、決して連続では当たってくれない。
無茶な回避行動で隙を作るのも一度目ではない。
もしかして……連続では壊せないのか?
「(黒華、中に入れるのって可能?)」
「(難しいですが可能です。その間炎は使えなくなりますが)」
「(じゃあ少しずつ減らしていって。その分こっちが増やすから)」
指示通りに黒炎の数が僅かずつ減っていき、減った分を精霊魔法の炎が補填する。
そして、黒炎の数が表面的にはゼロになった今も、双剣士は無茶な回避を続けている。
――今だ!
半ば未来を予想するように放たれた精霊魔法は、連続で炎を受けるのを回避しようと体勢を崩しながら回避した双剣士に突き刺さる。
そして、今までと同じように――しかし今までよりは鈍く破裂した火球の中から黒い縄が伸びる。
その縄は双剣士に絡みつき、その足を縫い止める。
勝った――そう思った矢先、呪炎の縄も、精霊魔法の炎も全てが消滅した。
あー……。ここまで使われなかったことでてっきり使えないのかと思ってたわ。
くそ、やり直しだ。
あっちは体力だけではなくスタミナも減っているはずだ。
MPが使えない以上何かを消費するとすればSPしかないだろう。
反面こっちはMPしか減ってない。
まだ自分のMPを腕輪を見て確認し、黒華のステータスを【識別】による別ウィンドウから確認する。
うん、お互いに六割はある。
焼き直しをするには十分だが、こっちは単なる数字以外に手札がだいぶ剥がれてしまった。
完全な焼き直しはお相手さんが阿呆でなければ不可能だろう。
◇
それからの展開はパッと見同じことを繰り返しているだけだった。
最初の距離以上開いた場所から始まった距離の取り合いだが、スタートラインで有利だったはずにも関わらずあちらの方が有利に運んでいる。
――癖を読まれてる?
自覚しているくせがある訳では無いが、双剣士の回避は的確だ。
故に距離を簡単に詰められている。
回避が的確故に弱体化するであろう魔法の打ち消しの回数は少なく、つまり動きは早いまま。
遅くなってないから回避も簡単と、こちらから見れば絶望的な状態だ。
そして、ついに双剣士の剣が届く所まで追い詰められた。
双剣士の剣が振られ、それと同時に黒華の右腕も横に振られる。
双剣士の剣が伸び、黒炎が黒華の腕の軌道を辿って迸る。
攻撃と同時に右腕を前に出し胴体の防御も行った黒華だが、攻撃は今まで同様無効化され、胴体と比べてダメージ倍率が低い腕への攻撃だったのにも関わらず体力が三割以上削られている。
それだけではない。
双剣士の攻撃は一撃では終わらないのだ。
黒華は炎で牽制することで攻撃の動きを崩し、回避を行うが安全圏まで距離を取り直すことは叶わない。ピッタリと張り付かれてしまっているのだ。
「予想はしていましたが馬鹿げた攻撃力ですね……」
「懐に入ればこっちのもんだ。悪いが、優勝はいただきだ」
「ただで負けるわけにはまいりません。切り札を切らせていただきます」
黒華が袖口から液体呪炎銀を伸ばす。
それを見た双剣士は――
「使われる前に終わらせてやる!」
――炎による牽制を一発まともに受け、大きく体力を減らしながらも黒華に剣を伸ばす。
その剣が黒華の胸に突き刺さる――
その直前に、袖口から背中へ周り、狐の形を作ると思われていた液体呪炎銀が双剣士の胸に突き刺さった。
液体呪炎銀は基本的に物理属性の攻撃だ。
炎を放つことで魔法的な攻撃を可能とするが、今はその炎を纏っていない。
故に、物理方面には並のアタッカーよりも耐久力がある双剣士の体力を削りきれなかったのだ。
液体呪炎銀の攻撃自体にもパワーが足りなかった。
これが槌による殴打ならば衝撃で双剣士を弾き飛ばすことが出来ただろう。
しかし、たった直径数センチの杭では一度地を蹴った双剣士の体を、剣を止めることが出来なかった。
そして、剣が黒華の胸があった場所を貫いた。
うん。貫いた……んだけど、黒華にはダメージ入ってません。
【変化】の解除だ。
150センチの人間から体高100センチほどの狐の状態へ。
残念ながら尻尾の位置も変わっているため今まで隠れ続けていた正真正銘のプレイヤー、《ルフレ》は外に出てしまったが、もう勝負も決まりそうだ。
液体呪炎銀の呪いにより色々な耐性が低下している双剣士に向けて火球を放つ。
目を見開いてこちらを見る双剣士は、剣を突き出した体勢からそのまま崩れ落ちるように倒れることで攻撃を回避した。
なんとも言えない四つん這いのような格好の双剣士に追撃を行うが、命中タイミングに合わせて«ステップ»が使用され、出だしの無敵時間で魔法は無効化され双剣士は数メートル離れた場所へ移動する。
「いくら何でも往生際が悪すぎない? ここは衝撃の真実とともに勝者が決定するところでしょ」
「……まさか【使い魔】だとは思わなかったぞ。……最初から二対一だったってわけか。くそ、現状でここまで強い使い魔がいるなんて考慮できるわけねーだろーが。しかも本物の対戦相手は妖精ときた。小さすぎて切りにくいんだよ。くそ……」
『これは――これは一体どういうことでしようか!? 私、運営サイドの人間なのに特別製のモニターとか持ってないので気が付きませんでしたが、九尾の狐さんは《ルフレ》さんではなかったようです。本物は……妖精? 翅が生えてます! 妖精って翅生えたんですか? もうこの大会わけがわからないことが多すぎます! もっと詳しい人を解説に読んでくださいよー!』
「真の姿が披露されたところで、第2ラウンドだ。よろしく頼むよ」
解説の嘆きとともに沸いた会場の中心でそう呟いた。
もうカス当たりでも魔法を直撃させれば勝ちなのはさっきの接近で双剣士の腕輪を確認したからわかってる。
あとは黒華と二人で一発当てるだけだ。
【変化】
素の姿から変化する時は瞬時に変化できないが、素の姿に戻るのは一瞬。
久しぶりな黒華の素の姿
キュウ○ン的な感じの狐。
体高100センチくらいで足先と尻尾の先、耳の先が白くなってる真っ黒の狐。
金色の瞳をしている
洋服はゲーム的な力によってなんかよくわからないけど消えてる。
今回の戦闘の流れ
《††》は全然近づくことが出来ずにほぼ一方的に主人公組が攻撃してた。
数メートルくらい一歩で詰められそうなスペックを持ってる双剣士さんが、十メートルしかなかった距離を詰められないってどういうことなの……
多分試合開始から妖精降臨まで五分もかかってないくらいだと思う。




