翳りの見えた日常
恭一は、自転車に乗って学校へと向かった。
「はよー」
「…おう」
近所に住む人にあいさつをしながら、漕いでいく。
カァ、と聞こえた声に、電柱をちらりと見る。
沢山の烏が止まっていた。
ふと、恭一は思った。
『どうして、烏以外の鳥を見た事がないんだろう』
だが、すぐに思い直した。
『多分、烏が多いから他の鳥が近寄りにくいんだ』
一人納得しながら、学校へと向かっていく。
それを眺める烏達が一斉に、カァ、と鳴いた。
駐輪場へ着いた。
恭一は自転車を降り、しっかりとロックをかける。
踵を返して駐輪場の出口を見た時、そこに、子供がいる事に気付いた。
純白の髪、濃い桃色…いや、紅い?紅い、目。
淡い色の服を纏っていた。
『アルビノ、かな…?』
恭一が呆然としている間に、子供が恭一に気付いた。
そして、口を開いた。
「……おかしいとおもったことはないの?からすしかいないこのまちのこと。まんげつしかこないよる。」
ぽかん、とした。
この子は、何を言っているのだろう。
そう思っていたら、子供はじぃ、と見上げてきた。
そして、ぽつり、と言葉を漏らした。
「きづくならはやいほうがいいよ」
「…は……?」
気が付くと、子供は既にいなくなっていた。
時計を見ると1分もたっていないのに。
「……?…あ、やばい、日直…」
恭一は先ほど言われた言葉を思い返しつつ、教室へと向かっていった。
その背後、駐輪場の近くの電柱。
フードを被った黒い人影が、かぁ、と鳴きまねをして、去っていった。




