穏やかな日常
よく晴れた空。
今日もいつもの様に烏が飛んでいた。
青年…雀部 恭一はカーテンを開け、ぼんやりと着替えていた。
学校のある日。
憂鬱そうな顔をしながら、着替え終わった恭一は自分の部屋からリビングへと歩いていく。
烏がカァ、と鳴いた。
「あら、今日は早いのね?」
母親がにこにこと優しく微笑んでいる。
「うん…今日は日直だから…」
恭一はあくびをしながら答えると、用意された朝食の前に座った。
こんがり焼けたトーストの上に、半熟の目玉焼きが乗っている。
とてもおいしそうだ。
「いただきます」
「どうぞ」
最初に黄身を潰してしまわない様に、慎重に、白身とトーストを食べる。
とても美味しい。
ちらり、と空いた席を見た。
父親と弟が座るはずの席。
だが、そこへ来るはずの二人は姿を見せない。
みそ汁やトーストがおいしそうに湯気を燻らせているのに。
「…今日も寝坊かな」
恭一がぽつりと呟き
「そうねぇ」
母親がのんびりと返した。
「…行く前にドアノックしておくよ」
「ええ、お願いね」
緩く会話を交わしながら、朝ご飯を食べすすめる。
TVの中で、烏がまた、カァ、と鳴いた。
「御馳走さま」
言いながら、恭一は食器を片付けた。
「ノックお願いね?」
母親の言葉に片手をひらひらさせながら自分の部屋へ戻り、カバンを持った。
のんびりと肩に担いで、部屋のカギを閉め、弟の部屋をトントンと叩く。
「…あんまり寝てると馬鹿になるぞー」
余計な一言を添えながら。
そして、父親のドアもノックする。
何にも言わないで。
「いってきます」
家の中へそう声をかけ、外へ出ていく。
今日も、普通の日が始まる。
烏がたくさんとまる電柱から、カァ、とまた、鳴き声が聞こえたような気がした。
まだ、日常。
そう、まだ。




