裁判の行方②
「道具屋の主人の家の破壊についても大筋認めます。ですが」また言い訳が始まるのかと不安そうな道具屋の主人が賢者の様子を見ていた。
「道具屋の主人の店はかなり古い建物です。爆風といっても、建築基準からいってあの店は満たす強度がありません。建築士に確認もとりました。築100年以上で補強した後がなく柱はかなり腐っているそうです。そこを考え賠償額を低くしてほしいと被告人は言っています。それと、もしよろしければ、和解して前科をつけない配慮があれば、家の建て替えに協力したいとも言っていますがどうしますか。これで弁護を終了します」
賢者は軽く息を吹きながら椅子に座って勇者と握手をした。
「これから論点について意見を述べて下さい」原告側の村長が手を挙げた。
「原告どうぞ」
「はい」返事して村長はゆっくり立った。
「農民男性の畑の件で、訪ねたいのですが?魔物と折半と言われたが、被告が倒して、存在してない魔物からお金が取れるでしょうか」賢者も手を挙げた。
「被告どうぞ」
「はい」賢者はすっと立った。
「その質問ですが、論点が間違いです。私たちは、被告人が荒らしたのは、半分だといっているのです。魔物が荒らしたとこまで被告人は責任が持てません。どの部分が魔物と被告人が荒らした場所か区別がつきますか?だから半分と譲歩しているのです」鋭く賢者は切り返した。
「原告側は意見があるかね」
「いいえ。ありません。他に質問していいですか?」原告側の農民男性は納得していない様子でいた。
「原告どうぞ」
「魔物除けに聖水を撒いていないとさきほど言われましたけど、その調査記録を見してもらっていいですか」賢者は資料を原告団と裁判官に提出した。原告団でしばし資料をチェックしていた。
「すみません。これはどう畑の土を調べたんですか。成分は書かれていますが、その採取方法は書かれていませんので説明してください。もしかしたらたまたま聖水の成分が出なかったのかもしれませんので」
「はいご説明します。土は畑の四隅と畑の周りを無作為に調べました。なぜこの箇所だけ調べたのかは近くの農民に聞いた話から判断しました。話によると畑の周りと四隅に盛り土をして、その上に聖水を撒くそうです。撒き方は全世界の農家共通らしいです。四隅は残量聖水が残りやすいので20年前以上の地質も調べています。資料のとこにも書いています」原告団も確認し村長が口を挿んできた。
「あのすいませんけど。撒き方は共通でもすが、どう撒くかは自由のはず。調べていないとこに聖水があるかもしれません。これでは証拠になりません」勇者が賢者の袖を掴んで囁いた。
「大丈夫か」
「はい。任せてください」賢者は勇者の手の甲を軽くたたいて安心させた。
「分かりました。畑一面を調べます。原告にも手伝っていただき撒いた場所を中心に調べましょう。ただ時間も掛るし、その間農作物も植えられません。それでも聖水を撒いたといいますか」
「ちょっと待ってください」農業男性は少しイラついて村長に突っかかていた。五分ほどで村長は農業男性を説得した。
「承知しました。時間がかかるのはお互いによくありません。聖水問題は撒いたか分からいので、魔物対策は意味がなかったことになります。よって私たちが最初の提示した賠償金で和解しましょう」
「え~と。そうですね~被告と相談させてください」勇者と賢者は話し合い結論を出した。
「聖水を撒いたかどうか分からくなりましたが、実際勇者は魔物が両隣なりの畑を避けて戦うのはどう説明が付きます。農家の人はこれ以外の対策はしていなかったそうです」
「待ってください。魔物が避けて戦う様子を見た人は勇者以外にいましたか」
「少々時間を下さい。」賢者は資料を探した。
「ああ~ありました。魔物と勇者は見たが畑を避けて戦っていたかは・・目撃者は言っていません」賢者は自分の意見を自分で否定してしまいガックときた。
「証拠になりませんね」弁護団は勝ったように喜んだ。
「そりゃ~証拠にならないはあ。なあ」農業男性が道具屋店主に投げかけていた。
「そりゃそうだ。本人しか見てないんじゃ証拠にはならないよ」道具屋店主も顔の前で手を横に違う、違うと振っていた。勇者は切れかけていた。
「静粛に」裁判官が場を静めた。
「おいお前どうにかならないか」
「そうほいほいと知恵は浮かびません。考え中です」賢者は目を瞑った。考えがまとまらず時間が過ぎていった。
「被告側は反論はないのですか」
「はい。いいえ。」時間を引き延ばそうと賢者は必死になっていた。
「え~~と」資料を探しているふりをしていたら、一つの資料に目がいった。
「これだ」
「何がこれだです。早く答えない」裁判官が促す。
「はい。すいません。勇者の証言は無効です。しかし、他の田舎村の農家は被害を受けていません。この事実は消えません。あれだけ原告の畑は荒らされているのに他の農家は被害が出ていないのです。近くの農家すべてが聖水を撒いているのです。この聖水についての資料があります見てください」賢者は原告団と裁判官に渡した。
「資料は田舎村の農家組合が聖水を撒いた日を期日したものです。農家組合は聖水を同じ日に一斉に撒くそうです。田舎村では農家全員が農家組合に入らなければいけまん。聖水を撒いた日に撒かなかったのは原告農家だけです。記録によりますともう二十年も撒いていないそうです。聖水の効果は三十日と冒険家協会が発表しています。これでは効果はありません。農業用の聖水は農家組合に一度卸して組合員に回るようになっています。農業用の聖水は近くの道具屋が配合を請け負っています。そこで原告の道具屋主人に聞きたいのですが。原告農家に個別で聖水を売りましたか」原告団は事実を突き付けられて混乱していた。混乱を静めるため原告団内で打ち合わせが始まった。二分ほどして農民男性と道具屋主人が怒鳴り声を発した。怒鳴り声は激しさを増し、村長が止めに入るが突き飛ばされてしまった。
「やめなさい」裁判官が一括するが止めない。
「やめないと。訴えを却下します」原告二人は静かになった。
「まったく。原告側は納得したのですか」
村長は自分の椅子を農民男性と道具屋主人の間に入れ、軽く二人を説得していた。
「すみません。先ほどの件は納得しましたので、少々原告人が疲れていますので、休憩をお願いします」
「それでは、一時休廷とします。一時間後に再開します」裁判官は出て行った。原告団も兵士が付き添いドアを出て行った。
「やりましたね。勇者」
「やったな。やりやがったな」賢者の頭を脇に抱え頭を叩いた。
「痛いです。やめてください」ハニカミながら、賢者は抵抗した。
「こら。やめないか。早く出なさい」看守が来て法廷の外に追い出された。二人は看守の案内で控室で待つことになった。控室は細長い机に椅子が四つ並んでいるだけだった。机の上には食事のメニュー表らしきものが一枚あった。
「そうだ。何か食べるかい。メニューから選らんで、もらえば届くけど。どうするかね」監守が聞いてきた。
「では、あとでお願いします。勇者も食べますか」
「そうする」
「五分後に看守さんの所に言いに行きますので、どこに行けばいいでしょうか」
「いいです。トイレに行ってきますので戻ってきたらお願いします」
「わかりました」賢者は返事をした。看守は出て行った。二人はメニューを眺めて決めていた。
「勇者。何にするか決めました。私は、サンドイッチにコーヒーです」
「そうだな俺はミートスパゲッティとコーヒーにする」二人は、裁判が順調に言っているので、余裕が出て来ていた。そのあとすぐに看守が戻ってきた。
「はい。これとこれにコーヒー二つでお願いします」
「了解しました。あとで持ってきます」また看守が部屋を出て行った。二人は裁判の展開について話しあった。
「時間です。法廷にどうぞ」控室のドアが開いた。
「よし。決着をつけに行こう」勇者が拳を突き上げた。
「そうしましょう」勇者と賢者は、魔物を退治しに行くような凛々しい顔で法廷に向かった。
法廷のドアを看守が開けると同じタイミングで、原告団がドアを開けて入ってきた。原告団と二人は目線があった。原告団も覚悟を決めた顔している様子が窺えた。お互いにゆっくり席に着き開廷するのを待った。
「落ち着いていますね。原告団」賢者は小声で勇者に耳打したが反応がない。勇者は目を閉じていた。賢者は勇者が集中しているのを察知して話すのを止めて、開廷を待った。
「開廷!」動き出した。裁判官によって再開された。
「原告側は、休廷前の質問に答えなさい?」
「はい」村長は立った。
「道具屋主人は、農民男性に聖水を売ったことはないそうです」原告二人は落ち着いて聞いていた。
「はい」賢者が手を挙げた。
「被告側、どうぞ」
「今度は農民男性に質問です。あなたは組合と道具屋以外で聖水を買って畑に撒いていましたか」
「いいえ。農民男性は買っていません」間髪入れずに村長は答えた。原告団も休廷中にかなり相談していると賢者は感じた。
「了解しました。買ってない。それじゃ聖水は撒けません。ないんですから。もし誰かに借りて撒いたんなら別ですけど。借りてますか」
「借りてません」原告団は魚の骨が喉の奥に刺さったような賢者の粘っこさに嫌気がしていた。
「そうですか。ありがとうございます」賢者は軽く会釈した。
「早く。結論をいいなさい」裁判官もイラついていた。
「はい。原告は聖水を持っていなかったのですから、畑に撒けるはずがないのです。土の成分の時採取する場所で争いましたが、聖水がない以上意味がありません。よって被告側は当初の要求を提案します」
「原告側。どうぞ」
「提案を受け入れます」原告団は仕方ないと言わんばかりの顔をしていた。勇者と賢者は一つの難関をクリアした。




