↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

651/651

エピローグ

 3年前に放送したアニメ「天破のグラディオス」の続編となる「劇場版 天破のグラディオス《エメラルド・キャニオン》」は、大作と言えた。


 時間にして、多分2時間以上はあったと思う。


 主人公はソータが続投。さらに新キャラクターの登場と活躍。俺の心は踊りっ放しだった。


 高校の友人たちとともに足を運び、鑑賞後の充足感、そして終わってしまったという哀愁に、情緒がグチャグチャになって、まともに立ち上がれなかった。


「俺、また絶対に見に来る」


「はは。本当に衛道(えいどう)は、このアニメ好きだな」


 立ち上がれない俺を見て、友人は朗らかに笑う。


 俺が「天破のグラディオス」にのめりこんだのは、兄の影響だった。4つ歳が上の兄が、当時サブスクで配信されていたこのアニメを見ていた。俺も何気なく一緒に見ていたのだが、見終わってからはなんとも思わなかったものの、去年改めて見返すと、とんでもないスケールのアニメだったと気付かされた。


 このアニメを知ったのは確かに3年前だけど、最初に見たのは第23話だったもんな。終盤から見たし、どういう話しだったのか理解できないわけだ。ただ映像がとんでもなく綺麗で、戦闘シーンが格好良かったという印象だった。


 第3弾のティザーPVで劇場版の公開日が発表され、それを記念し動画サイトで再配信されたので、つい一気に見てしまったのだ。


 知れば知るほど奥深いストーリーに、俺は心揺さぶられた。考察勢のまとめも感慨深く、特に掟破りのワープ封じなんて現実離れしているけど、実現したらとんでもない戦略になると興奮した。


 俺は元々機械工学に興味があり、将来は独自開発したロボットを作りたいという野望があった。数あるロボットアニメにのめり込み、そのなかで「天破のグラディオス」を見て、どちらかといえば機械工学というよりもストーリーに感動し「もし俺がそこにいれば、ガリウスをチューンしてやりたい」という願望を持った。


 まだ高校1年生ではあるけど、商業高校に入学し、機械工学の見聞をより深め、知識を高めていくなかで、このアニメは俺のモチベーションそのものになった。


 そして待ちに待った劇場版。公開初日に見に行った。素晴らしいストーリーであることに違いない。犠牲の果てに得た成果。ソータの高次元的な成長。特にイレイザーの後継機が一番良い。さらに俺は、新キャラクターの少女に心奪われた。多分、恋とも言える。絶対に叶わない、儚い恋、あるいは妄想。


 だとしても感動した。


 今月の小遣いをすべて注ぎ込もうが絶対に見る。3日置きに見る。ライラの妹的存在が素晴らしい。レイレに魅了されてしまった。


「ああ………神様、ありがとう………」


 俺はなんだか眠くなって、瞳を閉じた。トイレから戻った友人が起こしてくれるだろう。たった数分の仮眠を取り、あとで軽食をしながら独自の考察を練るのが楽しみだ………






「エ(・)ー(・)ド(・)。起きてください。早急に起きなければ、私はあなたの眉間にて摩擦による発火実験を行います」


「え………この声………甘みがあって、それでいて演技力があって、あえて抑揚を抑えていて………レイレの声優を担当した、加賀由里香さん………?」


「なにをほざいてやがるんですか? まだ寝ぼけているなら、鼻の穴にマスタードを注入して踊り狂わせますよ」


「え………えっ!?」


 いつしか深く眠っていたようだ。映画館の座り心地のいいシートの上で寝入ってしまい、それを友人に起こされる───かと思いきや、惰眠を打ち破ったのは少女の声だった。


 なにもかもがおかしい。だって俺、女友達なんていないし。映画に連れて来てもいないし。声をかけてくれる仲まで深めた女子は存在しないはずだ。


 それでいて、この女、今なんつった?


 エ(・)ー(・)ド(・)だと?


 なんだそりゃ。俺は衛道(えいどう)だっての。堅苦しい名前だけど親からの贈り物だ。彼女のそれは、愛称のつもりなのか?


 目を開く。明らかに映画館ではない。それに空気もなにか変だ。見る限りすべてがおかしい。


 だってここ、俺がさっきまでいた場所じゃないんだもん。


 いったいなにが起きた? ここ、どこ?


「え、え?」


「ハァ。寝惚けているんですか? エード。今日はグ(・)ラ(・)デ(・)ィ(・)オ(・)ス(・)が寄港するから、補充要員として乗るんだって、あんなにはしゃいでいたじゃないですか。ああ、さては楽しみすぎて夜眠れなかったんですね? 相変わらずエードはおバカさんです」


「そんなバカにすんなよレイレ………んえっ? レイレ!?」


「はい。レイレです」


 ここがどこかとか、俺が映画館にいたこととか、一気にどうでもよくなった。


 だって目の前に「劇場版天破のグラディオス エメラルド・キャニオン」で登場する謎の少女、レイレがいたんだもんな。


 ちまっとした身長。少々吊り目。感情をあまり表に出さない抑揚のない声。独特の口調。銀の髪。前作に登場したあの少女に似た容姿だから関係があると思っていたら、かなり関係があったので驚いた。それでいて賢いし。あの子のアップデートバージョンという印象。でも胸は少し薄い。本人はちょっとだけ気にしている。


 それがレイレ。エメラルド・キャニオンのキーキャラクター。


 そのレイレがズイッと顔を寄せる。胸が弾む。興奮してた。甘い香りがする。異性独特の匂い。なんていう旨味成分?


「ここ………もしかして………ペンタリブル?」


「酷く寝ぼけた影響で、あなたの出身地まで記憶から消去しましたか? ここはペンタリブルで、あなたは軍学校を出て、正式に軍人となるはずでしょう。とはいえ、パイロットとして配属される私とは違って整備士ですけどね。同期の顔を見て混乱するとは、なんて嘆かわしいのでしょう」


「整備士………俺が?」


「辞令があったでしょう? 端末に送られたそれを見て踊り狂っていたというのに。ペンタリブル支部じゃなくて、いきなりグラディオスの補充要員になったって。それとも嬉しさのあまり、ついに頭がおバカさんになりましたか? おウマさんの方が賢そうですね」


 どういうことだ?


 こんな描写、俺は知らない。


 劇場版では、確かにペンタリブルから始まって………グラディオスに補充要員が到着するのだ。


 ミチザネ隊はたった3人で、そこにレイレ含め4人がパイロットとして着任する。使う機体はガリウスH。地球のとある支部で、ケイスマンという無印の序盤に名前だけ登場する博士的なキャラクターの息子が開発したんだっけ。


 劇場版は無印の3年後。当時16歳だったソータも18か19歳になっている。身長がかなり伸びていた。相棒のアイリとは距離が縮まったものの、まだ会話にぎこちなさを感じる程度。


 では俺は?


 確か、整備士も何人か補充されたんだっけ。じゃあ俺は、もしかして………NPCみたいなポジションとか?


 マジかよ。まだこれが現実として受け入れられていないけどさ。多分、夢なんだろうけどさ。だからって………NPCはないだろ? せめてネームドキャラ………例えばレイレとグッと距離を縮める、ダスティンというイケメンで長身で、ソータには及ばないけど実力のあるパイロットがよかったのに。


「ただでさえも操縦技術試験の不良で、パイロット科から整備科に送られて、私たちよりひとつ歳が上なのに大差が付いているんですから。グラディオスに補充要員として送られるのは、単なる厄介払いだと思いますけどね。でもあなたは諦めの悪さだけが取り柄なんですから。………私も、そういうあなたからなぜか目が離せなかった。………さて、そろそろ行きますよ。グラディオスも来る頃です。昼寝なんてする余裕がどこから来るかは不明ですが、エードにとってはまたとないチャンスにして、もう後がない背水の陣。ものにしなければ、エードは今度こそクビでしょうね」


 うわっ………レイレ、可愛い。発言には棘が満載だけど。


 なんでかは知らないけど、こいつ俺を見てモジモジしてる。すげぇ可愛い。ていうか、俺レイレと先輩と後輩の関係なのか。呼び捨てにされるのは意味不明だけど。レイレって俺の後輩ってことでいいんだよな? 俺、パイロット科だったのに整備科に送られたのか。それはそれで野望が叶うかもしれないけど。


 そんなこんなで、俺はレイレに手を引かれ、広場から港へと移動した。


 港には連合軍の関係者が揃っていて、時間ギリギリの到着で教官から目くじらを立てられた。


 精一杯謝罪して───いや夢なのに、なんで全力で頭を下げているのかは不明なんだけど、なんとか許してもらえた。


 揃っていたのは俺とレイレのほかに10人ほど。パイロットは知ってるけど、整備士は知らない。


 つまりあれか?



 俺は作中で名前のない、エンディングで見たスタッフロールにあった、整備士Aみたいなポジションだと?



 滅入るわぁ。なんだそりゃ。






 翌日のこと。


 なんとなんと、俺は夢の世界にいたわけではありませんでしたとさ!!


 だって普通に寝て起きてるし。


 飯だって食ってるし、時間の流れも夢にしては妙にリアル。


 確信したね。これは夢ではない。俺は本当に「天破のグラディオス」の世界に来てしまったのだと!


 原因は不明。割り当てられた4人部屋のベッドのひとつで、起床してから随分と悩んだものだ。俺、元に戻れないって。


 これが漫画やライトノベルの世界で言う、異世界転生って奴なのかと。


 けれど不思議と後悔はしなかった。人生でここまでハマったアニメはなかった。その世界に転生したのだ。俺の野望がついに叶えられる時が来たのだ。


 そりゃあ、両親や兄貴や友人に会えないのは寂しい。人生を最初からスタートさせたようなものだ。


 けど俺には、原作と劇場版の知識がある。


 それならきっと、なにか変えられるはず。俺にしかできないことだって、あるはずだ。そこに意味を見出すことこそ、異世界転生の理由になる。


 つまり、とにかく嬉しかった。


 夢にまで見たアニメの世界に転生したのだ。こんなに興奮することはない。


 食堂へ向かい、出会したレイレと朝食を食べる。レイレはパイロットとして先んじて先輩たちと交流したらしい。羨ましい。俺なんてミーティングルームでオリエンテーションをしたくらいだ。あとは勉強会みたいな。チュートリアルを1日かけてこなしたみたいな。


 けどその鬱憤も昨日で終わりだ。俺はついに整備士として配属される。初めてハンガーへの入室が許可される。引率として現れたのは、前作の前半で登場してから存在を忘れられたイリスという元学徒兵だった。隊列を組まされて、大勢が通路を歩く。


「エード。その………頑張ってくださいね?」


 ハンガーには新人のパイロットたちがいた。そのなかにレイレがいて、周囲とそれとなく会話している。前を通過すると、俺に気付いて声をかけてくれた。なんていい子なんだろう。


「おうよ。お前が乗る機体、カリッカリにチューンしてやるからな!」


「………変なひと」


 ああ………レイレが今日もかわええ。


 クスクスと笑う時も、あどけなさを感じる。普段はキリッとしていて、近寄り難い印象が抱かれやすい。無印で言えば、シェリーに似てるかな。でもレイレは、俺と接する時だけは素の性格が現れているかのようだった。劇場版でもこんな顔はしなかった。俺、もしかしてレイレに好かれてる?


 前世ではこんな経験がなかったから、余計に嬉しくなる。レイレに声をかけられるだけで昇天しそうになるとか、俺って単純な男なのだなと再確認したが、それはどうでもいい。今日から毎日レイレと会話できるなら文句はない。好きになった新しいキャラクターたちはまだいる。レイレだけでなく、満遍なく声をかけて親交を深めたい。俺だけの絆を作ってみたい。


 そのために整備士として頑張ろう。とイリス先導の隊列のなかで、視線を横にスライドさせながら気合を入れて───


「………は?」


 ───足を止めてしまった。そのせいで隊列が途中で途切れて、俺の背中に続々と後続が衝突して抗議の声を上げる。が、その声は俺に届くことはなかった。


 視線を正面に戻す途中で、俺にとっては超(・)重(・)要(・)な(・)異(・)物(・)を目の当たりにしてしまったからだ。


 意味不明だった。なぜ、あんな異物がここにあるのだと。本来ならグラディオスに存在するはずがないのだ。


 取り分け、グラディオスは俺の理想郷と言っても過言ではない。原作から劇場版まで一貫して心がときめかない描写はなかった。それが実際に、本物として目の前に広がる。興奮しないはずがない。幼い子供が初めてテーマパークを訪れた瞬間さながら、俺も童心に帰ってしまう。


 劇場版の最初のハンガーの映像では、主人公として続投するソータのイレイザー、関係が少しだけ回復するアイリの八号機、隊長のシドウの七号機の他に、ロールアウトしたばかりのガリウスHが10機ほどブースを埋めていた。あれは感動した。


 しかし現実は異なる。異物がブースを埋めていた。


「な、なな、なんっ………なんで、この機体………うそ………え、いや………嘘だろ!?」


 視線をさらに横にスライドする。異物の近くにいたパイロットたち。


 ありえない。


 存在するだけではない。生きてもいる。


 なぜ? なぜ………最終回で死ぬはずのアレンたちがいるんだ!?


 キルカ、ナリヤ、マイアは第26話の精神的な空間に意識を囚われて、次々と殺された。爆発した機体とともにパイロットも粉々になった。


 無言で見つめるしかなかった。死んだはずのキャラクターたちが生きている、目を疑うような光景に。


 いや………異変はそれだけではない。彼女たちの後ろ。すっげぇ妙だった。


 形状が異なる四号機がいた。ガリウスGとしてなら面影を多く残している。これは多分、関節が多くなっている。人間の骨格を再現したものではない。視線で関節の動きを追う。すぐに結論が出た。可変機だ。


 しかし、なんでこんなところに無印の第1クール終盤で爆発するはずの、コウの四号機があるんだ?


 その奥にある十号機、十一号機も同じ可変機になっている。十三号機はヘッジホッグジャケットを装備。


 わけがわからない。いったい、なにがあったっていうんだ?


 視線だけを右往左往させて、背後にいる同僚たちから叩かれても呆然としていたら、目の前にとても小柄な男が現れた。


「なにをしているんですか? 体調が悪いというのなら、遠慮なく申告してくださって構いませんよ? 僕は軍学校出身ではなかったので、最初はとても緊張する感覚をよく知っています。無理強いをするつもりもありません」


「え………うそだ………なんで………い、いき………」


「いき?」


「あ、ぁあ! す、すみません! 失礼しましたぁあああああ!」


 俺は多分、とても悪目立ちしてたと思う。


 なぜなら、俺の前に、あのクスド・スクドがいたからだ。意味不明だよな。クスドって第2クールでアークに撃ち殺されるのに。死人が至って普通に立っていて、俺に注意を促すことそのものが異常だった。それなのに周囲は、まるでクスドが、いやアレンたちがそこにいることが普通みたいに認識している。


 おかしい。


 なにもかもがおかしい。それとも俺だけがおかしくなったのか?


 俺の記憶が、昨日見た映画が全部妄想だったのか? 前作の記憶も?


 グラディオスのパイロットは13人けど10人死んだ。他にもクスドやアークも死んだ。


 それなのにクスドやアレンやキルカ、ナリヤ、マイアがいた。おかしいだろ? も、もう笑うしかねぇよ。なんだよこの都合の良すぎる展開は。え? これから劇場版のストーリーに突入するんだよな? 


 試しに、一度振り返ってみる。


 で、すっげぇビビった。振り返った先、つまりすぐ背後にクスドがいた。追いつかれた。絶対に怪しまれている。


「いっ………な、なんでしょう?」


「失礼。少し思うことがあるので。こちらに来てもらえますか?」


「は? ぅえ? ちょ………」


 俺は有無も言わせてもらえず、クスドに腕を掴まれて連れ出される。


 カイドウに声をかけてハンガーを出た。周囲は不審がっている。レイレは不思議そうな目をしていた。


 絶対にポジティブなイメージを持たれていない。いくらなんでも挙動不審だったものな。


 なんとかして挽回しなければ。グラディオスはまだペンタリブルを出港していない。最悪、連れ出された先で行われる聴取の結果次第では降ろされる可能性だってある。


 俺は昔から集団行動には慣れていたけど、いつもドジばかりするから煙たがられていた。自覚はある。異世界転生した俺はエードという整備士になっていたが、ほぼNPCのポジション。前世の記憶持ちのせいで、それが影響してしまっては短所が出て足枷になってしまうばかりか、ここで人生終了という可能性もあり得る。


「あ、あの………クスドさんは………なんでハンガーに?」


「副艦長として仕事をしていました。補充要員の皆さんの顔と名前を覚え、長所と短所を知る。メリットとデメリット、どちらも知って初めて適材適所に振り分けられる。全部飲み込んだ上で采配し、犠牲を無くす。………僕の恩(・)人(・)の教えです。今、僕がここにいるのは、そのひとのお陰です。でも実は、もしかしたらってこともあったので、補充要員の方たちを分析してたんですよ。まさか、すぐにヒットするとは思いませんでしたが。ああ、そこまで不安になさらないでください。エードさん。あなたにはこれから、ちょっとした試験を受けてもらいます。合否次第で艦を降ろすとは言いませんので。そんな顔をなさらずとも大丈夫ですよ」


 クスドは前作で「クズ」の烙印を押されたのに、今俺の腕を引いている彼は、あの時のクスドとはまるで別人だった。身長はほぼ変わっていないが、確かに成長している。生きているから、ソータと同じ18………いや19歳くらいか?


 ニコリと笑うクスドに進退のことを聞かされると安心するが、試験と聞いて完全なリラックスはできない。不合格になっても「お前もう船降りろ」と言われないのが救いではあるが、不安は尽きない。


 で、連れて行かれた先はミーティングルームで、座らされた俺は、クスドから膨大な量のデータを受信した。「明日までに熟読しておいてくださいね。感想は明日のこの時間に聞きますので。お仕事は免除します」だってさ。可愛い笑顔をしているくせにえげつないことを言う。


 なんだこの量は。と目を疑う。びっしりと文字や写真図が添付された資料が1000ページもある。24時間与えられたからと言って、これを処理せよとか無茶だろ。資料整理どころか資料の熟読が仕事とか、どんな窓際族だよと絶望する。


 で、24時間後。俺はまた絶望した。


 自室で資料を読み終えた俺は、クスドにまたもや連行された。けど場所はミーティングルームではなかった。なぜか艦長室だった。その時点で俺の心臓は破裂するかと思うくらい動悸を激しくさせる。


 扉をノックするクスドは、許可を得て俺を連れ込んだ。逃げられなかった。


「きみがエードか。かけたまえ」


「は………ハッ。失礼します!」


「うむ」


 そこにいたのはグラディオスの重鎮たちだった。


 え、なんで? と目を丸くする俺に、着席を促すクランド。渋みに磨きがかかっている。さらにかっこよくなった印象。


「さて。これで全員のようだな。早速だが………クスドは先日、きみにグラディオスが所有する重要情報を与えたな。それこそトップシークレット級のものだ。きみはそれを見て、どう思った?」


「機密情報!? そ、そんなっ………え、えっ? なぜそんなものを………あ、いやそうじゃなくて。あれ、本当にトップシークレットなんですか? かつてこの艦にいた13人のパイロットの情報と………3年前の戦争後、半分が異動したってのは驚きましたけど。ハーモンとハナがコーネリアって将軍の艦隊に異動したってありましたけど、いきなりそんな人物の名前を出されてもなぁ」


「ふむ。コーネリア少将を知らぬと?」


「あ、あっ。いえ。存じております。ただ少将ゆえ、私などそうそうお目にかかれない人物ですし、未だ雲の上の存在というか………あ、はは。ここは宇宙だから雲なんて無いんですけど」


 まずいな。ボロが出かけた。こういう尋問においては慣れているのだろう。クランドは俺の主張や、そのあとの誤魔化し方を見ても眉ひとつ動かさなかった。


「では、三(・)賢(・)者(・)についてはどう思う?」


「どうって………原罪と、融和と、創造………でしたっけ。そこまで印象にないと言いますか」


 そう。印象にない。俺が前作のどこかで見落とした要素かもしれない。少なくとも劇場版にはそんなワードを耳にすることはなかったし。


 右腕に装着する端末に送られた膨大な量のデータを見るのにも時間がかかったが、これでもひとつひとつ丁寧にチェックした。記憶できるだけしている。俺にとっては復習にもなるし、なにより俺の知らない情報が多すぎた。あと事実が変わりすぎている。死んでいるキャラクターが生きているのがその例だ。


 すると出るわ出るわ、俺の知らなかった情報が。


 結果として、閲覧許可を得たアーカイブも参照したら、俺の知っている世界で死ぬはずだった13人は全員生きていた。頭を抱えたね。いったい、なにがどうなっているのだと。


 驚いたし、なにより感動した。二度と会えないと思っていたキャラクターに、会えるかもしれないという期待の方が強い。


「ふむ。なるほど。驚きを隠しているということか」


「え、えっと………なんのことでしょうか」


「とぼけなくともいい。クスド副艦長は、レイシアから心理学を学んでいてな。今ではカウンセラーというよりも、メンタリストと言うべきかな。実力を上げたらしい。そのクスドの診断だ。エード。きみは転(・)生(・)者(・)だな?」


「メンタリスト………そりゃすごい。あ、転生者ね。そうです俺はてんせい………はぁあっ!?」


 俺は思わず叫んでしまった。


 だってそうだろ? あのクランドだぞ? 厳格にして荘厳。差別的発言も辞さず、子供を守ろうと奮闘したが頼らざるをえない状況と己の弱さを憎んだ、最初こそヘイトを集めたが終盤ではベストオブ艦長の称号を与えられた人格者だ。


 俺の目と耳は腐ったのか?


 そんなクランドが今、茶目っ気が効いた笑みを浮かべ、俺の正体を指(・)摘(・)しやがった。


 意味がわからない。


 え? ここ異世界だよな? なんで異世界の住人が、別の世界から来た人間を正確に言い当てられるんだ? もしかして、この世界の住人たちはメンタリストになるとデフォルトで言い当てられるような特殊能力でも授かるのか?


「まぁ落ち着け。確かに、きみの立場からすれば驚愕を禁じ得ないことは承知している。自分だけしか知らない事実だものな。しかしな、我々は………前(・)例(・)を知っている。3人ほどな」


「さんっ………ま、まさか三賢者って!」


「そうだ。我々をより良き未来へと導いた立役者。私はそのうちのふたりに、絶大な信頼を寄せている。………よし。きみが転生者とわかれば話は早い。明日、ペンタリブルを出港する。そして航路上にいるアスティオールとアリスランドと合流する。エード、きみのことは賢者たちに任せる。判断と指針を教えてもらうといい」







 4日が経過した。ペンタリブルを出港したグラディオスは、本当にアスティオールが待つポイントに向かった。


 その間、俺はクスドに色々と教えてもらった。


 3年前の戦いを。そのなかにいたひとりの少年───A先輩とやらを。俺はその武勇と献身に、身震いせずにはいられなかった。A先輩とやらこそ、ファンの鑑だと思った。


 奇しくも軍学校では、俺も後輩たちに「エー先輩」と呼ばれていたと述べたら、目を丸くしていた。既視感があったらしい。でも容姿や性格は違うとも言われた。


 パイロットたちのことについても教えてもらった。


 ソータ、アイリはカップルとなっていた。今もグラディオスにいる。A先輩が特に注力していたらしく、第1クール終盤にはすでに交際していたらしい。いったいどんな魔法を使えば、あんなギクシャクしていた仲を取り持てたのかとても気になる。でも凄まじい技術を惜しみなく使ったことだけはわかった。


 ハーモンとハナは交際しているらしい。これには驚いた。コーネリア少将というハーモンの実姉の艦隊にて修行という名目で世話になっているとか。


 ヒナ、シェリー、ユリン、コウはアスティオールに異動したらしい。「アスティオールの奇跡」というスピンオフ作品から派生した三番艦なのに、こんなところで登場するとは思いもしなかった。いや劇場版にもチラッと見えたような気がするけど。死亡したはずのキャラクターたちは、賢者の恋人として、ふたりの賢者がいる艦の防人となったらしい。


 クスド、アレン、キルカ、ナリヤ、マイア、シドウはグラディオスにいる。ミチザネ隊として。シドウはレイシアと結婚間近とか。劇場版ではまったく触れなかったけど。A先輩とやらの梃入れのお陰とか。


 アークはアリスランドに出向しているらしい。ソータと仲直りして、双子の兄弟として認知しているだけでなく、なんと所属はグラディオスだとか。これもA先輩とやらの功績というから驚いた。


 みんなA先輩とやらが大好きらしい。


 とんでもない奴なのだなとわかる。クスドを見れば。A先輩を語るクスドは、とても嬉しそうにしていた。


「見えたよ。あれがアスティオールだ。原罪の賢者が魔改造したせいで巨大化したのだけど。エードはアスティオールを知っているんだよね?」


「あ、はい。まぁ………スピンオフで」


「スピンオフ………シーナもそんなこと言ってたな」


「シーナ?」


「融和の賢者のことだよ。すでにエードのことは伝えてある。さぁ、そろそろ降りる準備だ。どうやらアリスランドもいるらしい。………っと、あれはコーネリア少将の艦かな? エー先輩に会いに来たのか」


 クスドは俺を導いて、アスティオールへ乗艦作業に移る。その補佐をするのが、


「レイレ?」


「相変わらずアホみたいな顔してますね。エード」


「なにして………お前もアスティオールに行くのか?」


「ええ。アホなエードが生身で宇宙に放り出されないか心配なので」


「おい。流石にそんなことしねぇよ。アホとか言ってんじゃねぇ」


「冗談です。でもエードの補佐をするのは半分本当です。もう半分は、お(・)姉(・)さ(・)ま(・)に会いに行くためですけどね」


「お、お姉さま?」


 レイレは満面の笑みを浮かべる。まさに天使。これで彼女がアンノウンがさらに送り出したスパイだっていうんだから、驚きだよな。ライラみたくなってほしくなかった。現実は………ちょっと違ったけど。あれは泣いた。敵と味方に撃たれてしまうのだ。人間を庇って。俺は異世界転生した時から、レイレを絶対に守りたかった。


 レイレが操縦する小型艇でアスティオールに移る。クランドとカイドウ、レイシアも乗っていた。あとはガリウスGも。同窓会だという。再会するのは半年ぶりだとか。


 巨大すぎるハンガーで一堂に会する面々。俺にとっては信じられないことばかりだった。


 このなかにいる大半が死ぬのに、まさか生きてここにいるなんて。


 談笑や挨拶が続くなか、ふと視線を感じて顔を上げ───


「おう。こいつが4人目の転生者だって?」


 一際大きな声がした。ハーモンだった。俺を見下ろし、ガシガシと頭を撫でてくる。


「なーんか、パッとしねぇツラしてんなぁ」


「新人をいじめるのもその辺にしておけ。エー先輩もそうだっただろうが」


「それもそうか。んははははは!」


「ククク」


 驚くことばかりだ。あの犬猿の仲だったハーモンとコウが、仲良くしている。大人になっているのも驚きだったけど。


「エード。クスドから地図もらったんでしょ? もう行くといいよ。俺たちはあとから行くから」


「うっ………わ、わかり、ました」


「緊張してんの? 大丈夫だよ。エー先輩はとっても優しいひとだ。俺の、俺たちの一番の恩人。俺の家族が増えたのも、あのひとのお陰だ。だからエードもきっと気にいると思う。さぁ、行っておいで」


 大人になったソータに話しかけられた。身長伸びすぎ………イケメンになった。その隣に大人びて、顔に傷もないし右手もあるアイリが手を振り、ソータと瓜二つのアークも微笑を湛えていた。


 主人公たちに声をかけられただけで心臓が高鳴る。なんかいい匂いもしたし。


「い、行ってきます」


 全員から送り出される。


 アスティオールは全長が500メートルあるだけ、通路を進むのだって時間がかかる。端末のルートガイドに従って進むと、数分後にやっと目的地にたどり着き───


「はぅあぁあっ!?」


 変な声が、出た。


「あ、来た!」


「お姉さま!」


「レイレだぁ!」


 まさかあの少女までいるとは思ってもいなかった。クスドは教えてくれなかったし、アーカイブにも載っていなかった。


 そしてレイレに尾行されているとも知らなかった。背後から抜けられて、レイレは───ライラの胸に飛び込んだ。


「お久しぶりです。お姉さま」


「久しぶりだね、レイレ。そっちの子が新しいてんせーしゃ?」


「そうなります。シーナお姉さまはなかですか?」


「うん。いるよ。さ、入って。エード。みんな待ってるよ」


 作中でもレイレはライラの妹だと発言していた。アンノウンに血縁などないし、ライラシリーズとして生産された少女だったのだろう。


 ライラに手を引かれる。アンノウンの少女であるため、外見に変化はない。口調だけは前作より人間らしくなっていた。子供から大人に成長したような。でもこうして生きているだけでも価値がある。俺は感動して泣きそうになった。


「エード。ひとつ忠告します。お姉さまが美しいからって、懸想や欲情でもしたら………本当に生身で宇宙に放り出しますからね?」


 まずい。レイレに面倒くさい勘違いをされた。


「してねぇよ。ただ、ライラが生きててよかったって。………これもA先輩とやらのお陰なのか?」


「ならいいんです。えっと、そうですね。ライラお姉さまが受ける痛みと殺意を請け負ったとか。………あなたは私だけを見ていればいいんです」


 なんか、最後ら辺は小声だったのでうまく聞き取れなかった。でもレイレは聞き返されても答えない、頑固な性格をしているので、聞くのはやめておいた。機嫌を損なわれてもな。


 ライラの指紋がパスキーとなっている扉を抜ける。また手を引かれて、なにやら広くて無機質な空間に出た。パーティルームとして使えそうなくらいの広域だ。奥には舞台があった。用途は不明だが………神殿のようなイメージがあった。


「A先輩ってひと、ライラが受けるはずだった拷問の身代わりになったのか………マジで狂ってやがる」


「そう。エースは狂ってる」


「そして馬鹿だ。底無しのな」


 独り言ると、返答が返った。


 顔を上げる。舞台上に男女が立っていた。


「ようこそ、4人目。お前がどこの誰だか知らんが、おそらく俺たちにとって重要な情報を持っていることは違いない。それをすべて寄越せ」


 偉そうにしているブロンドの長髪の男が述べた。すると小柄で偉そうにしていた女が、その男にローキックを繰り出すもヒラリと躱される。


「なに取り仕切ってんだクズが。下品な野郎め。言葉を選べ。ブチ殺すぞ」


「………貴様が言えたことか?」


 本当にそれな。


 なんなんだ。こいつら。


 まさか、これが賢者? クスドの話を総括するに………もしかして転生者なのか?


「あ、あの」


「ああ、ごめんごめん。私はシーナ。シーナ・サクラ。転生者だ。融和の賢者とか呼ばれてる。ち、な、み、に! 成人済みだからな? 中学生っつったら脳みそグチャグチャにしてブチ殺す」


 顔面の圧力が強くなる。5秒前に「小学生?」と口を滑らせそうになったけど、呑み込んで正解だった。殺されていたかもしれない。


 なにが融和の賢者だ。脅迫の賢者の間違いじゃないのか?


「で、こっちの金髪カスがゲ(・)ー(・)ス(・)・ク(・)ズ(・)。ヤリチンの賢者だ。油断してるとケツの穴を掘られるから注意しな?」


「おい、黙れ小学生。ハムスターの分際で人語を巧みに操る知能は評価してやるが、捏造して紹介しろなどと命じた覚えはない」


「あ? ブチ殺すぞテメェ。脳みそを薔薇園にしてやろうか? 汚ねえおっさんとキスする趣味を作ってやるよ」


「ハァ………お前と会話していると消耗が激しい。………一応訂正しておく。俺はビーツ・クノ。最初に転生した記念すべき男だ。原罪の賢者という不名誉な称号で呼ばれているが、以後は英雄と称えろ。それだけ覚えておけ。あとは忘れて構わん」


「俺は英雄だぜ、キリッ。………ンブフォッ!!」


「死ね」


「テメェがなぁ!」


 ………なんだろう。このふたり。


 一応、転生者なんだろうけど………このレベルの低さ?


 賢者ってほら、俺の、前世のイメージとかじゃすごい知識と経験があるひとって感じだから。どうにも枠にはまらないんだよな。


「エード。あのふたりは無視していい。お前が知りたいことは俺が教えてやる」


「あ、ああ。そりゃどうも………あんたは?」


「ん? 俺か? 俺は………エース。エース・ノギ。時系列で言えば、あのビーツとシーナよりも後に転生した。創造の賢者って呼ばれてるみたいだな。俺は第1クール第1話。ソータの目の前で目を覚ましたんだ」


「………えっ!?」


 なんかキィと音がして、横に車椅子が並んだと思ったら、自然に声をかけられた。


 ビーツとシーナとは違うタイプの賢者。いや、転生者だ。そして名前を聞いて、やっと理解する。


 その容姿を観察した。


 左の頬に大きなガーゼ、首や左手に包帯を巻いている。顔は感情が読み取れないくらいの無表情。けれど抑揚のある声。


「あんたが………A先輩?」


「ああ。ただの整備士A先輩だよ。そう言うお前も、エー先輩って呼ばれてるんだって? 奇遇だな。………ライラ。車椅子を押してくれるか?」


「はーい」


 A先輩改め、エースはライラに車椅子を押されて、壇上の横にあるスロープから舞台に上がる。


「さて………エード。今日、ここに来てもらったのはいくつか理由がある。そのなかでももっとも重要視しているのが、相互利益だ」


「利益?」


「ああ。お前、もう色々聞いて知ってるだろうけど、俺たち3人が奮闘して、第26話を犠牲ゼロにしたんだ。第1クールは俺が、第2クールからシーナが加わった。ビーツは邪魔してばかりだったけど、屈服させて手を組ませてやった」


「不本意ながらな」


「ほざけクズ。………と、まぁ俺たちの原作破壊行為と、推し活でここまで来たけど………これ以降は限界がある。もうわかってると思うけど、ここからは劇場版の展開だ。俺たちは、お前が知ってる情報をすべて欲しい。誰が犠牲になるのか。なにが敵なのか。そのすべてを。俺の推し活に限界はない。劇場版だろうが犠牲をゼロにする。そのために、俺(・)は(・)帰(・)っ(・)て(・)来(・)た(・)」


「帰ってきた?」


 エースが言っていることはわかる。重要性も。


 けど最後のは、どうにも理解できなくて、首を傾げて聞き返してしまう。


 するとビーツは嘲笑し、シーナは渋面する。エースは苦笑していた。


「ああ、俺最終話からちょいと2年くらい留守にしててな。って言っても、意識と精神だけなんだけど。去年戻ってきたんだよ。リハビリも大変で、最近になってやっと喋れるようになったんだ。帰って来れたのは………まぁ、そこにいるハムスターの賢者のお陰かな」


「ブチ殺すぞテメェクソが。あんなに苦労させやがって。その評価がそれか? いい度胸してんじゃねぇか。全身金属化した症状も8割以上治してやったのに。ははーん? そんなに精神汚染受けたいと? 屈強なオスにガン掘りされてアヘりたいと? いいぞ。死ね」


「と、まぁシーナは筋金入りの過激派腐女子でな。乱暴な言動してるけど殺しはしな………おいやめろお前っ! 転生者の後輩が見てる前で、本当にズボンのなかに鉄の棒を挿入しようとしてるんじゃねぇ!! い、いだだだだだっ! やめ、やめろっ………マジで当たってる! 傘のフックみたいにカーブしてるからダイレクトで当たって、ぐぉぉおおおおおおああああ!!」


 ああ………エースも同じ穴の狢なんだな。と俺は遠い目をしていたと思う。


 でもいつまでも呆けてはいられない。レイレが「あのオスはなんで悶えてるんですか?」と無邪気な瞳をして質問するので、その目を手で覆って隠してやった。


「ハァ、ハァ………ああ、悪い。いつものことなんだ。あ、俺はいつも掘られてないからな? 茶番もあるんだって理解してくれ」


「あ、はい。まぁ………」


「そんな顔するなって。悪かったよ。汚いもの見せた。………やり直しといこう」


 エースは車椅子の上で佇まいを正し、俺を見下ろした。


 たった………たった、それだけのこと。


 でもそんなモーションだけで、空気が一変した。


 エース、ビーツ、シーナ。まるで歴戦の戦士のような、俺なんかがここにいるべきではないと、場違いだと錯覚するほどの雰囲気に息を呑む。



「エード。ようこそ「天破のグラディオス」の世界へ。俺たちはお前を歓迎する。お前はこの世界に来て、なにを望む? なにを成す? お前が手にした力はまだほんの小さなものかもしれない。けれど転生者は必ずこの世界に痕跡を残すことになる………俺たちのようにな。お前もまた、大勢に影響を及ぼすひとりなんだろうさ」



 エースはまるで別人だった。


 別人格が憑依したような。でも本質だけは変わっていない。


 ビーツもシーナも、この世界の守護神のごとく顕現して見えた。



「雛鳥(ルーキー)。お前はまだこの世界の1パーセントも理解していないだろう。だから俺たちが知識を与えよう。望むだけくれてやる。その代わり、お前は劇場版の情報をひとつも余すことなく俺たちに提供してほしい。今は整備士だろうけど、ちょっとしたことでパイロットになることもある。俺も、ビーツも、シーナもそうだ。整備士上がりのパイロット。Xタイプと戦った。もう二度とあんなのと戦いたくないけどな。最悪だったぜ? 第三形態まであったし。分身するし。倒せたのも奇跡だったと思う」



「第三形態………っ い、いや。Xタイプは出ない。でも色々と新型が出て、合体したんだ」



「うわ………合体とか、マジかよ。まぁいいや。それは追々な。さてエード。これだけは確認しておかなきゃならない。俺たちの契約をするための条件みたいなものだ。



 エースが述べた、俺にあるという力。


 それを使い、なにを望み、なにを成すか。


 決まっていた。そんなの、たったひとりの少女の救済。


 こうして異世界転生したのだ。劇場版で出るはずの犠牲。それを無くせるというのならと、壇上にいる原作破壊行為とかいうわけのわからない悪魔のような所業を成す賢者たちを見上げた。




「お前がこの世界に来て、力を行使してすべてを破壊し尽くしたいと、そう望むのなら………残念だが、今ここでお前の息の根を止める」




「ッ!!」




 ビリッ───と頬が痺れた。


 エースが発した殺意だけではない。物理的ななにかが、軽く頬を撫でるように焼いた。


 それを可能にするのが賢者。異世界転生者。


 俺の目標。






「………なるほど。破壊願望はないか。んで、レイレをずっと見て………なんだよ。お互い満更でもない感じだな。面白ぇ。お前は救済を望むのか。それなら話は早い。この手を取れ。お前が誰かを助けたいと望み、そのために邁進し続けようというのなら。俺たちが力を貸してやる」







《END》


最後まで閲覧していただき、ありがとうございます!

これまでブクマ、評価、レビュー、感想、リアクションをしていただいた方、これからしていただくかもしれない方には、感謝しかありません!

10ヶ月と19日。なんとか完走しました! 私的に理想的な終わり方だと思います。エースも帰って来れましたし、新しいA先輩の出現で、さらに忙しくなりそうですね。


………さて、でもこれで終わりじゃないですよ?

以前から申し上げたとおり、エースが第26話C1からエピローグの、空白の3年間のうち2年をどう過ごしたのか、イレギュラーってなに? と疑問に思われる方がいると思います。


ってなわけで、次の作品をやっちゃいます!!


新しいA先輩物語!


1時間後にぶち込んじゃいます!


では皆さま、1時間後に別枠でお会いしましょう! シリーズとして紐付けます。

一風変わったエースのストーリーをお楽しみください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。