表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

337/341

銀の髪の少女B12

 ヘッジホッグ───ハリネズミ。


 その名を冠するジャケットは、ハリネズミを連想させるような近接格闘戦に特化した性能を有しては、いなかった。


 針など皆無である。


 そのジャケットは、ある意味でアレンのためだけに製造されたと称しても過言ではない。


 なぜなら上半身と下半身を覆い尽くし、重装甲を着せて機動力を奪っているからだ。重量は改修前のガリウスのほぼ3倍以上。足腰の関節周りをサブアームなどで補強しなければ自立すら危うい。重力圏内では特にそうだ。


 その重たすぎるジャケットを好んで着用しようという者はいない。ソータなんて特に嫌がる。


 その点、アレンは良い子だったので、多少の説得で話がついた。


 それでもまさかこんな早期に自分の出番が来るとは思ってもいなかっただろう。俺もそうだ。


 ハリネズミの名前を冠するジャケットの真価。それは別名「歩く火薬庫」にあるとおり、全身の追加重装甲のなかにミサイルポッドが満載だからである。


 フルアーマー、あるいはアーマード、そのいずれかに該当するのであるが、俺は実はそれがフルアーマーとは思いたくはない。もっとかっこよく、浪漫のある形状にしたいからだ。いつかヘッジホッグとは別に設計したい。


 そしてグラディオスの甲板では、ヘッジホッグジャケットを起動し、全身のハッチを開く十三号機。ミサイルポッドから、これ以上とないくらいの数のマイクロミサイルが、戦艦を思わせる規模で放たれた。グラディオスから上がる白煙の数々。鳥肌が立つ。


 赤い化け物は全身にミサイルを浴びた。それでやっと勢いが停滞する。


「熱だ! とにかく熱をぶち込め!」


『なら副隊長。こういうのはどうかな?』


「ハナ!? いやお前………最高じゃねぇか!」


 ハナからの通信で、メインカメラを再びグラディオスへ向けて拡大する。見覚えのあるシルエットが甲板にいた。


 ハナの九号機が急ぎハンガーに戻り、それに換装してエレベーターで上昇。ポジションにつくと、グラディオスから直接エネルギーの供給を受ける。


 第12話で俺たちが行ったオペレーションテンハの応用だ。きっとクスドの助言もあったのだろう。


 陽電子砲を強引にジャケット化した、通称ブラスタージャケット。グラディオス製のタキオンのジャケットとして適応するなら、ガリウスGのハードポイントにも適応する。


 ただしその重量を単騎では支えられないため、十から十二号機がフォローに入った。


『全機、射線から外れろ! ファイアッ!』


 グラディオスの機首に備わっているレイライトリアクターからエネルギーを外部供給したブラスタージャケットが猛威を振るう。


 今も絶え間なく降り続くミサイルの雨で攻勢が削がれた赤い化け物の腹に、陽電子砲の巨大なビームが突き刺さる。


 声にならない声を上げるような異音。あの赤い化け物が鳴いているのか?


 いや、今はそんなことはどうでもいい。


 ブラスタージャケットの陽電子砲で押し戻される赤い化け物。今が好機なのだ。


 照射が終わるとソータがすぐに飛び込んだ。俺のタキオンの足からロングソードを抜き取って行きやがった。


 アイリが得意とするダイレクトサポートによって、両名揃って攻撃の手段を奪っていく。ただ、陽電子砲を腹に受けたにしては赤い化け物は散る気配もない。


『み、ミサイル残弾ゼロ! もう撃てません!』


 アレンは頑張った。彼の真価が発揮されるのは今ではない。もっと愉快なことになる。一点に集中するよりも、多方向に同時攻撃を行えるのだが、そのスイッチを押してやる前にデビューしてしまった。配分が下手なのは仕方ないし、なにより俺が「全部撃て。とにかく撃て」と命じてしまったこともある。


 もう1回、海に突き飛ばすか。タキオンがどこまで保つかはわからない。


 だが、今は───


『これがエー先輩が警戒してた敵なんだね………』


「ヒナ?」


『そっか。すごく強い。Eタイプじゃ勝てないわけだ。でもね、エー先輩。エー先輩ひとりで戦ってるわけじゃないんだよ? 私だってやれるんだから。だから、もっと頼ってよ』


「え、う、うん? 頼ってる、よ?」


『嘘だ。今だってひとりでなんとかしようとしてたもん。でも、そうはさせないから。エー先輩が戦うなら、私だって………私だって戦う! 絶対にひとりでなんか、やらせないっ!』


 な………なんだ?


 ヒナの奴、急にエキサイトしてないか?


 いつもはこんな感情的になる………なるか。俺が関わってたら、特に。


 けど、なぜだろうか。


 なぜだかはわからないけど、謎の既視感があるような?


 気になって、ハルモニを介して、俺の権限を使ってヒナの状態を調べてみた。


 ───驚愕した。




『エー先輩が命懸けでやるなら、私の命だっていくらでも懸けてやるッ!!』




 コクピットの内部カメラで、ヒナの顔を見た。


 ヘルメット越しだが、これは………確実に、あれが起きている。



 覚醒。ヒナが怒りと覚悟と想いだけで、才能を開花させた。ほんの一握りのなかに見事に入って見せたのだ。



 ファイターモードで加速して、変形すると両腕のビームシールドを展開する。


 まさか、あいつ俺と同じことをやろうっていうのか!?


「やめろヒナ! そんな無茶をしたら、お前の機体がもたない!」


『大丈夫だよ。だってエー先輩のやり方を見て覚えたし、私ならもっとうまくやれる!』


 その宣言どおり、ヒナの六号機が赤い化け物と接触した。


 質量の違いからタキオンより低速ではあったが、赤い化け物をグラディオスから引き剥がしつつある。


 心臓が止まるかと思った。ヒナを失うかもしれないという恐怖が、俺のなかにわずかに残っていた平常心をごっそりと奪い取っていく。


 金切り声を上げて追いすがりたかった………が、とある事実に気付くと、急に冷静さが戻ってくる。


 やっと加速する赤い化け物。数秒、いや数十秒の接触で、六号機の機体は爆発しかねなかったのだが、その気配がない。


 赤熱化が抑えられている。いったい、なぜ?


 ハルモニを使って分析。ヒナを追う。ソータとアイリと追走。


 結果、ヒナはビームシールドを再設定していたことが判明した。たった数秒で組み上げた。


 空気との接触を優先するような形状にしたのだ。


 空力摩擦。これはスペースシャトルが大気圏内に突入する際に発生する現象だ。大気との摩擦で加熱するのだ。


 ファンタジー漫画では、この原理を生かして熱で攻撃するなんて方法も登場するが、実はほぼ不可能なのだ。人力ではとてもではないが空気との摩擦で熱など発生しない。発生するのはスペースシャトルなどの速度で飛翔すること。大気圏内に突入したグラディオスでもそうだった。


 空気との接触で起きるのは、大半が冷却である。空中で手を振ると冷たく感じるのがそれだ。


 ヒナはビームシールドの形状を変更することで大量の空気を浴びて、熱を覚ましていたのである。もちろん冷却剤も併用しているだろう。ゆえに、今も無事なのだ。



「すごい………やるじゃねぇかヒナ! ソータとアイリはヒナをフォロー! 絶対に触手を近付けるな! 俺だって………ヒナひとりにやらせはしねぇ! 今行くぞヒナァッ!」



 予想だにしなかったヒナの覚醒によって、勝機を見出す。


 タキオンも最大の加速で六号機に合流し、ビームシールドを展開して赤い化け物に接近。ハルモニに計算させて同じ形状にしたビームシールドで、2機分の加速をかけて赤い化け物を再び海へと突き放した。


次回は15時頃に更新します!


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ