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銀の髪の少女A08

 支部の連中にバレたなら、テンプスの耳に入るにも時間の問題だ。こちらから先手を取りに行くのが最善となるだろう。


「アーレスさん。さっきからモジモジしてますけど、もしかしておトイレですか?」


「う、うん。恥ずかしながら………テンプス支部長。申し訳ありませんが、お手洗いをお借りすることはできますか?」


「ふん。勝手に行け。ここから出て左側にある」


「ありがとうございます」


 俺以外が相手となると、途端に冷たくなるんだからなぁ、このデブ。


 先程から脂滴る笑顔を二チャッとさせて、俺とのビーツの悪口大会を盛り上げようとするんだから。


「テンプス支部長。ビーツのクソ野郎の弱点とか、ご存じないですか?」


「うーむ………不気味なクソガキだったからな。どんな手術をしてアリスランドに戻ってきやがったのかも知らんし………やはり物量差で攻めるのが得策ではないのか? グラディオスならできるだろう? えぇ? クランドォ」


「アリスランドが所有しているガリウスの総量が不明だ。だがお前もハンガーを目にすればわかるだろう。艦載機は最大14機まで搭載できる。つまり………残念ながら、向こうも14機を揃えているに違いない」


「物量差が相殺されたか。なら質の方はどうだ?」


「意味不明だとお前は言ったが、まさにそのとおりだ。向こうはどう誂えたのかは知らんが、第八世代機を作っていたぞ」


「だ、第八世代機だと!?」


 そりゃあ、驚くよな。


 俺だって本編に登場するはずのない最新鋭機を、まさか第1クール中盤で目にするとは思わなかった。


 けど今になって思えばわかる。それを製造したのが謎の技術者と、ビーツだ。ビーツの前世はとにかく優秀で、将来を有望される機械工学者になれると噂されていたもんな。


 アニメの世界のとんでも設定と掛け合わせれば、可能性は無限大。俺にその分野で勝ち筋はない。


「じゃあ、お前たちはもう………ひとつ前の世代の機体を使っているってことかよ!」


「順当であれば、そうなる。だが向こうが本当にガリウスHを所有しているかは不明だ。本部からはなにも通達がない。本部が認めさえすれば、それは第八世代機として登録されるのだろうが、スパンがあまりにも早すぎる。聞けば、2年前にその技術者をスカウトとしたと言ったな。たった2年だぞ? これまでにない画期的なシステムと、アンノウンを蹂躙するほどの性能。そしてガリウスの系譜を踏襲し、次世代機として登録される。第七世代ガリウスGを製造したケイスマン教授は、その過程をクリアしているゆえに、第七世代機として登録されている。必要とされた時間は2年以上。どういうことだろうな。量産するには程遠いだろうが。………とにかく、アリスランドはすでに無視できないほどの戦力を有しているのだ。昔の情報しか持っていないお前など、なんの役にも立たんと知れ」


 突き放すようなスタンスを一貫するクランド。


 歯軋りするテンプス。手の出しようがない。またヒステリックを起こすと、鼓膜と精神的にもきついことになる。


「クランド艦長。寒くなってきました」


「先程、暑いと言ったばかりではないか。しかしきみも疲れているようだ。………仕方ない。今日は戻るとしよう。アーレスを途中で拾うぞ」


 クランドは席を立つ。俺も続くと「待て!」と叫んだテンプスの端末に、連絡が入る。


 タイミング的には、なんら問題がない。


「は、はぁああああああ!? グラディオスに補給を行った馬鹿がいるだとっ!? いったいどうなって………俺が許可するはずがないだろう阿呆め! サイン? 応接室にいる俺が、どうやってサインをする!?」


「じゃあな、テンプス。お前の支部長らしからぬ姿は、ありのまま報告させてもらう。首を洗って待っていろ」


「お、お前かああああああああクランドォォォオオオオオオオオ!! この支部の補給部隊を操ったなぁああああああああ!!」


「はて? 私がいつ、中国支部の人間を操った? その証拠があるのか?」


「黙れぇええええええ!! 学生時代から、お前はそういうところだけは抜け目なかった! そこが気に食わなかった! 証拠? そんなもの、いくらでもでっち上げられる!」


「捏造か。そういえば、学生時代から隠蔽や捏造はお前の得意分野だったな。教官らを買収し、成績も操作したのだろう? お前は元より艦長、いや誰かの上に立てる器ではない。軍人としても、人間としても失格だ。反省しろよ」


「ほざけぇええええええ!! おい、誰かこいつを捕まえろ! 生きてこの基地から出すなああああ!!」


 あー、うるせぇ。


 こういうところが嫌われるんだよな。本編でもクランドとの舌戦ではボコボコにされてヒステリックを起こしてたし。とんだパワハラ野郎だ。誰かに恨まれて当然だって、わからないのかな。


 端末に向かって叫ぶテンプス。瞬時に扉が開いてニヤッとして───絶句する。


「これはこれは。テンプス支部長。今日はお祭りですかな?」


 軍服を返り血で少々汚した筋肉超人(アーレス)が、キュートで茶目っ気のある笑みを浮かべて、衛兵を殴って無力化したあとに片手で掴んで持ち上げていた。


「驚きましたなぁ。顔を見るなり発砲するのですから。しかし訓練が甘い。そんな腕では、私に傷ひとつ付けられませんぞ。練兵のやり直しを検討されてはいかがです?」


「あわ、あわわ………」


「では、これにて私たちは失礼させていただきますぞ。こちらの御仁はお返ししま………ああ、いけない。手が強めに滑ってしまったァッ!!」


「うごばぁっ!?」


 アーレス、かなりキレてた。


 無造作に掴んでいた衛兵を、強烈なスイングでテンプスに投げつけた。成人男性を片手で投げるとか、人間のすることじゃない。怖すぎる。


 衛兵も体格がよく、そんな男が投げつけられたとあってはテンプスも驚愕し、防御もできぬまま、背を顔面でキャッチしてしまう。共に倒れたあとは痙攣していた。完全に伸びている。


「では参りましょう。クランド艦長。足元にお気をつけて」


「ああ。急ぐぞ。アーレス、どこかで車を調達できるか?」


「ハンガーで頂戴致しましょう」


 ふたりは平然と通路を走る。足元に気を付けろと言ったのは、たった数分でアーレスが15人ほど殴って制圧したからだ。衛兵たちが倒れていた。化け物だ。銃を持っている軍人を拳と蹴りで制圧できるなんて。なんでこういうキャラが本編に公に登場しないのか───ああ、バランスブレイカーになるからか。


 俺はクランドとアーレスに守られながら、通路を進む。途中でテンプスの通報を受けた数人が銃を構えて待ち受けていたが、アーレスが射線の遮蔽となる曲がり角で「お待ちください。15秒で済みます」と俺たちを待機させ、銃弾の嵐を巨体で潜り抜けると、本当に15秒で制圧していた。6人が相手だったのに。


 こうしてアーレスが無双しながら基地を進む。その間に俺はテンプスの端末にアクセスし、マップをダウンロードしていたため、順調にハンガーまで案内ができた。


 また、そこにあった自動車に侵入し、エンジンをかける。


「ドアのロックを解除。エンジンをかけました! アーレスさん!」


「本当にきみがいると最高のバックアップをリアルタイムで受けられるね。最高だよエースくん!」


「やはり同行させて正解だったな。テンプスをうまく操れる度量も素晴らしい」


「お褒めに預かり光栄です。でもそういうのは、ここを出てからにしましょうや!」


「そのとおりだね。けど安心したまえ。私のドライブテクニックに、一般兵が勝てるとは思えない!」


 運転席に乗り込んだアーレス。後部座席に俺とクランド。シートベルトも締めぬ間に、アーレスは急発進させた。


ブクマ、評価、リアクションありがとうございます!

明日も2回の更新となります。ご了承ください。


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

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