銀の髪の少女A03
初手から薬物混入を指摘するクランド。
それを切り札にして責めていく、というスタンスはないらしい。
対する、元アリスランド艦長だったテンプスは、ニチャリと不敵に笑ったまま、俺たちを見ていた。
「相変わらず目敏いなぁ………それくらい許せよ」
「ああ。許している。というよりも、お前にはなんの感情も感じない。眼中にはないからな」
「ムカつく野郎だなあ。お前はいつもそうだ。馬鹿みたいに正直で真面目なくせに、それがなぜか周囲から信頼を勝ち取るんだ………俺の方が優秀なのに」
「仮にお前の方が私より成績が優秀だったとしても、その性格では信頼を勝ち取ることはできんだろう。お前はまず、他人を信じるところから始めるべきだ」
「はっ………無能を信じた結果、常に裏切られるのが世の常だろ? そんなことするくらいなら、こっちから先に裏切る方が得じゃないか」
「破綻している性格ゆえに左遷されたのだろう? この支部を見たぞ。現地民さえ奴隷化する。連合軍でそういうことをするのはお前くらいだ。すぐわかった」
遠慮の欠片もない会話が続く。
ちなみに、これは原作でいえばもっと先の、グラディオスとアリスランドの第2ラウンドで行われる艦長同士の通信による会話に基づいている。艦長と支部長という立場ゆえ、内容は若干異なっているが。
この論争によりヒステリックを起こしたテンプスが、グラディオスに宣戦布告するのだ。アリスランドには連合軍の上層部、過激派の徒党が後ろ盾になっているがゆえ、ある程度の勝手が利く。
そしてその過激派が、グラディオスが秘匿しているものを譲渡せよと迫るのだ。どこから情報がリークされるのかなど決まっている。あのキャラクターだ。
その命令に逆らうクランド。よって連合軍の軍規に違反したという大義名分を引っ提げて、過激派はアリスランドにグラディオスを撃沈せよと命令を下す。そしてグラディオスはアリスランドとも戦わなければならなくなった。
だが、今のアリスランドの艦長はビーツである。なぜビーツによって殺されたはずのテンプスがここにいるのかは知らないが、状況はより悪くなっているのは確かだ。
「まぁ、俺が左遷されたなんてどうでもいいんだ。………なぁ、クランド。手を組まないか?」
「堂々と薬物を紅茶に混ぜてくるような男とか?」
「そんなの挨拶代わりだろ。昔は下剤を盛ったんだ。それと比較すれば、俺は大分丸くなったとは思うがね」
丸くなんてなってない。いずれにせよ、やっていることは同じだ。まったく成長の欠片がない。ああ、だからビーツはテンプスを更迭したんだな。俺でもやるかもしれない。
「実は、俺はある男に復讐したい。きっとお前も会っているはずだ。俺のアリスランドを奪った、あの小僧だ」
「………ビーツ・クノか」
「ぁあああ! その名前を聞くだけで虫唾が走る! そう、その小僧だ! あいつ………俺が目をかけてやったのに、恩を仇で返しやがった! アリスランドは俺だけの楽園になるはずだったのに、いつしかあの小僧が全部掌握して、不敬にも俺を暴行した挙句、追放しやがった! アリスランドにとって、俺は必要不可欠な存在なのに………あの汚らしい小僧は、俺の女を全部持っていきやがった!」
「追放された割には裕福な暮らしをしているではないか。この基地の外は最悪だったが」
「はっ。アジア人なんぞ、俺の駒であればいいんだよ。いずれコリア、ジャパンと俺の手中において、すべてを奴隷化させてやる。なぁ、クランド。俺と手を組めば、その権限の1割をくれてやるよ。一生生活には苦労させないからさ」
たった1割かよ。そこは世界の半分をくれてやるとでも言えばいいのに。
だからみんなに裏切られるんだな。このデブは。
「断る。私は、そんなものに興味はない」
「おいおい、そんなこと言える立場かぁ? 俺は支部長だぞ」
「だからなんだ? どうせ、過激派に泣きついたのだろう? それで中国支部を与えられ………そうか。だからお前は中国支部を私物化できたのか」
差別的な欧米人。そんな印象であるテンプスの全容を見抜くクランド。穏健派と過激派に二分された連合軍の一方についたとしても、末端として扱われ、テンプスは特にうまみのない支部のトップに据えられた。
元々、中国支部と連合軍は足並みを揃えられていたわけではない。俺が知る中国支部のハオ支部長は、連合軍の肩書きだけが欲しくて傘下に入ったが、むしろがめつく様々な要求をしたという。
それを疎ましく思った過激派が、ハオを更迭してテンプスを添えた。テンプスの要求など、ハオと比較すれば、甘い菓子のようなものだろう。それらを与えておけばテンプスは中国支部を統べ、過激派の言いなりになる。
権力を無駄に持てばひとは腐る。典型的なタイプというわけだ。
「………協力はしないと?」
「くどい。私は何度もそう言っている」
「後悔するぞ?」
「私の後悔は、お前のような軍の痴態を具現化したような愚か者と面識を持ってしまっただけだ。………このような口論を続けても仕方ない。補給を済ませたい。これらの書類に目を通しておけ。サインは不要だ。お前は軍規に従っていればいい」
言うねぇ、クランドも。
テンプスは不気味に笑っていたが、クランドから渡された書類がメイドを伝って自分の手に渡ると、それらを見るまでもなく、ドサリとテーブルの上に投げ捨てた。
「補給? そんなことはさせない」
「正気かお前? 補給は規則にあるだろう。特にグラディオス級の来訪時には、率先的に補給をする義務が支部には生じる。応じなければお前には厳罰が待っている」
「知るか。この支部の王は俺だ。俺がすべてを決める。それが中国支部の規則なんだよ」
やはりか。ここだけは本編と同じ。
テンプスはハオと同じことを述べて、補給を拒否したのだ。
ならば、これから主張されることも決まっている。
「だが、条件次第では補給を受けさせてやる」
「………なんだ」
「ガリウスを寄越せ。お前のところにあるすべてだ。あの可変するガリウス、超高速で飛ぶガリウスも。そうすりゃ、グラディオスへ補給をさせてやる」
「話にならん。もっとマシな交渉術を覚えろ。それでは交渉にもならん」
ハオもテンプスと同じだった。中国支部の防衛を果たしたガリウスG全機を要求した。
もちろんクランドは断る。補給はろくに受けることができなかった。
けど、もちろんそんなことは想定内。
俺はすでに、手を打っていた。
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