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再起動C02

「支部の近くを飛んで観察した限り、ここが劣悪な環境だとわかりましたよ。難民問題もそうですけど、一番最悪なのはガリウスだ」


「ハァ………反吐が出るぜ。やっぱりそうか」


「はい。中国支部を防衛しているのはガリウスEです。しかも8割がそうでしたから」


「最悪じゃねぇか。欠陥機で戦ってたのかよ。むしろ、よくそれでここまで持ち堪えたもんだな」


「クランド艦長が、ここの支部長に色々吹っ掛けられるかもしれませんね」


「ああ。だからよ、お前に同席して欲しいんだと」


「………え?」


 いったいどういうことだろう。


 原作では、クランドは中国支部の支部長、ハオと対談をするシーンがある。そこで揺さぶりを受けたのだが、断固として拒否を一貫した。


 だが、そこに俺が同席して、なにが変わるというのだろう?


「俺、そこまで交渉術に長けてるわけじゃないんですけど」


「だが脳内チップがある。護衛にアーレスもつける。クランドは万全で挑むつもりだぜ」


「………うーん」


「着陸してから2時間後に迎えが来る。お前はそこに乗りな」


「………わかりました」


 さて、参ったものだ。


 俺はグラディオスの近くなら出歩いていいという、普通なら降りるはずのない許可を得たソータと共に行動したかったのだけど。


 しかし、ここまで改悪された中国支部の現状も気になる。


 確かに脳内チップを所有している俺なら、フリーハンド状態でハルモニと連絡を取れるし、クランドになんらかの形で危険信号を送ることもできるだろう。そこに護衛たるアーレスもいれば安心できる。


 ならば、役割を分担するしかない。なんのための二馬力か。こういう時に役に立ってもらわないとな。


 カイドウが離れてから、メモ用紙にペンを走らせ、箇条書きにしたポイントの優先順位をつける。


 それが終わると、叱られて不貞腐れていたコウを慰めて、見送ったばかりのシーナのところへ。


「おいシーナ。ちょっと頼みがあるんだけど」


「あん? なんだよ副隊長。こちとらコウきゅんのお尻を眺めて網膜に焼き付けたばかりなんだ。私の聖域を侵したモブオスの顔なんざ見たら吐き気がする。寝言なら寝てから言いなカス野郎」


「コウとデートさせてやる」


「はぁいっ。なんでも仰ってくださいねぇ、副隊長様ぁ!」


 切り替えが早いな。それでいて演技派の猫かぶりハムスターめ。


 見てみ? あまりにも露骨なもんだから、周囲が怖がって青褪めてる。


「とりあえず、これな」


「拝見しまぁ………は?」


「デートはさせるが………まぁ、要は引率してほしいんだよ」


「死ね」


 猫かぶりを解除するハムスター。


 工具で殴ると怒られるから、小さな牙と爪を剥き出しにして威圧する。それくらいなら怖くないが、こいつは眼力が凄まじいから、俺も内心でたじろいでしまう。


「誰かひとり引率がいねぇとやべぇだろ。危機的状況で、パッと判断できる奴がいい。それがお前だと思う。俺はなぜかは知らないけど、これから中国支部の支部長に、クランド艦長と会わないといけねぇ。役割分担だ」


「………チッ。ああ、そういうことかよ」


 シーナは忘れていた───わけではないだろう。


 やっと第13話が終わり、これから第14話となる。


 この地で新たな出会いがあるのだ。


 それはグラディオスの未来を左右するイベントであるのだが、シーナにとってはどうでもいい出会いであることは間違いない。あまり興味を示さないのは、彼女の趣味からくるものだ。


「それとも、お前がクランド艦長と同伴するか?」


「ああ、もう。わかったっての。やるよ。やるから。面倒ごとはお前に任せる」


「それでいいんだ。詳しいことはそこに書いてある。優先事項を間違うなよ?」


「チッ。コウきゅんとデートしたかったのに」


「そういう気分で行けばいいだろ。ま、やることがたくさんあり過ぎて、それどころじゃなくなるかもだけど」


「やっぱお前死ねっ」


「俺が死んだらコウとの橋渡しができなくなるなぁ? あ、それとメディカルルームにも行けよ? 補充要員でレイシアさんのカウンセリング受けてないの、お前だけだからな?」


「そういうエースくんも、まったくメディカルルーム来てないねぇ?」


「いや俺は、忙しくてカウンセリング受ける暇がないから、で………レイシアさん? いつからそこに?」


 それは奇襲にも等しかった。


 シーナとの会話に夢中になっていたのもある。あまりにもシーナが渋るものだから、転生者として協力するという条件でドイツ支部から連れ出したのを忘れたのかと、叱責してやろうかと思っていたほどだ。


 ところがそんな俺の間隙を突いて、ハンガーに現れたレイシアが、俺の背後に移動していたのを察知できなかった。


「エースくんさ、ハルモニからメディカルルームに行くようにって何度も推奨されてるの無視してるでしょ? モニターからしか見てないけどさ、すごい速度で飛んでたよね。それでエースくんの体が無事なわけないじゃん? 馬鹿なのぉ? 死にたいのぉ? ついにハルモニが私に直接連絡するくらいだしさ。聞けばあと2時間でお父さんと中国支部行くって言うしさ。少しでも休まないといけないのにさ。お仕置きが必要かな? おバカな少尉さん。時間ギリギリまで治療ポッドにジャブ漬けの刑だよ。ほら、行こうね。わざわざ私が出向かなければならなくなったんだから。お説教もセットだよぉ」


 あちゃー。


 まるで死神か悪魔の強制。医者なのにね。面白いくらい生きた心地がしないのは、レイシアの表情が笑っているはずなのに目が笑っていないからだ。


 爪と牙を剥き出しにして威嚇していたハムスターたるシーナも、恐怖からかそれらをニュッとしまった。メスは興味ないとか言ってたくせに、やっぱりレイシアを恐れてしまうのか。どおりでカウンセリングに足を運ばないはずだよ。


「あ、逃がさないよシーナちゃん? エースくんが言ってたみたいに、カウンセリングさせるからね? 今日はいけない子たちをいっぺんに面倒みないといけないから、大変だぁ」


「はうっ!?」


 襟首を掴まれたシーナ。こうなったらもう逃げられない。


「ねぇエースくん。なんでこうなったと思う?」


「ワタシガ、イケナイ子ダカラデス」


「そうだよねぇ。じゃあシーナちゃんは、なんでこうなったと思う?」


「ワタシモ、イケナイ子ダカラデス」


「うんうん。わかってくれて嬉しいよ。じゃ、そうことですから。カイドウさーん。このふたり借りていきますねー」


 俺だけならいつものことだし、所属はもう整備科ではない。しかしシーナは整備科だ。カイドウに許可を得る。カイドウは「お、おう」と引き気味になって頷いた。「ダメだ」なんて言ったらなにをされるか、わからないもんな。例えば禁酒命令とか。カイドウにとっては処刑に等しいかもしれない。


 その後、俺とシーナはレイシアに襟首を掴まれて、引き摺られていく。レイシアは細身でありながら腕力がある。軍人だし鍛えているゆえだろう。俺だけなら恒例行事だが、今日からシーナも加わると迫力が違うだろうな。通路を行く全員が凝視する。


 途中、ミーティングルームで反省会を終えたパイロットたちと出くわす。「よっ」と手を挙げると「よっ、じゃないでしょ!」とレイシアに怒られる。補充要員たちは驚き、恐怖しながらレイシアを見ていた。コウは助けるべきか迷っていたが諦めた。シドウは呆れていた。


リアクションありがとうございます!


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この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

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