降臨
無謀にも連載挑戦。
この次元には幾重の可能性と世界、歴史によって作られている。そこにはIfが存在し、いくつもの分岐点より派生した世界がある。次元を跳躍し、あらゆる事柄を凝縮した存在、鎧神慨装。この物語はその鎧神慨装から繰り広げられる、物語・・・。
朝。煩い小鳥のさえずりと、カーテンの隙間から漏れ出る目を焼くような日差しによって、少年は起きる。といっても時刻はまだ午前4時。健康的な老人の起きる時刻。高校2年生なのに寝るのは9時半(夜の、である)、10時まで起きるなどもっての外、という少年。今時の小学生でも、そんな時間に寝ない。
ベッドから起き、頭をかく。枕は足の位置にあり、寝たときとは正反対の向きになっていたのだと、その時彼は気がついた。寝像の悪さは誰に似たのか、と他人事のように考える少年。
その名を夜剣 廻。この物語の一応の主人公である。だが、主人公と言っても、根暗でメガネでチビで生意気で・・・。と、万人より好かれる好少年ではない。自称やる気なしのリアリスト。
さて、こんなに朝早くより何をするかと言えば読書である。インターネットなぞ、彼はしない。音楽、ファッション、テレビなど彼には無用のもの。ただ、本を読むのが彼の趣味なのだ。友人たちは面白げのない人生と言うが、本人曰く、
「至高の時間」
だそうで、何者も彼の読書を邪魔はできない。
そうこう説明している間に時刻は7時。廻は朝食をとり、顔を洗い始めている。小説ではありがちなひとり暮らしだが、別段特別な理由はない。ただ、両親から高校の通学のために離れて暮らしているに過ぎない。
一通り準備をしたら部屋を出る。マンションの一室、4階から1階まで階段を猛スピードで駆け降り、マンション横の自転車に跨り、ペダルに足をかける。そして、街に繰り出す。
県立水瀬高校。それが廻の通う高校だ。生徒数は700人。都会とまでいは無いが、そこそこ人口のある三上崎市。県内一、二を争う進学校があるこの街に来る生徒も少なくはない。廻は後期試験でなんとか転がり込んだ。僥倖、僥倖。と、当時は喜んでいた。(理由としては県内最大級の図書数を誇るから)
校舎に入り、彼は自分の教室、2年3組に入る。そして、自分の席に座り本を広げ、ようとして本がぼったくられる。視線をずらすと、自分より若干背の高い女子生徒、ナツキ・エリクセンが立っていた。所謂幼馴染(腐れ縁ともいう)だ。
「あんたねぇ、いつまでそんなんでいるのよ」
呆れたように彼女は言う。彼にとっては迷惑以外の何物でもない。
「エリクセン、僕にとやかく言うのはやめてくれ。僕と君は単なるクラスメイトなんだから」
彼の言葉に、彼女は俯き、トボトボ自分の席に帰っていく。そこに女子が寄ってきて雑談が始まると、彼女は何事もなかったかのように会話に入って行った。
そう、何事もないのだ。
虚無の感情が廻の中に明滅する。こんな日常のなかでも、廻の存在に関係なく世界は回る。果たして自分に存在の意味があるのか、と彼は感じていた。何事にも満たされず、他者との交流を避け、孤独に生きる。
今日も世界は彼なしに動いていく、かのように思われた。
だが、世界はそれを赦さない。廻を生け贄に物語は急転していく。
5月13日。突如、全世界において地震が発生した。あり得ない規模の大地震は三上崎市においても発生した。夜の日本では、寝起きの人々があわてて外へと繰り出していた。それは夜剣廻も例外ではない。彼は冷めた目で状況を判断し、しかし人の流れに任せるように歩いていた。揺れはもう収まっていた。だが、何かがおかしい。そして。
突然、空より光が走る。落雷のような、だが大きな柱のようなものが、三上崎の山を消滅させた。空の光によって斬られた雲より、巨大なナニカが降ってきた。
生命体と思わしきフォルム。金に輝くその体は天使や神を想像させる。だが、誰の目にもそれは悪魔でしかなかった。全長12メートルほどの悪魔は口らしきものを開けると、再び光を放つ。それは廻のいる方向にやってきて。
遮られた。
次元が歪み、その歪みの中に光は消えた。迸るスパーク。鳴り響く唸り。警戒する悪魔。歪みは広がり、一体の魔人が現れた。全長10メートル。黒と黄色で構成された体。生命体を思わせるものの、どこか機械的な体。悪魔のように禍々しく映る大きな角。光りなき眼球。
「なんだって言うんだ、これは・・・!!」
廻は混乱していた。およそ彼には似つかない表情。そんな彼の脳裏に響く声。
『汝は選ばれた。刻は満ちた。万象を司りし要素は今、崩壊し、この宇宙、そして全ての次元世界に終末が近づいている』
「なん、だ・・・お、前は・・・!」
脳裏に響く声と共に来る頭痛。それに耐えながら彼は言った。
『我が名はカイザリオン。何者にも囚われぬ、次元の管理者、鎧神慨装。そして、汝の剣となり、盾となろう』
気づくと彼は見たことのない空間に居た。だが、直感的にここがどこかわかった。あの、鎧神慨装の中だと。情報が彼の頭をよぎる。膨大な情報。その中から、あの天使の情報を見つける。
『ウルゴリエル。次元世界の破壊者、ヴァーウルの僕』
ちくしょう。何かわからないがやるしかない。廻は叫ぶ。
「行け、カイザリオン!」
『了解した。我が主よ』
黒い巨体は光る天使に駆ける。両腕より、粒子ビーム状の刃が現れる。廻は、カイザリオンはそれを振り上げ、天使を切り裂く。血のような緑の液体を撒き散らし、天使・・・ウルゴリエルはその手に備わった爪でカイザリオンを貫く。
貫かれた場所は次元の歪みができていて、カイザリオンにダメージは無かった。
「トドメだ、ギャザッシュカノン!!」
ビームの刃は消え、カイザリオンは後退する。両の手を合わせ仁王立ちする。スパーク。その後、手を振り上げ、ウルゴリエルを捉える。
直上の光線が一本、天使の体を貫く。天使は肉体を溶かし、絶叫して果てた。
後には静寂の街と一体の鎧神慨装が残った。
カイゼルブレード・・・カイザリオンの両腕に備わる、粒子ビーム状の近接武装。両腕より分離し、手に持って剣としても使用可能。
ギャザッシュカノン・・・両手より発生させる、高次元エネルギー光線。現状のカイザリオンの最強武器だが、カイザリオンの消耗も激しく、連射は不可能。




