29.どうすればいいのでしょう?
学園生活は順調に進んでいった。
一人で本を読んで過ごすのにも慣れてきたし、ラヴィーニアらしくツンとした態度で居るように心がけている。
たまにオロオロしてしまうけれど、フィンに言われた通り、困った時には必殺"黙る"を発動して、やり過ごしていた。
そして大きな変化といえば……
「ラヴィーニア様、ほら……そこは"意味が分からないわ"でしょう?」
「……で、でもそんな事言ったら」
「大丈夫ですから、頑張って下さい……!」
「分かったわ……!ありがとう、ディー」
変装したディーゴが隣にいるのが、当たり前になってきた。
フィンの負担も減り、あまりの優秀さにルドヴィカとディエも、王家にバレないようにディーゴをこっそりとスカウトしているらしい。
勿論、ディーゴは笑顔で断っている。
ディーゴはルドヴィカの兄の従兄弟の弟の兄弟という、よく分からない立ち位置だが、取り敢えず親戚ということになっている。
フィンもディーゴとの仲も良好のようだ。
初めはどうなるかと思っていたが、ディーゴのお陰で安定してラヴィーニアを演じられるようになってきた。
ボロを出しそうになると、すかさず素晴らしいフォローが入る。
フィンが「あの性格の歪んだクソ王子がボロを出さない訳だ」と言っていたが、何のことか分からずに首を傾げたのだった。
「……ラヴィーニア様、申し訳ございませんッ!」
「???」
そして今日も、何故かエレナに絡まれている。
(やっぱりシナリオと流れが違うのかしら……)
フィンとエレナの邪魔をするつもりは無く、むしろ全面的にフィンとの仲を取り持っているつもりなのだが、やはり何か間違えているのだろう。
自分のタイミングでヒロインを助けているのだが、お助けキャラに転じるのは、まだ早かったのかもしれない。
幾ら憶測で考えて動いても、フィンのシナリオの正解は分からない。
「私、そんなつもりじゃなかったんです……!」
「…………はい?」
疑問系で返事をすると、エレナは待ってましたとばかりに瞳を輝かせて、声を上げる。
「ラヴィーニア様が私の事を気に入らないのは分かってるんです!!でも、こんな……酷いわ」
「…………わたくしが何か?」
「っ、白々しい!ラヴィーニア様、貴女がエレナちゃんの教科書をッ!!」
「やめて、エミリー……いいの!私が何かいけない事をしてしまったんだわ」
「エレナちゃんは何もしていないわ、私は知っているんだから」
「……エミリー、本当にありがとう」
「私だけはエレナちゃんの味方だからね……!」
目の前で熱い友情が育まれている。
そしてエレナに何もしていない。
最近はエレナもフィンと仲良さげに話している姿を見かけていたので、二人の関係が上手くいっているのだと判断して放置していたのだが……。
(まさか、それがいけなかったのかしら……)
そういえば、フィンはロンバルディ家にエレナを呼んだ事は一度もない。
本来、ライバルキャラであるラヴィーニア……けれどフィンとエレナの間を、どう邪魔をすればいいのか、その立ち回りが分からないのだ。
何度かこうして、エレナとエミリーがヒントのようなものを出してくれるのだが、この後は何て言えばいいのか、どう動けばいいのかは全く分からないままだ。
(台本が、あればいいのに……)
抱き合うエミリーとエレナを見ていると、騒ぎを聞きつけて教室以外にも人が集まってくる。