27.護衛が付くことになりました
シナリオと言いかけて口をつぐむ。
シナリオ通りに出来なかったのが原因とは口が裂けても言えなかった。
どうにかエレナとエミリーの助けがあり乗り切ることが出来たが、このままではフィンが幸せになれない。
「姉上、さっき……睨んでたの?」
「え……?睨むって、誰を睨むの?」
「ふーん……なるほどね」
フィンが考え込むような素振りを見せる。
訳もわからずに首を傾けた。
「ねぇ……フィン、教室で騒がしくなった時に"うるさいわ"って言った方が私らしかったかしら?」
「まぁ……以前の姉上なら間違いなく言っていたかな」
「やっぱり!!でも言えなかったの……噛んでもいいから言うべきだったかしら」
「余計な事はしなくて良いから……困ったら無言で大丈夫だよ」
「ごめんなさい、もっと上手く出来ると思ってたんだけど……」
落ち込んでいるとフィンが頭を撫でて励ましていた。
もはや、どちらが長子か分からない。
「あと、涙目で僕を見るのやめてよ」
「だって、不安で……!!」
「…………見てて心が痛いんだけど」
「そんな事言われても……!」
「僕も姉上を見てるから大丈夫……何かあればすぐにフォロー入れるし」
「……フィン、ありがとう!」
「はいはい、じゃあ教室戻っても頑張れる?」
「うっ……」
「今日はシェフがお茶の時間に、姉上の好きなチョコレートケーキ作ってくれるって」
「私、頑張るわ……!!」
「わたくし」
「わ、わたくし……」
俄然やる気が出たラヴィーニアを見て、フィンは安心するように息を吐き出した。
分かっていた事だが、初日から前途多難である。
入学した初日から、これだけボロを出しやすいと、やはり自分のフォローだけでは心配である。
当の本人はチョコレートケーキを思い浮かべてニヤニヤしているようだが、まるで危機感がない。
能天気ではあるが、本人もダメなりに精一杯頑張っているところが、可愛らしいと感じる自分も末期だろう。
子犬が覚束ない足取りでワタワタと付いてくる……そんな姿を見ている気分だ。
フィンの任務は二つ。
一つ目はラヴィーニアが光属性であることをバレないようにすること。
二つ目はラヴィーニアを守る事。
此方は極秘で王家からも学園に通達しており、ラヴィーニアが学園を卒業するまで隠し通せと言うことだ。
故にラヴィーニアは今、風属性ということになっている。
周囲に疑われないようにする為、授業では全面的にフィンがサポートする。
もしラヴィーニアが光属性である事がバレて、危険な目に合う可能性があるならば学園に通えなくなってしまう。
今の国王は本当に用心深いし頭も回るが、少々どころか……かなり過激である。
下手な事をすれば自由が無くなる可能性もある。
そしてロンバルディ家は公爵家に爵位が上がったばかりだ。
それは勿論、ラヴィーニアのお陰であり大変名誉なことである訳だが、向けられるのは疑念の眼差しだ。
誰にも変化が無いのに爵位が上がったとなれば、他の家からの偵察が入るかもしれない。
そうすればバレる確率も上がってしまう。
本人は爵位などはどうでもいいのか「へー……そうなのね!それよりも池の魚を見に行きましょう?」と、一ミリも興味を持っていなかった。
王家からもラヴィーニアに護衛を付けると言っていたが、それは今日、ロンバルディ家に帰ってから紹介されることになっていた。
「そろそろ教室戻ろうよ」
「フィンと気軽に話せないなんて、悲しいわ……」
「……」
「もうちょっとだけ、ここに居ましょう?」
「…………もう、しょうがないな」
そんな時、空き教室の外でスカートがひらりと揺れる。
そんなラヴィーニアとフィンを見ていた人物が、クルリと踵を返し静かに廊下を歩いていった。




