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英国骨董屋の奇妙な日常  作者: 秋野 七種


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第五章 人喰い絵画 ⑧

「迷子にならないように、僕の灯りに付いて来て!」

 真っ暗な闇の中で、道標のように灯る光を、俺はただひたすら追いかける。

 ジャックは手を繋ごうとしてくれたけれど、“あちら側”と人の世界の境界にあるらしいここでは、精霊と人間が触れ合うことはできないようで。俺の手も、ジャックの手も、ただ空を掴むだけになってしまった。

 すべての光が失われた暗闇は、時間感覚を狂わせる。まだ入ってから少ししか経っていないような気にも、何時間も経っているかのような気にもなる。

 焦りと不安を増長させ、俺は自分でも自覚できるくらいに取り乱していた。

「ジャック、ジャック、大丈夫か。俺、大丈夫かな」

「大丈夫だよ! ユウタ、落ち着いて! ユウタは特別なんだから、大丈夫!」

「ジャック、ごめん、俺、情けないよな」

「そんなことないよ! 暗闇はヒトにとってとても恐ろしいんだって、僕聞いたことある。ユウタは、ここでも負けてない! やっぱりユウタは特別だよ!」

 ジャックの励ましは、絶えず俺の心を支えてくれていた。もしこの暗闇に一人取り残されていたら、俺はきっと心を壊していただろう。

 暗闇の中では、ジャックの姿は見えない。けれど彼の橙色が、たしかにそこにいるのだと、安心感を与えてくれていた。

「いた!」

 どれだけ歩いただろうか。ジャックがそう言って、ランタンを大きく振った。

 俺が駆け寄ると、ジャックが光のところを触るようにと促してくる。

「触れたら、きっと見えるようになる! たぶん!」

 曖昧な話だったが、俺は彼の言う通り触れてみる。

 途端に、まるで暗闇の中に浮かび上がるように、エドワードの姿が見えた。

「エド!」

 エドワードは眠っていた。自分を守るように、丸くなって。

 うなされているのだろう、苦しそうに息を吐きながら、眉間をきつく寄せている。

「エドの心、閉じちゃってる。エドの夢に入らないと、助けられない」

「夢に入る?」

「そう。メアは掴まえたヒトに夢を見せるんだ。そして、ここはメアの空間だから、僕たちもエドの夢に入れる。でも、僕はメアには干渉しちゃいけないから……」

「俺なら、できるってことだよな?」

「うん。でも、もしかしたら、すごく危険かも。エドがどんな夢を見ているのか分からないけど……危険な夢なら、ユウタも危ないんだよ」

「俺がここに来て、諦めると思う? 友達同士は助け合わないと、だろ?」

 俺がにこりと笑えば、ジャックの灯が嬉しそうに揺れた。

「うん、助け合う! 僕も、ずっとここにいるから。ユウタ、エドを助けて!」

「任せろ!」

「ユウタ、エドを抱きしめて。それできっと、ユウタの心はエドの夢に入れるはず!」

「わかった」

 俺は、眠っているエドを包むように抱きしめる。

 すると、まるで強制的に暗闇に突き落とされるかのように、急速に意識が深く沈むのを感じた。


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