表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【改訂版】ファル公爵の旅路  作者: 瀬那つくてん(加賀谷イコ)
ファル公爵の旅路

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/7

第1章 ファル公爵の旅立ち【7】

 再び言葉に詰まるエレンに、ジークベルトは彼の膝に置いてあった箱を開いて見せた。その中に入れられていたのは、白いフルフェイスの仮面だった。

「これは……?」

碍魔(がいま)の魔力が込められた仮面だ」

 “碍魔”は魔道具に付与される効果のひとつだ。碍魔の魔道具を身に着けていると、魔力が外側に放出されるのを防ぐことができる。つまり、碍魔の魔道具を身に着けていれば、魔力を感知されることがなくなるのだ。魔力を隠し、さらに仮面を装着していれば、その正体が容易に知られることはないだろう。

「狙われるのなら、逃げればいい」

 真っ直ぐに投げられる力強い言葉に、かすかに眩暈を覚える。この六年、自分とこれほどに真剣に向き合ってくれた者はほとんどない。叔父くらいのものだ。それも、自分が逃げていただけなのかもしれない。

「……私は……」エレンは俯いた。「……ファル公爵家には、父の罪の呪いが付与されました。その贖罪をしなければ……」

 父の犯した罪は重い。父の命だけでは足りないと思う者が多いのは致し方ないことだ。それにより自分が命を狙われることは、当然のことと言える。

「その贖罪はいつまで続くんだ「

 エレンはハッとした。例え自分が殺されたとしても、それでも足りないと思う者がいるかもしれない、ということだ。贖罪という呪いを、自分の次に爵位を継いだ者にも継承してしまう可能性があるのだ。

「そうやって背負った罪をどうするつもりだ? 父親の罪は父親の死で償われたはずだ。父親の命で気が済まない者の恨みが、お前に罪の意識を刷り込んでいるだけだ」

「……それは、そうかもしれませんが……」

 エレンは言葉を続けることができなかった。

 ジークベルトは、呆れたように小さく息をつく。

「とりあえず、王都を目指す」

「王都ですか?」

「目的はファル公爵位の撤廃だ」

 力強く言うジークベルトに、エレンは目を丸くした。

「そんなことができるのですか?」

「知らん。だから行くんだ。王に会いに」

「…………」

 爵位の撤廃。自ら爵位を手放すということだ。これまでの社交界では、爵位の剥奪は失脚によるものであった。貴族社会において、爵位は当然としてある制度。それがなければ社交界は成り立たない。爵位の撤廃、それはファル公爵家をエレンの代で終わらせるということだ。

「王が、お前の父親の罪をお前が追わなければならないと判断したら、お前はそこで首を斬られればいい。その必要がないと王が判断すれば、それで終わりだ」

 エレンは激しく心が揺さぶられていた。この六年、こんなことを言う護衛はいなかった。いままで叔父が連れて来た護衛は、一ヶ月と待たずにエレンのもとを去って行った。彼は、いままでの護衛とは違う。

「ここで死んだように生きていていいのか。お前は、自分の人生を生きたくないのか」

「……私に、それが許されるのでしょうか……」

「俺が許す」

「…………」

 強い意志を湛えた声に、胸が締め付けられた。エレンの未来、過去を真っ直ぐに見据える瞳が、エレンの中の枷を解いていく。彼の言葉は違うことなき真実であった。

 ただすべてを諦めているだけだった。自由になることは許されないと、そう思い込んでいただけだ。父の罪が自分のものであると刷り込まれ、爵位を狙う貴族に命を脅かされることも致し方ないことだと、そう諦めていたのだ。

 エレンは顔を上げ、衛兵に呼び掛けた。

「伯父貴を呼んでください」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ