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無力の俺による世界革命物語──早くて安くて美味い料理を知った。クソマズ飯しかない世界を変えようと思う。──  作者: 御魂海色
第一章 王都に向かおう

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第7話 棚からぼたもち

 結果から言おう。あの牛は外れだった。


「うげ……まっず」


 本来の牛丼は肉を煮ているのだが、今回は味見ということでとりあえず焼いて食べてみた。


 ……のだが、筋は多いし硬いし臭い。とても食えたものではなかった。


 困ったものだ。良い食材が見つかったと思ったのだが、これでは骨折り損のくたびれ儲けというやつである。


 といっても、全く利益が無かったというわけではない。


 先程の怪物は魔物という生物である。奴らは魔王の力によって原生物が突然変異して生まれた化物だ。


 そうして、コイツらの体はギルドで売り払うことができる。武器や防具、その他色々の素材にすることができるのだ。


「これ、どうやって……」


 ということで早速売りに来たのだが、受付のお姉さんの顔が引きつっている。


「その辺で転がってたので持ってきました。多分誰かが倒したんでしょ」


 ここで俺が倒したとは言わない。


 俺は魂力ゼロの無能、こんな凶暴そうな奴を倒せるとは思われないだろう。なので手柄は倒れてた彼らに譲ることにした。


「これはノーディナリー、荒れ狂うブラッド・ブルですよ。各ギルドに討伐依頼が出てて、最近討伐隊が結成されたという話もあります」


「のーでぃなりー?」


 なんだそれは。新種の魔物か? いやしかしその後に大層な名前言ってるしな。


「突然変異によって各部位が異常に発達した特殊な個体のことです。特異個体とも、ノーディナリーとも言います」


 ほう、コイツはそんな凄い奴だったのか。というかそんなことより……


「個体ってことは、普通のも居るってことっすか!?」


「え、えぇ……そうですけど」


 コイツがイレギュラーだとするなら、通常個体は美味しいかもしれない。これは良い情報を貰えた。お姉さんに感謝しないとな。


「とりあえず、こちらが報酬になります」


 顔を引き攣らせたままお姉さんはその袋を机の上にゴトッと置いた。


「……多くないっすか?」


 その袋の中身を見てみると、なんとそこには金貨が五十枚ほど入っていた。


 これはどのくらいの金額かというと、家を建てても少しの間遊んでいられるくらいである。


 そう、たかが牛一匹持ってきた程度で得られるお金ではないということだ。


「特異個体の討伐ですからね。これくらいの報酬があって当然です」


「転がってたの持ってきただけなんすけど」


 俺が倒したとは思われていないはず。であるならば雑草取り程度の報酬を与えるくらいでもいいと思うのだが。


 この報酬は是非ともあの倒れていた彼らにあげて欲しいものだ。


「なのでそのくらいの報酬なのです。本来討伐されていたらその五倍はくだらないですよ」


 五倍……ということは金貨二五〇枚ということか。そんな財産を持つ存在がこの国にどれほど居るだろうか。


 それでも運んだだけの俺になぜ報酬を渡したのか疑問が晴れなかったので詳しく訊いてみることにした。


 どうやら、特異個体レベルになると体内で生成される魔力の量が桁違いになるらしく、死んだとしても正しい処置をしなければ復活してしまうのだとか。


 そのため、死体を発見して持ってくるだけでも十分国にとって利益となるらしい。


「想定外だったが、これで一先ず金は得られたな」


 ギルドを出て道を歩きながらニヤリと笑ってしまった。


 まさか草むしりに出かけたら金貨五十枚も貰えるとは。更に牛の情報まで。日本で言うなら棚からぼたもちってやつなのかな。


「そーいや店舗も考えないとな」


 そこで俺はふと思った。


 牛丼屋を開くにしても、まずは場所を探さなければいけなかった。というか俺の住処を探さないといけない。


「飯のことばっかで忘れてたな……」


 やらかした。俺はそう実感して無意識に首の後ろをポリポリと掻いていた。


「おい、そこの」


 その時、後ろから声をかけられた。ような気がするだけなのできっと気のせいだろう。


「おい、お前だよ!」


 グイッと肩を引っ張られた。どうやら気のせいではなかったようだ。


「なに?」


 また面倒なのに声をかけられたのか、俺はそういう性質でもあるのかね。


 対応するのも億劫だが捕まってしまったので、仕方なく振り返る。


 そこにはフードで顔を隠したイケメンが立っていた。背は俺より高い。


 唯一露出した青く輝く瞳はこちらをまっすぐ見抜いている。どこか不機嫌そうな顔で。


 俺この人に何かしただろうか。顔は見えないが、少なくともこの瞳の持ち主に喧嘩を売った記憶はない。


「ちょっとついてきてくれ」


 男はそう言って説明も無しに歩き始める。


 俺は少し立ち止まって考えを巡らせた後、男とは正反対の方向へ歩き出した。


「おい」


 すると真後ろから怒気を孕んだ声が飛んできた。


 なぜバレたし。俺これでもスニーク活動は得意な方なんだけど。


「何もするな。ただついてこい」


 もはや一種の拉致だよな。俺はそう考えながらも面倒なことになりそうだったので抵抗せずについて行くのだった。

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