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無力の俺による世界革命物語──早くて安くて美味い料理を知った。クソマズ飯しかない世界を変えようと思う。──  作者: 御魂海色
第三章 クエストを受けよう

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第19話 Fランクを舐めるな

「すみません。遅れました!」


 それなりに急いで王都の入り口に来ると、そこには先程ギルドで出会ったクランの三人が居た。


「遅いぜ兄ちゃん」


 リーダー男が待ちくたびれたように欠伸をしていた。


 確かに弓を入手するまでにそれなりの時間が経過しているしな。文句を言われてしまっても仕方がない。


「じゃ、いこうか」


 男の合図で、俺達はクエストへ出発した。




「そういや自己紹介していなかったな」


 道中の馬車の中で、男が突然そんなことを口にした。


「そうでしたね」


 確かに言われてみれば俺は彼らの名前を知らないし、俺も彼らに名を明かしていない。


 人に名前を明かさない癖、そろそろ直さないといけないな。


「俺はアーリー・ミライ。クラン、風花雲月(ふうかうんげつ)のリーダーで剣士だ」


 彼らのクランは風花雲月というのか。花鳥風月に似ているが……ちょっと違う。「月に叢雲、花に風」の方が近いか。


「次は……ワシじゃな。タンクをやっておる。マスキュルじゃ」


 このお爺さんがタンクだとは信じられないが、装備を見るに間違いではないのだろう。


 歳はトーさんと近そうだが、人の可能性は無限大だな。


「最後は私ですね。魔術師、カルメ・マジシンです。よろしくお願いします」


 見た目から魔法使いだと分かるのだが、ローブにとんがり帽という格好は恥ずかしくないのだろうか。目立つだろ。


 ただ魂力は高い。この世界でも上位に位置するだろう。……多分、このクランで一番可能性があるのはこの子だな。


「弓使いのサントール・クロムスです。足引っ張らないように頑張るので、よろしくお願いします」


 弓を使ったことは無いからな。足を引っ張りかねない。最悪殴ればいいけど、できるなら人前でそれは避けたい。


「まあ元々俺らだけでやる予定だったクエだし、そんな気ぃ張らんくても大丈夫よ」


 俺が緊張していると思ったのか、優しい笑みを浮かべるアーリー。初心者育成とでも思っているのだろう。ありがたい話である。


「お主、それが武器か?」


 タンクのマスキュルが俺の背中にあるものを指差して訊いてきたので、俺は縦に首を振る。


「金属の弓……使えるんですか?」


「たぶん?」


「えぇ……」


 使ったことないし、今さっき渡されたばかりだから知らない。


「大丈夫ですよ。きっと」


 先程走りながら軽く弓を引いてみたのだが、金属だというのに驚くほどよくしなる。あれなら十分に戦力として利用可能だと思う。


「Fランクに無理はさせねえから武器使えなくても問題ないけどな」


 アーリーはどうやら俺のこと戦力だとは思っていないらしい。それは当然といえるので突っかかることはしない。


 彼らはCランクの冒険者クラン。クランはリーダーのランクが反映されるので、アーリーは俺とは三つもランクに差がある。


 そして今回はCランク以上の冒険者に招集がかけられるクエストだ。そこにFランクの冒険者が入っても普通戦力になるわけがない。


「あはは、お役に立てるように頑張ります」


 俺は無意識のうちに拳に力を込めながら優しい彼に笑みを見せた。




「ウラァッ!」


 とある村の近くにある洞窟に、男達の気迫のこもった声が響く。


「二体そっち行ったぞ!」


 洗練された戦士のアーリーとマスキュルといえど大量のゴブリンを相手にすると全てを薙ぎ倒すことは厳しいらしく、二匹の人型魔物がこちらへと迫ってきていた。


「『揺らめく紅蓮の炎よ、我が手に集え。灼熱の槍となり、敵を貫け』――フレイムランス!」


 ありきたりな魔法の詠唱を口にして、カルメは魂力を炎の槍へと変化させる。



 これが魔王を打ち倒した人間最大の武器、魔術だ。



 魂力を術式を展開した法力回路に通すことで超常現象を引き起こすもので、俺は使えないがこの世界では使えるのが当たり前となっている。


 魔術は初級から始まり中級、上級、最上級、英傑級、頂級(ちょうきゅう)の六段階に分かれており、頂級を使用したのは歴代でも勇者ぐらいだったという。


 今彼女が使ったのは中級魔術のフレイムランス。名の通り炎の槍を放つものだ。


 Cランクにしては出力が高い。このクランは ではカルメが頭ひとつ抜けているな。


「すみません。一匹仕留め損ないました!」


 しかし経験は浅いのか使用する魔術の選択を間違え、ゴブリンのうちの一匹は槍を回避していた。


 この場合は指向性のある魔術より範囲攻撃系の魔術を放つべきだった。


 槍を一本しか生成していないことを見るにカルメはこの魔術を得意としていない。普通こういうタイプの魔術を放つときは複数生成するからな。


 俺の知っている人なんてフレイムランスであれば百本は出すことができるだろう。


「りょーかいです!」


 俺はカルメに返事をしながら弓を構え、弦を力いっぱい引く。


 これでも弓が壊れない。


 最初は金属製の弓とかどうなのか、と思ったがこれがまた結構使いやすい。それに威力も通常の弓より何倍も強い。


「ぐぎゃぁ!?」


 そのためこのゴブリン程度であれば簡単に葬ることができる。エイムがあれば、の話ではあるが。


 ここに来るまでに数回の戦闘を終えて弓というものに慣れてきたため命中率も高くなってきたところだ。


「ナ―イス。サン、十分強いじゃねえか。なんでFランクなんだ?」


 ゴブリン一匹倒した程度だというのに、満面の笑みで褒めてくるアーリー。そんな彼にマスキュルもカルメも同調する。


「まあ、まだ冒険者になって間もないからですかね」


 冒険者のランクというものは時間が全てではないが、まだ冒険者になって数日だからな。最初のランクであっても仕方がないだろう。


「いつなったの?」


 隣を歩く俺と同じ支援担当のカルメが好奇心を目に映して訊いてくる。


「つい最近ですよ。数日前とかです」


 トワと出会った日に冒険者になっているからな。まだひと月も経っていない。


「それで今の実力かよ。家が強いのか?」


「いえ、一般的な家庭ですよ」


 クロムスの方は知らないが、多分一般的な家だ。母上から昔話を聞いたことがあるが、確かクロムスは平民の家系だったはずだ。


「ただまあ、確かに家で少しだけ狩りの技術とかは教わりましたね」


 父上の趣味について行った程度だが、教えてもらったのは事実。なのでその情報を嘘の一部として使わせてもらおう。


 嘘というのは真実を混ぜることで信憑性が増すからな。


「へえ、だから弓を使ってるのか」


「そういうことです」


 少しも疑われなくて、俺は心の中でホッとした。


 俺の素性は少し複雑だからな。詮索されないに越したことはない。


「お主ら、雑談も結構だが気を引き締めよ。この先ちと嫌な気配がする」


 その時、先頭を歩くマスキュルが前方を凝視しながら張り詰めた様子で声を上げた。


「まじか。何も感じないけど」


 アーリーもマスキュルと同じように前方をジッと見つめたが、すぐに首を傾げた。


 なるほど。リーダー殿は魔力探知が苦手なんだろうな。


 対してマスキュルは随分勘が鋭い。前方、このゴブリンの巣穴の最深部らしき場所に位置する敵を発見するだけでなく力量まで読み取れるとは。


「……魔力を感じる。魔人かもです」


 流石は魔術師といったところか、カルメもマスキュル同様に敵に気づいていた。


「魔人……マジかよ」


 カルメから情報を受け取って神妙な顔になるアーリー。そりゃあそうか。


「引き返すか?」


「それも選択のひとつ。でもそしたら魔物の排除が完了せずクエストは失敗ですよ」


 アーリーの提案に即座に首を横に振るカルメ。それに同意するマスキュル。俺は反応せずただ彼らの決断を待つことにした。


「命最優先だろ」


「ここに巣を作った原因が魔人かも知れぬ。危険を覚悟しても、今我々で見に行くことが後の国の為かと」


「じゃあ国の為に死ねと?」


「そうは言っておらん。ただ様子見をするだけじゃ。敵に戦う意思がないかもしれないじゃろ」


 魔人に限ってそんなことは無いだろうが。まあ確かに奥へ進んだところで死にはしないだろう。


「……分かったよ。見るだけだぞ。ただ、もしもに備えておけよ」


「了解」


「心得た」


 どうやら最深部に行くという方向で決定したらしい。


 今回の俺はあくまでも下っ端。リーダーの決断に従うのみなので、少しの躊躇いもなく首を縦に振る。


「それじゃあ、行こうか」


 緊張した面持ちで、俺達はゴブリンの巣の奥へと足を踏み入れていく。

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