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無力の俺による世界革命物語──早くて安くて美味い料理を知った。クソマズ飯しかない世界を変えようと思う。──  作者: 御魂海色
第二章 従業員を雇おう

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第13話 大漁大漁!

「さてトキ、訊いてもいいか?」


「なに?」


 俺は木を使って身を隠しながら、トキへと声をかけた。


「これ、生息地だと思う?」


 目の前の開けた空間を指さしながら、俺は問いかける。


「うん。間違いないと思う」


「なるほどな」


 しっかりとトキが頷くのを確認して、俺はニヤッと笑った。


 開けた空間には大量のブラッド・ブルが居た。その数は数十頭にも及ぶ。


 これが魔物の生息地というやつなのか、想像以上にウジャウジャ居てびっくりした。


 これならどれだけ客が来ても肉には困らないな。しかもこれは数日もすればどれだけ狩っても何事もなかったかのように発生するから、環境破壊だのなんだので怒られることもない。


「よーし、乱獲といこうか」


 肩を回して意気揚々とブルの群れに飛び込もうとしたその時、トキが服の裾を引っ張って俺を止めた。


「あまり取りすぎると持って帰れないよ?」


「ああ、その辺は問題ない」


 どうやら俺をそこまで思考が至らない浅はかな人間だと思っているらしい。


 流石の俺とて持ち帰られないほど狩るわけがない。


 そんなことをしても心が痛むことはないが、食材を無駄にするわけにはいかないからな。


「収納魔法って言ってな。これ使えば無限に物を持ち運べるんだ」


 そう言って俺は何も無い空間に手をかざした。するとそこから幾何学的な模様が描かれた円が展開される。


 所謂魔法陣ってやつだな。よくあるファンタジー系の作品に出てくるアレだ。


 その中に手を突っ込んで、俺は中からカバンを取り出した。


「ほら、こんな感じでな」


「そんなこと出来るの?」


 おや、魔法に長けたエルフであれば当然知っているものかと思ったのだが。まだ幼いから魔法に疎いのか?


「大人の人、誰も使ってないよ」


「そうなのか?」


「うん」


 まさか誰も使っていないのか?


 俺は顎に手を当てて考える。


 確かこれは俺が人間の体で魔法を扱えるようにする過程で編み出したもの。もしかするとこれは俺のオリジナルだったりするのか?


 それなら、俺は相当な天才なのかもしれない。魔術に関してはてんでダメだが。


「それって、魔法なの?」


 不思議そうな顔をするトキ。その口から繰り出された質問に、俺はハッキリと答えることはできなかった。


「たぶん?」


「なんで自信ないの」


「我流で人間が扱えるように作った魔法だからな。これが本物と同じなのかはしらん」


 なるべく寄せて作ったが、それでも全てが同じという訳では無い。


「すごいね」


「だろ?」


 褒められたので胸を張ってみる。


「ほら、ちゃっちゃと狩って帰るぞ」


「うん」


 雑談も程々にして、俺は前を向いた。


 大量のブラッド・ブル、だが特異個体であの程度なら通常個体が幾ら束になろうと危険な状況になることはないだろう。


 楽観的ではある。それでも大丈夫だと謎の自信があったから、俺はトキを連れて堂々と生息地へ足を踏み入れるのだった。




「いやー大漁大漁!」


 王都へ戻ってきた俺は満面の笑みを浮かべていた。


「楽しそうだね」


「そりゃあな。目標にひとつ近づいたんだ。ご機嫌にもなるさ」


 手を繋いで隣を歩くトキが微笑んでいたので、俺はニコニコのまま話す。


「今から行くのは俺らの店だ。どうやらもう渡してくれるらしい」


 もう少し時間がかかるものかと思っていたのだが、元々準備をしていたのか、すぐに渡してくれると連絡があった。


「こんにちは。お待たせしました」


「時間ピッタリですよ」


 店の前に到着すると、そこにはトーさんが立って待っていた。


 数回太陽の浮き沈みを見て今は夕方、そろそろ日が沈みそうである。


 どうやら狩りに夢中になっていたらしく、いつの間にかそれなりに時間が経っていた。


 それに加えてトキも居るから今までのように走って向かうわけにはいかない。


 下山して王都まで辿り着くのに数日を要してしまったが、今の俺はとにかく気分がいいから文句のひとつも出ない。


 行商人の馬車に乗せてもらったが、あれはダメだな。あまりにも遅すぎる。走った方が百倍早い。


「グド山に行っていたんだってね。トワくんが心配していたよ」


 どうやらこの数日のうちにトワもまたトーさんと連絡を取ったらしく、俺が何をしていたのか知られていた。


「無事で何よりだよ。ブラッド・ブルの生息地は見つけられたかい?」


「あはは、ご心配おかけしました。何とか見つけられましたよ」


 トーさんに導かれて店内に入りながら、俺は成果を報告する。


「それは良かった。……えーっと、そっちの子は?」


 トーさんは見知らぬ顔を見て首を傾げた。


「トキです。グド山の森の中で拾いました」


「珍しいこともあるもんだね」


 コイツが危うくラヴィーナを壊してしまうところだったということは隠しておく。


 トーさんを信用していないわけではないが、もう終わったことだ。わざわざ言う必要も無いだろう。


「トキちゃん、何か食べるかい?」


「……たべる」


「分かった。ちょっと待ってて」


 トーさんは膝を曲げてトキと目線を合わせて訊いた。そして答えがイエスであることが分かるとニコッと笑って厨房へ入っていった。


「座ろう」


 立っているのも何なので、俺はトキに提案してカウンター席に座るのだった。

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