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無力の俺による世界革命物語──早くて安くて美味い料理を知った。クソマズ飯しかない世界を変えようと思う。──  作者: 御魂海色
第二章 従業員を雇おう

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第12話 ファンタジーといえばエルフだよね

「さて、動けるか?」


 あれから気付けばブラッド・ブル一頭分を平らげてしまった。主に赤髪が食った。俺は少ししか口にしていない。


 そのため彼女の胃を心配して訊いたのだが、ケロッとしている彼女の表情からそれが杞憂であることが分かった。


「んじゃ行くか」


「行くって、私も?」


 変な質問をする赤髪に、俺は首を傾げた。


「何言ってんのお前」


「それはこっちのセリフなんだけど」


 赤髪は困惑する。……が、その様子を見た俺の方が困惑したいものである。


「お前みたいなガキ一人残せっかよ。捨てられたんならもうお前は俺のもんだ」


 丁度従業員が欲しかったとこである。


 この子は顔も整っているし、髪を切って良い服を着させてやれば十分看板娘になる。


「貴方は、バカなの?」


 またコイツは俺のことを馬鹿だと言った。流石に二回目は許さない。


「誰がバカだ」


 眉間に皺を寄せつつ、俺は赤髪の両脇に手を添えてくすぐってやった。


「や、やめてっ!」


「人のことをバカ呼ばわりするからだ。発言には気をつけろ」


 くすぐりにめっぽう弱いらしく、赤髪は涙目になっていた。


「で、でも……私を連れていくのは危ない」


「はっ、自分の体のことなのに何も分かってねえのかよ」


 少し煽り気味に鼻で笑ってやると、赤髪は不思議そうに首を傾げた。


「お前の魔力の暴走はもう止まってんだよ」


 話すだけで立ち止まっているのは時間の無駄なので歩き始める。


 赤髪はキョトンとしたが、少しして言葉の意味を理解したのか驚きの声を上げた。


「な、なんで!?」


 会話をしていてもあまり表情が動かなかったので感情が乏しいのかと思ったが、ここまで驚けるのなら大丈夫そうだな。


 俺はクスっと笑って、隣に並んで服の裾を引っ張ってくる赤髪に説明してやることにした。


「さっき飯食わせたろ。あれに少しだけ細工してな。お前の魔力が落ち着くようにした。まだ警戒はしないといけないが、一先ず暴走することは無いだろう」


 そう、俺は先程彼女に渡した肉を少しだけいじって彼女の今にも暴れそうな魔力を抑えられるようにした。


 彼女の体内を巡る魔力を見ても、先程のような禍々しさは無い。成功したようでなによりだ。


 体の様子を確認して、俺は少しだけ安堵した。すると疑問が頭の中に浮かんできて、俺は思考の海へと身を投じた。


 これはあくまでも魔法の応用。魔法に長けたエルフがこの程度できないとは思えない。何か思惑があっての行動だろう。


 たとえば、ラヴィーナを潰すため、とかな。


 それが真実ならエルフは随分と賢い作戦を立てる。


 誤算があるとすれば、俺というイレギュラーのことを考えなかったくらいだろうな。


「貴方は何者? ただの人間とは思えない」


 俺の説明を受けてとりあえず落ち着いたのか、赤髪は困惑しながら訊いてきた。


 それで俺はハッとして、ぐるぐるとした思考から一気に現実へと引き戻される。


 何者、か。少し説明が難しいな。


 俺だって自分が異常なことに自覚はある。


 魂力ゼロで魔術が使えない代わりに魔法が扱える、これが普通でないことはトワの反応からも簡単に理解できただろう。


「これから開店する牛丼屋の店主だよ」


 説明に困った俺は思いついたことをそのまま告げた。


「そんでお前はその店の看板娘だ。分かったな?」


 笑みを浮かべながら赤髪の頭にポンッと手を置いて、そう付け加える。


 暴走することがなくなりこの子はもうただの捨て子だ。なら俺が拾って育てたところで誰にも文句は言われまい。


「そういや、お前なんて名前なんだ?」


 今更ながら名前を知らないことに気づいた。


 俺は人の名前を重視しない傾向にあるのかもしれない。


 よく考えてみればトワだって名前を訊いたわけではない。ただ奴の身分を聞きたかっただけだ。ついでに名前も教えてくれたから良かったが。


「……トキ」


「そうか。トキ、両親は居るのか?」


 エルフは確か自然に発生するわけではない。人間同様に繁殖する。


「居る。小さい頃に連れていかれちゃったから今元気かは分からないけど」


 呪い子を産んでしまったがゆえに、親は処分されてしまった可能性があるのか。残酷なエルフだ。やりかねないな。


「両親は髪の毛赤かった?」


「赤くない。二人とも綺麗な金髪」


「エルフってのは不思議だな。遺伝とかねえのか?」


「あるにはある。でも私のは魔力のせい」


「なるほどな」


 ただそうか、両親は多分赤髪……トキのことを愛していたのだろう。


 たしかエルフには『赤毛の子は忌子』という言い伝えがあったはずだ。


 実際トキは魔力が暴走し、危うくエルフの国やラヴィ―ナを魔物の巣窟にしてしまうところだったからな。


 そのため生まれて少しすれば成長の早いエルフならすぐに忌子だと分かっただろう。


 それでもトキが親の話をすることに抵抗が無いし怖がる様子も無いので、愛情を注いでトキを育てようとしたことが伺える。


「ねえ、今どこに向かっているの?」


「目的地でいえば、ブラッド・ブルの生息地だな」


「ぶらっと……さっきの?」


「そうそう」


 エルフでは魔物の呼び方も違うのだろうか。はたまたトキがまだ幼いがゆえに名称などを知らないだけか。いやよく考えてみれば俺もギルドで名を伝えられるまで知らなかった。


 冒険者にでもならないと知らないものなのかもしれないな。特に遠方の国の魔物なんて。


 そんなことを考えながら、俺はトキを連れて森の中を突き進んでいくのだった。

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