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無力の俺による世界革命物語──早くて安くて美味い料理を知った。クソマズ飯しかない世界を変えようと思う。──  作者: 御魂海色
第一章 王都に向かおう

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第10話 王子が友人

 それから雑談をしているといつの間にか日が落ちてしまっていたので、俺と王子は店を出ることになった。


 近いうちにあの店舗を頂くことになるが、それは今ではない。


「ご馳走様でした」


「はい。ではまた」


「また連絡しますね」


 トーレン・バールという店主と挨拶を交わして、俺は店を出た。


 ラヴィーナ王国の王都は日本と違って一年を通してそこまで気候に変化は無い地域ではあるが、それでも僅かに変化する。


 今は日本でいうと春ぐらいにあたる。そのため夜になるとそれなりに冷える。


「王子様はどうするんだ?」


「そんな呼び方しなくていい。今更お前に様付けされるとムズムズして不快だ」


 そこまで言うか? とつい思ってしまった。


 確かに敬語は使っていないのに様を付けるのはおかしな話ではあるが、一応この国の王子だろう。こんな態度でいいのだろうか。


「じゃあ……トワでいいか?」


 確か先程の店主、トーさんが王子のことを「トワくん」と呼んでいたはずだ。王子様呼びが禁止されてしまったわけだし、ここは彼に倣うことにしてみる。


「ああ、それでいい」


 満足そうな顔をするトワ。


 変な奴である。こういう貴族というのは立場の違いを見せつけるのが好きなのではないのか。


「そういえばお前の名前を聞いていなかったな。なんと言うんだ?」


 かれこれ数時間ほど話をしていたと思うのだが、今更名を聞くとはな。確かに俺も言うのを忘れていたが。


「サントール・クロムス。サンって呼ばれてる」


「そうか。では俺もサンと呼ぶことにしよう」


 あてもなくブラブラと歩きつつそんな会話をすると、何故かトワが楽しそうにしていた。


「呼び捨てしあうというのは友人らしくて良いものだな」


「なんだよ。もしかしてボッチか?」


 王子というものであれば友人の一人や二人居るものかと思っていたのだが、そういうわけではないのだろうか。


「王子という身分があるからな。そう気楽に人と関わることができないんだよ」


「はぇー、大変なんだな」


「他人事みたいだな」


「他人事だしな」


 聞いたのは俺だがそこまで興味のある話でもないので感情のこもっていない返事をしてしまった。それにツッコミを入れられたが、他人事なことに変わりはない。


「王子ってのは面倒そうだな。良かった。ただの一般人で」


 素直な感想を吐いてしまった。それのせいか肘で突かれてしまったが、本人も考えていることなのか、そこまで強い攻撃ではなかった。


「王子の立ち場を羨ましがらないのもまた珍しいもんだけどな」


 はぁ、と大きく溜息を吐いたトワはそんなことを言った。


「そうなのか?」


 王子なんて立場面倒極まりないと思うのだが、それになりたいというタイプの人間も居るのか。俺には理解できない考えだな。


「権力は欲しいものなんだろう。俺も面倒だと思って仕方がないが、一般的には何でもできてしまうこの立場が欲しいのだと思うぞ」


「そういうもんなのか」


 人間というのは面倒な世界で生きているものなんだな、と同じ種族ながら思ってしまった。


 生憎俺は権力とか興味が無いからな。


 勿論それなりに自由の効く立場でありたいとは思う。ただ、権力があると逆に何も出来ないのではないか、とも考えているのだ。


 実際、隣を歩く王子様も苦労なされているようだしな。


「縛られるの嫌いそうだもんな。お前には分からないだろうがそういうもんなんだよ」


「ああ、やりたい事やって生きたいからな」


 短い時間だが随分と俺の性格を理解してくれたらしい。


「ああでも、王子が友人ってのも案外悪くないかもしれないな」


 呆れ混じりにクスッと笑うトワの顔を見て俺はふと思ったことを伝えた。


「なんだ。私的な目的ならこの立場は使わないからな」


「させねえよ」


 ジッと警戒するように睨まれてしまった。


 元々コイツの力を使おうなどと考えてもいなかったので、俺は睨み返しながら助力は受けないと宣言した。


「トワのおかげで店の場所が見つかったからな。それも王子として様々な人間と関わってきたお前の人脈あってのものだった。だから良かったな、と思っただけだ。ありがとな」


 トーさんと出会ったのも、店舗を譲り受けたのも、よく考えてみればコイツのおかげだった。だから俺は素直に感謝を述べることにした。


「なんだ、そのことか」


 拍子抜けしたような表情をするトワ。


 この様子から察するに、本当に友人関係で苦労してそうだな。


 多分、王子という立場を利用したいと思ってゴマを擦ってくる人間が多く居たのだろう。


「さぁて、今日は何処で寝よーかなぁ」


 感謝も伝えたし、ここら辺で解散することになるだろう。


 そう考えた俺は今日の寝床を考えるのだった。よく考えてみると宿も何も取っていなかったからな。


「……お前、宿は取らないのか?」


「金の無駄だから却下。そういやブラッド・ブルとやらの生息地(スポーン)を探したいな。夜通し探し回るか」


 魔物にはそれぞれ生息地と呼ばれる発生地点がある。


 奴らは生殖行為をしない。法力生命体の奴らは自然と集まった空気中の魔力によって体が構成されるからだ。


 そして魔力がその体を構成しやすい場所というのがある。それが生息地というものだ。


 そこでは大量にその魔物が発生(ポップ)するので、今後牛肉を大量に使用する俺としてはブラッド・ブルの生息地を見つけることが一番安上がりで効率がいいのだ。


「夜の森は危険だぞ」


「死にゃせんから大丈夫だ」


 あの山に生息地がありそうなので、今日はそこに向かうことにしよう。


 今日のクエストで赴いて分かったが、あの程度であれば命の危機に瀕することはまず無いだろう。


「……お前は本当に人間か?」


「そうだが」


 ブラッド・ブルの味が不味かったらどうしようか、と考えていると何故か隣の王子様が引いていた。


 失礼な奴である。人外扱いされてしまっては心に来るんだが。


「まあ、死なないようにな?」


「任せろ。じゃまたな」


 諦めたような顔をするトワに親指をグッと立てて、俺は昼間に赴いた山へ向けて走り始めるのだった。

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